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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
第一章 出国からラサまで
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入国の途上


 座禅の結果、慧海(えかい)はテントの方に行くのが安全だと結論し、荷物を背負ってぼつぼつ出掛けた。

 普通なら人家に近づかないほうがいいが、全く道のない場所に行くのも危険だ。夕暮れにテントの前に着くと、大きな犬が5、6匹やってきて慧海に吠えかけた。犬をやり過ごしていると、テントの老婆が「ああこりゃ巡礼の方だ」と迎えてくれた。


 慧海は、自分がラサから来たカイラス山への参詣者だと説明し、一夜の宿を請うと、老婆は快く家に迎えて茶をくれた。

 茶はバターや塩が入ったスープのようなもので、香りに癖があるが慣れればうまい。老婆は茶の後に麦焦し粉もくれた。慧海は午後に固形食を採らない非時食戒を守っているので遠慮すると、老婆は感心して「ゲロン・リンボチェの所までは1日ほどかかります。明日、息子とヤクに行けばよろしい」と勧めてくれた。

 ありがたい話だが、それ以前に靴が破れているので歩けない。老婆に相談すると、ヤクの皮を縫うのに水に浸して軟らかくする必要があるから修理には2日はかかる。テントは明後日にも移るので、明日のうちにゲロン・リンボチェを訪ね、そこで靴を直せばいい。そこまでは息子の靴を貸してくれるという。

 夜に息子が帰って来て、ゲロン・リンボチェは神通力があり、人の心を読み、予知能力があると教えてくれた。だがチベットにはいかさま坊主も多い。慧海はその夜、想像に駆り立てられ、なかなか眠れなかった。


 夜が明けると息子がヤクを連れてきた。初め慧海はその鋭い角で打たれるのではないかと思ったが、性格は案外おとなしい。息子は土産のチーズやバターを載せた3匹のヤクを用意し、老婆は慧海に麦焦がし粉などをくれた。それから西北へ行き、東方の山に進みかけたところで、あられが降りだしたので雨宿りした。

 それから幅50メートルほどの川を二つ渡り、少し山に登ると白い岩窟が見えてきた。そこにゲロン・リンボチェが居るという。


 白い岩窟の前にはまた一つ少し灰色がかった窟があり、弟子が住んでいた。息子が「あられに降られたから遅れてしまった。リンボチェにはもう逢えないか」と問うと、やはり明日でなければ叶わないという。息子は土産を渡して帰ってしまい、慧海は窟に泊り込むことにした。


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