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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
一章 出国からラサまで
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僧侶の状態


 ここで妙なことになってきた。

 法王に呼ばれたり、貴族や大臣に迎えられるほどの立派な医者(慧海(えかい))を、僧舎に置くわけにはいかないと、セラのピーツク・カムツァンの老僧達の議論になってきたのだ。それで前例がないが、慧海には上等の部屋をあてがってくれることになった。


 慧海が法王に初めて会ったのが7月20日で、その月末に部屋の引き渡しがあった。初めて学校へ来た者は金のある人でなければ一人部屋はもらえない。慧海は余裕があったので汚いが一人部屋をもらっていた。

 10年くらいたつと、4等室へ移ることができ、それから3年たてば3等室に行ける。博士になれば2等室、化身のラマとなれば1等室だ。

 慧海が移ったのは2等室だった。庫裏と物置があり、こぎれいな2階の部屋だった。


 僧侶には上等、普通、下等の3種があり、普通なら月に生活費7円ほどとなる。僧舎なら部屋代が1〜3円かかる。衣服は普通の羊毛布でこしらえた袈裟と下着、僧帽、靴で、一通りそろえれば20円位かかる。

 食物は朝はバター茶と麦焦がしで、大本堂へ行けばお茶は毎朝、大椀に三杯ずつもらえるが、普通は自分の室で茶をこしらえて飲む。昼過ぎには肉も食べる。晩は乾酪、大根、脂肪肉の入った麦粉の粥をすする。チベット人は肉をよく食べるが野菜が乏しいので、始終茶を飲んでいる。

 僧侶の財産は田畑で、ヤク、馬、羊、山羊などの牧畜をしているものもあるが、そう多くない。寺からの禄と信者からのお布施()だけでは生活できないので、自分の財産や内職で生活費を工面する。僧侶は大抵商売や農業、牧畜、仏具をこしらえるなど、食肉処理や猟師以外ならどんな職にでも就く。


 上等な僧侶の衣食住はなかなか立派で、ヤクを500〜4000匹ほど持つ者もいる。それでも僧侶で50万くらいの資本を持つ商売人はチベットでも数人しかいないそうだ。着物は上等の羊毛布の法衣で、粥のようになった粘度の強い上等なバター茶を飲む。

 まず茶を半日も煮て、そこにヤクの新鮮なバターを入れ、塩を入れて作る。これを一瓶作るには38銭くらいかかる。これで上等の麦焦しをこね、さらに乾酪とバターと白砂糖を固めたツーというものを入れる。朝から乾肉と生肉、煮た肉を食べる。

 昼は高価な米を煮て、バターの中に砂糖と乾葡萄を入れたものをまぜて食べる。夜分は小麦団子を雑煮のようにして食べる。肉や大根、乾酪、バターも入れる。上等の僧侶は肉を食べない日は1日としてなく、斎戒を保って肉食をしない時は、痩せたとか死にそうになったとか騒いで哀れである。

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