prologue Ⅲ 夢オチだったらしい世界
本日3話目。
プロローグは多分あと2話あります。
目が覚めたあと、母と互いに無言のまま夕食を済ませ、シャワーを浴びる。
その間、あたしはずっと夢のことを考えていた。
夜になり、寝たら夢の続きが見られるような気がして、すぐに寝た。
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予想通り、夢を見た。
何かに寄りかかっている。触れてみると、それは樹だった。
そっと背中を離し、見上げるとその樹は前の夢に出て来たあの巨大な樹だった。
頭がかなり痛い。まるで、寝すぎた日の朝みたいに。そこで思う。
これが夢なら、痛みはあってももっと鈍いものじゃないか?
というか、夢ならこんなにハッキリと物を考えられないんじゃないか?いや、それ以前に…
「ここは…」どこだ?と声に出してみて、驚いた。
いつもの自分の声じゃない。あたしの声はもっと高かった。いまのは、もっと低くてしっかりしていた。
でも、なんとなく懐かしかった。
ここは何だ?あたしは、どうなってるんだ?
「あ、今度こそ起きました?」
声がしたほうに視線を向けると、そこにはあの女性が立っていた。
「あなたは…」
女性はくす、と微笑って遮り、一言。
「お帰りなさい」
「…へ?」思わず変な声が出た。
女性はますます微笑みを濃くする。懐かしい人に出会ったみたいに。
「さっきはいきなり倒れるんでびっくりしましたよ。
説明します。よく解らないかもしれませんが、大切なことです。
あなたが今聞きたいことも、大体はこれから話すことに含まれているでしょう。
聞いていただけますか?」
「あ、はい…」
「私は、まぁ…あなたの旅の仲間のようなものです。
私の名はオフェリア。オフェリア・リレイシアです。呼び捨てで構いませんよ。
…う~ん、私、説明下手なのですが…こういうのはシルフィに任せるべきだと思うんですが…
まぁ、まとめると、あなたはとても大きな怪我を負いました。
意識を失ったあなたを私たちでこの空間に運び、傷が癒《い》えるまでの間、長い眠りについて頂いてい ました。やっぱり頭痛いですか?眠りっぱなしだったので仕方ないです。諦めてください。
ようやく傷が癒え、あなたの長い夢はもうすぐ終わりを迎えます。
…その様子だと、こちらの世界での記憶は無いようですね」
「…う。多分、そうなんだと思います…」
こちらの世界も何も、今のところ色々よく分かってないし。
「まぁ、そうですよね…口調から変わりましたもんね…
わかりました。こちらで、記憶の回復についても頑張ってみます。
質問はありますか?」
「はいあります」
「どうぞ」
やっと質問タイム突入。そういえばこの人のペースも懐かしいような気がする。
「えと…ハッキリまとめると、あたしがこれまでいた向こうの世界が夢で、ちょっと前まであたしが夢だと 思ってたここが、あたしの現実っていうことなんですか?」
言ってる途中からオフェリアさんが吹きそうになっている。なぜ?
「その声であたしって一人称は強烈ですねぇ。笑っていいですか?」もう笑ってるし。えー…
「まぁ、それは置いといて。
そうです。こちらの世界で半年ほどの間、あなたは言葉が同じ別の世界で過ごす夢を見ていました。
こちらで時々、あなたの見る夢を少しだけ覗いてみましたが…吉夢なのか悪夢なのか、よく分からない夢 でしたね」
「見てたんですか…
まぁ、いいですけども…あと1つあります。
あたしの、本当の…こちらでの名前って、なんていうんですか?」
気になってたこと。オフェリア、っていう名前が普通なんだとしたら、
あたしの「夕凪 鈴香」って名前は、向こうだけのものなんだろう、って。
「あぁ、すみません。言うのを忘れていました。
あなたの名前は“レイニル・ヴァーニット”。ちなみに一人称は俺でした。
向こうでの“鈴香”という名前は、私がつけたものなんですよ」
少しだけ得意気にオフェリアさんが言う。確かに、懐かしい響きだった。
「質問は以上ですか?」
「はい」オフェリアさんは、また優しい微笑みを浮かべた。
「それなら、一度あなたは夢に戻りましょう。記憶の回復を行うので。
夢にいられるのは、あと1日です。向こうの方に別れの挨拶をするのもいいでしょう。
最後の夢が、よいものでありますように」
いつの間にか、あたしは胡座をかいて座っていた。急に眠気が襲ってくる。
ん、と一言小さく返事して、目を閉じ樹に背を預ける。
そういえば、よくこうやって寝たっけな…
そのまま、あたしはもう一度眠っていた。おそらく、オフェリアさんの魔法か何かの力もあったんだろう。
優しい眠りを覚ますのは、母の冷たい声。
「起きなさい!」
“向こうの世界”のキャラ名には、意味をつけています。
何かのもじりだったり、そのままだったりするので、考えてみてください。
タイトルにも意味はあります。
ちゃんと文になってるかは微妙ですが。