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幕間 クリーター公爵

「旦那様、お嬢様から手紙が届いております」


「おぉ、そうか」


 クリーター公爵邸の執務室にてダニエル・クリーターは執事からマリエラからの手紙を受け取った。


「ほぅ、既に家を建てたのか。 相変わらず仕事が早いな、クリスにマリエラの荷物を運ぶように伝えておいてくれ」


「かしこまりました」


 クリスとはマリエラの兄であり現在ダニエルの下で修行中である。


 もう一枚の手紙を読みダニエルは眉間に皺を寄せる。


「未だに娘を差別して育てている輩がいるとは……、過去の教訓が生かされていない結果だな」


 ハァー、とため息を吐いた。


 そこへダニエルの妻であるシュエルがお茶を持って入って来た。


「ダニエル様、お茶をお持ちしましたわ」


「シュエル、ありがとう」


「あら、マリエラからの手紙ですか?」


「あぁ、事は順調に進んでいるみたいだ、ただそれとは別にちょっと厄介事に巻き込まれたみたいだ」


「厄介事?」


 ダニエルはシュエルに手紙を見せた。


「あらまぁ……、愚かな事をしている輩が未だにいるのですねぇ」


「あぁ、『あの事』がもう風化しているのか、と思うと情けない」


「私達が学生時代ですからもう20年前の出来事になりますわね」


 『あの事』というのはこの国で起こった婚約破棄騒動の事。


 当時の王太子が婚約者に婚約破棄を一方的に宣言、国外追放を言い渡したのだ。


 ところがその元婚約者は他国で実力が評価されその国の王太子に認められ婚約、王太子妃となったのだ。


 その国は自国よりも力を持っていたのでこの国は恥をかく結果になってしまい王族に抗議の声が殺到した。


 そして、問題を起こした王太子は剥奪され幽閉、その数年後に病死が発表された。


 その元婚約者も実家では不当な扱いを受けていたので、その家も取り潰し、王太子を唆した浮気相手もこの世からいなくなっている。


 この騒動は貴族に対しての戒めとなり、子供は跡取りとか関係無く平等に育てる事が法律として制定され違反した者は厳しく罰せられる。


 ただ今まで罰せられた家は無いのだが、やはり長男長女を優先してしまうのが現状だ。


 まぁ、このルミナの実家である男爵家は論外である。


「それでどうしますの?」


「どうする、て勿論貴族院に報告するよ」


「そうですわね、法律だけあって効果が無いのは国として示しがつかないでしょうしね」


 ダニエルは貴族院にルミナの実家の事を報告した。


 その後、ルミナの実家には貴族院から派遣された調査員が送られ徹底的に調査が行われた。


 結果、ルミナの実家は取り潰しになった、という。 


 

 

  

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