お嬢様学校に通っている幼馴染が猫をかぶっている
俺の幼馴染の少女は、表と裏の差が激しい。
その差はちょっとやそっとの変化じゃない。
猫かぶりってレべルじゃねぇんだよな。
幼馴染と通っている塾で一緒に勉強した帰り道、息抜きのためにゲーセンにいく。
幼馴染は表向き真面目な優等生で学校に通っているから、変装をかかさずに。
声や歩き方、ちょっとしたしぐさも変えているという、念の入れようだ。
知り合いに会ったら、体格や性別でわかるんじゃないかって?
それが分からないんだよね。
「ああ? 何ガンつけてんだよ。視界に入んじゃねーよゴミカスが!」
このセリフ言った人、誰かわかる?
俺の幼馴染。
いま、目の前でゲームをやりながら、周りで見てる野次馬にメンチきってる。
極道のゲームでバイクのりながら不良をひき倒したり、メリケンサックを使いこなして殴り倒したりしてる。
「みせもんじゃねーんだぞ。ぶっとばすぞ」
お、ハイスコア更新。
さすが何度もやってるだけあるな。
でも、こんなこと言う幼馴染が学校では「ごきげんよう」だなんて言ってるの、想像できる?
俺には無理だったよ。
実際、最初見た時はどちら様?状態だったし。
幼馴染だと分かった時は、どうしたお前状態だったし。
俺とこいつは幼馴染なんだけど、俺は普通の学校で、相手はお嬢様学校に通ってる。
昔は家が近くだったんだけど、今は引っ越して互いの家がちょっと離れたところにあるから。
数か月顔を合わせないなんてことは珍しくないわけで。
ちょっと知らない間に、幼馴染がこんな事になってるなんて思えるわけないし!
塾の帰りにスカッとした幼馴染と一緒に、それぞれの分かれ道まで隣り合って歩く。
通ってる学校は違うのに、俺たち塾は一緒なんだよね。
幼馴染はいつの間に買ったのか、たい焼きをほおばりながら、今日あった出来事を報告してくる。
学校の連中が堅苦しいだとか、決まりを守るのが面倒だとか。
ストレスたまってそうだな。
小さいころは俺と一緒に近所の公園を走り回って、擦り傷とかたんこぶとか作っていたくらいだからな。
お嬢様学校でお嬢様するのなんて向いてなかったんだろう。
なのになんで、普通の学校じゃなくて、お嬢様学校に入ったんだろな。
なんて考えながら歩いていると、道端で泣いている小さな女の子発見。
どうやら両親とはぐれてしまったようだ。
「おかあさん、どこ……」
なんて言いながら悲し気に泣いていたもんだから、何が起こったのか一目瞭然だ。
ここで人のできた幼馴染は即座に行動。
「大丈夫だよ。お母さんとはぐれたの? お姉ちゃんたちが一緒に探してあげるね」といって、小さな女の子を励まし始めた。
俺だったら、数分くらいまよったあげく、声かけパターンを脳内で10通りは作って、なおかつ笑顔の練習を三回くらいしてから、善行しにいく。
即座に行動なんて絶対むりむり。
言動がちょっとあれで距離を置きたくなるのは事実だけど、いい奴なのも事実なんだよな。
だから、つい一緒に行動しちまう。
しかしさっきの言動とは偉い違いだな。
俺の幼馴染、中の人変わってたりしません?
「ばいばい、お姉ちゃんたちありがとー」
数分後。無事両親を見つけた女の子と、手を振ってお別れ。
警察のお世話になるまでじゃなくて本当に良かった。
知らない大人に囲まれる経験はなるべく少ない方がいいもんな。
いやあ、いい事すると気持ちが温かくなりますなあ。
やったのほぼ幼馴染だけど。
さて、あんまり道くさ食ってると、母ちゃんに怒られるから今度こそまっすぐ帰るか。
てくてく歩いて幼馴染と別れ、俺の家のある方角へ足を向ける。
幼馴染と手を振ってさよならして、分岐路から数メートル歩いたところで、背後から声が聞こえた。
「は? もう帰るっつってんだろ? いちいち電話かけてくんじゃねーよ」
幼馴染おこ。
どうやら家族から電話がかかってきて、その内容にキレたらしい。
「危ないから日が暮れる前に帰ってこいだあ? はっ、襲ってくるやつがいても、血祭りにしてやんよ!」
物騒だなあ。
人間だれしも多少猫かぶる生き物だけど、かぶった皮と地の差が大きすぎて、ちょっと心配だよ。
「わーってるって、学校じゃこんなしゃべり方してねーから。豪に入れば豪に従え、そういったのは父ちゃんじゃねーか」
しかも何とか組の一員だなんて、こんな設定を信じ込んじゃうなんて、おいたわしや。
この間見せてもらった写真じゃ、家の中なんて武器のレプリカだらけになっちゃってて、中二病も発病しちゃってるし。
「へいへい。うちの組の名前に泥を乗ったやつを突き止めて、きっちりお仕置きしてやんよ。ちゃんとボロ出さずに潜入してっから心配すんなっての」




