prologue Ⅰ あたしが見る世界は
残酷だったりはまだまだしません。
プロローグのうちは全く無いと思います。
夢を見た。
優しい顔した女の人が、「お帰りなさい」と微笑む夢を。
見知らぬ大きな樹の下で、女の人と話した夢を。
その日…
「あたし」の日常は、終わりを告げた。
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「…レイ!」
「うはぁっ!?」びっくりした!というか変な声が出た!
「な、何?春乃」
「何、じゃなぁい!」耳が痛い…
あたしの唯一の親友、野坂春乃が仁王立ちで見下ろしていた。
「何回呼んだと思ってんの~。
レイ、今日なんかぼ~っとしてるよ?大丈夫?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
また、あの夢のことを考えてしまった。
本当に彼女の言うとおりなら、考えても仕方ないことだと、今朝結論付けたばかりなのに。
まぁ、気になるんだけどね。アレが本当だとしたら…
「うりゃ」
「うおわっ」目の前に拳を突き出すのはやめていただきたい!
「またぼ~っとしてる!なんかあったんじゃないの?」
「いや~。特に何も無いよ」
「うそ~?」
驚くほどの即答で否定された…
「ホントに。なんにもないよ」
「ふ~ん?まぁ、いいけど。じゃあ、本題なんだけどさ。
今回のテスト、親の反応どうだったの?」
その事か。出来れば聞かないで欲しかった。
「平均以上は取ってるけど…いい加減嫌になってきたよ」
「そっか。大変だね。あんな母親もってさ」
「……」
あたしの母は、学生時代(小でも中でも高でも大でも)の頃、物凄い成績優秀者だった。
そのせいもあるのか、性格はまるでいやみな教師のようだ。
父はとっくに離婚している。母に呆れたのなら、あたしも連れて行ってくれればよかったのに。
今回の点数に、あたし自身は満足している。でも、優秀者だった母には納得がいかないらしい。
今あたしは中3で、受験にうんざりする年だ。
母はあたしに、名門私立高に入ることを選ばせようとしている。そんなことは知ってるんだ。
知ってるのに、母は何かある度にあたしに高校の話をして、もっと成績を上げろという。
いい加減やめて欲しい。あたしが行きたいのはもっと普通のところだし。
昨日も、母は延々とその話をしてきた。
もしかしたら昨日の夢は、そのことを原因に訪れたモノなのかもしれないと思う。