【短編】婚約破棄された令嬢は国外追放満喫中!(の予定ww)
婚約破棄ものです!
恋愛要素は薄々うすい感じです!
「残念だが……セレスティーナ。君は王子妃にふさわしくない。とてもじゃないが王家の一員にはなれない。だから私は君との婚約を破棄し、このウィステリアと新たに婚約する!」
学園の卒業パーティーに響く声。
うわぁこいつマジか。
そう思ったわたしはたぶん悪くない。
実はわたしは辺境伯家のお嬢さま。名前はセレスティーナ。
ついでにいえば転生してる前世の記憶持ち。
……これ、まさかの乙女ゲーな世界だったとか? そんな世界だとは思ってなかったけど? ロープレなんだと思ってたのに?
そんなことを考えてるわたしの前にはキラキラしてるイケメン王子と、その腕に引っついてるキラキラ女子プラスその他王子の関係者がいる。
「リアを階段から突き落としたとかありえないだろう? それが伯爵令嬢のすることか?」
「殿下に近づくなとリアを脅迫して頬を叩いたとも聞いています。なんて乱暴なのでしょうか」
「中庭の池にリアを突き落として高笑いしていたらしいな? 人の心があるのか? 本当に?」
その他の王子の関係者がなんかいってるけど、その話はマジで身に覚えがない。まったくない。
ええと? この人たちって宰相のとこの次男と、騎士団長のところの三男と……もうひとりは王子の従兄弟か幼馴染か、そんな感じだったか? いや、乳兄弟?
それにしてもまあ……これ、ガチで冤罪。
わたしにはそこの女の子をどうにかする理由がないから。
「……そもそも何かあれば『とりあえず殴りましょう』という君が王子妃に向いているはずがない」
あ~。
そこを言われると言い返せない。
これは事実だった。
昔のテレビとかと同じで、だいたい殴ればどうにかなるのは生まれ育った辺境で学んだ知恵だから。
その結果として、入学してしばらくすると王子とは関わらなくなったわけで。
だからその女の子に対する嫉妬っぽい感情はゼロなんだけど?
「……このまま君がこの国にいるとウィステリアが安心できないことは明白だ。よってセレスティーナ、君は国外追放とする!」
うーん。
冤罪で国外追放とか、もう絶対に乙女ゲーだ。
要するにわたしって……悪役令嬢だったのか。
全然気づかなかったな、マジで……。
そもそも学園でも王子とそこまで関わってこなかったし……。
まあ、現代日本みたいな学園とかあるからアンバランスでなんか変な世界だな、とは思ってた。
でも、なんかのロープレくらいだろって……そういう認識しかなかった。
生まれ育ちは辺境だったもので、はい。
でもまあ……好都合では、ある。
それはそれ。
王子みたいに弱そうな男との結婚とかどう考えても無理だ。わたしには。
転生した中身がガサツなので。
わたしの血筋的には最終的には王子妃や王妃になっても問題ないとは思うけど……なりたいとは思わない。
だから答えは当然、こうなる。
「……殿下。婚約破棄、そして国外追放。どちらも喜んで受け入れます!」
「は!?」
ドレスのスカートをちょこんとつまんで一礼しつつ、叫んだわたし。
きょとんとした顔の王子。
……マジで名前なんだったっけ? 殿下としか呼んでないからいまいち名前が分からん。エドワードとか、エイナードとか、そんな感じだったか?
生まれた順番で第二王子だったのは間違いない……はず。たぶん。
それにしても……自分で婚約破棄と国外追放っていったくせになにが「は!?」だよ?
まあいいか。
婚約破棄はオッケーだ。この王子との結婚は心理的に厳しくて無理だったし。
国外追放もオッケーだ。いろいろ冒険できるし、そっちはむしろ楽しみだから。いろんな国に行ってみたい。
だが……冤罪はいかん。冤罪、ダメ絶対。
「……ただ、いろいろといわれた内容については冤罪なので謝罪はしませんし、当然、賠償とかもろもろは殿下の方に」
「なっ……君はまだそんなことを!」
「あ、証拠はなかなか簡単ではないですけど、わたしの場合、冤罪の証明は簡単にできますよ?」
「何……?」
「今からの証明に関して、罪は問わないと殿下に約束していただければすぐにお見せしましょう!」
「見せ、る……とは……? 証明を見せる?」
わたしはにっこりと笑顔を見せる。
王子はそれを見て目を細めてにらんでくる。
嫌なヤツだな、マジで。
「……いいだろう。証明してみるがいい」
「承知しました。では……」
わたしは周囲を見回す。
確か騎士団長のとこの三男は強さ自慢だったはずだけど……さすがに人間は壊すとマズいか。
そうなると……ああ、あの柱でいいや。
すたすたとわたしは柱に近づいて……。
「それじゃあ、ご覧ください」
ひょいと右手を振りかぶって、軽~く、ぶん、とビンタするみたいに柱を叩く。
ドガグラガシャッッッ!
はい、この通り。
大きな柱の一部が粉々に近いレベルで崩れましたねー。
その結果、パーティー会場全体が完全に沈黙した。
「……ご覧のとおり、わたしが叩いたり、突き落としたりした場合、そちらの……なんとかさま? とかいうご令嬢ではおそらく……この場に生き残っていないかと思われますが、いかがでしょうか?」
振り返ってみると、王子も他の人たちもぽかーんとしてる。
まあ、そうなるかもしれない。
わたしくらいステータスが高い令嬢は見たことがないので。
ステータスも見たことないけど。
辺境でひたすら魔獣を狩りまくって頑張ったこの力!
ダンジョンなんかにも挑みまくってるから!
基本的に学園の淑女科でこんな力を使う場面はゼロだったから知らなかったのかもしれない。
「…‥殿下?」
「は……」
「……どうでしょうか? あ! 柱ではご納得いただけないというのであれば、そちらのご令嬢で実際に試してみた方が証明に……」
「やめろおおおおおおっっっ! 絶対にやめろおおおおおっっ!」
なんだ、意外と元気あるじゃん。
王子がご令嬢をめちゃくちゃ抱きしめてるけど、このなんとかってご令嬢がそこまで大事か。
ちゃんと愛があるんだな、うん。
それならそれで頑張ってもらいたい。
「では……そちらの騎士団長のところの三男さまとかでも……鍛えてらっしゃるのでは?」
「や、ややや、やめてくれええええぇぇぇっ!」
「では、宰相の……」
「い、いやだあぁぁぁぁっ!」
「じゃあ残りの……」
「こ、殺されるぅぅぅっっ!」
……証明、完了でいいよな? これ?
わたしがビンタしたら死ぬ。普通の人ならたぶん死ぬ。
それで間違いないだろ?
王子の幼馴染らしい人は、殺されるって叫んでるし。
つまりなんとかさんってご令嬢が生きてるってこと、それがすでに冤罪であることの証明になるはず。
「それならば、冤罪であるとご納得いただけたということでよろしいでしょうか? わたし、殿下との婚約破棄は嬉しいですし、国外追放も楽しみですけれど……冤罪で我が家に……メイルダース辺境伯家に迷惑をかける訳にはいきませんので」
「う、嬉しい……? た、楽しみ……?」
「ええ、そうですね。殿下と結婚とか絶対に嫌でしたのでとても嬉しいです。あ、冤罪での婚約破棄と国外追放ですから、メイルダース辺境伯家にはきちんと王家から慰謝料というか、賠償金というか、そのへんはよろしくお願いしますね? ちゃんとしないとどうなっても知りませんよ?」
「あ、いや……え、冤罪であるのなら、それはなかっ……」
「いいえ! 殿下!」
取り消させる訳ないだろ。ふざけるな。
こんなチャンスを逃がしてたまるか!
「殿下が王族として高らかに宣言した婚約破棄と国外追放です。わたしは喜んで受け入れますと申し上げました! ですが、冤罪なのであとの揉め事はご自分でどうにかしてください。メイルダース辺境伯家は国防の要でございます。わたし、これでも辺境伯家では大事な姫として扱われておりましたので……賠償は頑張ってもらわないとこの国がどうなることか……」
わたしはこの王子との結婚とか絶対に無理だけど……メイルダース辺境伯家に女の子はわたしだけだったという不幸。
王家は辺境伯家との関係を重要視してたはずで、だからこそのわたしと殿下の婚約だった……と思う。
政略ってやつだ。
だから婚約破棄を叫んだバカ王子には実は感謝しかない!
なんか知らんけど、なんとかってご令嬢のお陰で……わたしは自由になるチャンスを得た!
婚約はなくなって結婚しなくていいし、国外追放でこの世界をいろいろと旅することも可能!
ありがとうなんとかさま! 冤罪かけてくれて!
「では、わたしはすぐにでも国外へ旅立ちますので!」
「あ、いや、待……」
誰が待つかバーカ!
わたしはパーティー会場から、誰にも追いつけないスピードで逃げたのだった。
国外で満喫します!
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