表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話 王はまだ、名を持たない

戦隊が好き過ぎて小説を書いてみました



「……本当に、こんな島に“それ”がいるのか?」


 東京湾を離れて五時間。

 本土の灯りが水平線の彼方へ消えた頃、フェリーはようやく目的地へ近づいていた。


 甲板に立つ蒼井刹那は、潮風にコートの裾を揺らしながら海を見ている。

 島影はまだ小さい。だが、視界に入った瞬間から、胸の奥がざわついていた。


 理由は分かっている。


 仕事だ。


 そして――嫌な予感だ。


 時は二〇五七年。


 この三十年で、世界は完全に変わった。


 かつてテレビ番組のネタでしかなかったUMA、妖怪、精霊、呪術。

 それらは二〇二〇年代後半、“大顕在化”と呼ばれる現象を境に一斉に確認され、各国政府は隠蔽を諦めた。


 アメリカではMIBが正式機関化し、欧州では魔術師協会が半ば国家機関となった。

 だが――日本だけは事情が違った。


 刹那は小さく息を吐く。


「この国は、元々“近すぎた”んだよな……」


 神社、祭祀、土地神、付喪神。

 日本では、異形は文化と生活の隣に存在していた。


 そして二〇四〇年。


 事態は決定的に変わる。


 ――その年以降に生まれたすべての子供に、特殊能力が発現した。


 最初は突然変異だと考えられた。

 だが違った。例外が一人もいなかった。


 言葉を覚える前に、親の頭へ直接語りかける幼児。

 保育園で泣いた瞬間、部屋の外へ瞬間移動してしまう子供。

 落書きした絵が動き出す。触れた植物が異常成長する。火花を散らす。物を浮かせる。


 能力は統一性を持たず、ただ“必ず現れる”。


 それは祝福でもあり、災害でもあった。


 当然、事故が起きる。

 悪意があれば、事件になる。

 そして――国家の管理が必要になった。


 そこで日本政府は、裏で存在していた超常対策組織を再編する。


 政府公認特殊現象統制機関。


 アーカイブス。


 刹那の所属先だ。


 アーカイブスの仕事は単純だ。

 能力者の保護、監視、教育、そして――危険個体の排除。


 そのために彼らは、能力者へ識別情報を与える。


 コードネーム。


 通称、ジョブ。


 ジョブは能力の種類ではない。

 “存在としての危険度と影響力”を総合評価した格付けだ。


 公表されているのは四段階。


 日常生活に支障のないDランク。

 制御装置〈アブソーバー〉装着義務のあるCランク。

 訓練下での能力使用が許可されるBランク。

 都市災害級の潜在性を持つAランク。


 だが、これは表向きに過ぎない。


 アーカイブス内部にはさらに上が存在する。


 完全制御可能な超常存在――Sランク。

 存在そのものが周囲へ影響を及ぼす――Zランク。

 そして分類不能。


 Uランク。


 刹那は呟いた。


「……胸糞悪い仕事だ」


 自分はエージェント。

 見つけ、分類し、必要なら捕縛する側の人間だ。


 そして今回の任務は、その中でも異常だった。


 人口二百人未満の孤島。

 十七歳以下の子供は七人。


 ――のはずだった。


 しかしアーカイブスの観測網が、あり得ない情報を拾った。


 記録に存在しない八人目の子供。


 出生記録なし。学校記録なし。戸籍なし。

 なのに島民全員が“昔からいる”と証言する。


 フェリーが港へ接岸する。


 刹那はコートを翻し、桟橋へ降り立った。


 案内の老人に連れられ、島の奥へ向かう。

 そして、ある建物の前で足が止まった。


 木造。ツギハギ。外観はただの古い集会所。


 だが。


(……なんだ、これは)


 呼吸が浅くなる。


 威圧感。


 魔力ではない。呪力でもない。


 もっと原始的な――


 格。


(城……?)


 理屈では否定できる。

 だが本能が理解していた。


 ここは、誰かの“領域”だと。


 その時、扉が勢いよく開いた。


「じゃあ行ってくる!」


 飛び出してきたのは一人の少年。

 十七歳前後。屈託のない笑顔。どこにでもいそうな普通の高校生。


 刹那は即座に前へ出た。


「止まれ。アーカイブスだ。ジョブカードの提示を――」


「は? なにそれ。悪い、急いでるんだ。祭りの準備あってさ!」


 少年が通り過ぎようとする。

 刹那は肩を掴んだ。


 その瞬間。


 ――圧。


 空気が沈んだ。


 重力ではない。

 殺気でもない。


 ただ、“抗えない”。


(……王気?)


 刹那の背筋が凍る。


 戦場で、一度だけ感じたことがある。

 国家元首の護衛任務で、ある王族と対面した時。


 存在そのものが他者を従わせる気配。


 少年は何もしていない。

 ただ立っているだけだ。


 それだけで、体が動かない。


 刹那は反射的に手を離していた。


 少年――一条燃は、不思議そうな顔をしながらも、気にせず走り去っていく。


「……くそ」


 確信する。


(あれはAでもSでもない……)


 理解不能。


 Uランクの可能性。


 その直後。


 ――ドンッ!!


 爆発音が島を揺らした。


 黒煙が上がる。


 場所は小学校の校庭だった。


 刹那が駆けつけた時、光景は地獄だった。


 白い仮面をつけた兵士の集団。

 そして中央に立つ、六本腕の虫型異形。


「神の御意志により、この世界は“美しく”再構成される」


 怪人が少女へ光線を放つ。


 悲鳴。


 少女の頭部が昆虫へ変貌していく。


 燃が、その少女を抱きしめた。


 そして。


 静かに、怒る。


「……お前さ」


 空気が震える。


「人の人生、オモチャだと思ってんだろ」


 覇気が広がる。

 兵士たちが一歩退いた。


 燃が振り返る。


「なぁ、そこのおっさん!」


「……俺は二十五だ」


 刹那は銃を抜いた。


 安全装置を外す。


「だが、神気取りは――嫌いでな」


 燃は笑った。


「よし決めた。あいつらぶっ飛ばす。終わったら話聞くから手伝え!」


 刹那も口元を歪める。


「命令系統が逆だ、ガキ」


 そして銃声が響いた。


 こうして――


 まだ名も持たぬ王と、神を狩る男の戦いが始まった。

始めて書いたので感想ご要望お待ちしてます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ