新たなクエストへ
「なっ………冒険者が……この子たちだけ?!
いったいそれはどういうことですか?!」
リゼルは興奮気味にカザマに尋ねる。
現状を理解しがたいという感じだ。
「そのままの意味だよ。登録冒険者はこの子たちだけなんだよ。」
「以前は交通の要衝としてにぎわっていたこの街も、新たな街道の整備、主要街道の変更によって、すっかりさびしくなったちまったのさ。」
少し悲しそうな顔でカザマは語った。
「孤児だった私達兄妹を街の人たちは助け、今日まで育ててくれたのです。
だから、私達は育ててくれた街の皆さんのために冒険者になったのです。
……このままだとレーベルの街は、
私達の大恩ある街がなくなっちゃうのです……」
今にも泣き出しそうなルシアが話す。理由を理解はしているが、どうにもやるせない、といった感情がこもっていた。
「確かに、リゼルの言うことは正しい。
しかしな、この子らがやるしかないんだ…
オレの体がまだ動けばよかったんだが、歳には勝てん。あの頃のようには体が動かないんだよ。
悔しいが……」
そう言ってカザマはリゼルへの説明を終えると、兄妹の方を向き、改めてクエストの説明を始めた。
「改めて説明するぞ。
ゴブリンが目撃されたのは、ウェアウルフ討伐クエストと同じ街道だ。
お前達は、ゴブリンの痕跡の調査、巣穴の位置探索までをお願いしたい。
駆除は小鬼駆除業者に依頼するから情報集めまでになるが、遭遇する可能性もあるので、そのつもりで頼むぞ。」
「はいっ!」
「わかりましたのです!」
さきのクエストの疲れなど一切顔に出さずにふたりは精一杯の声でカザマに応えた。
「頼んだぞ!」
クエストでの傷も癒えておらず、疲れていないはずがないふたりと、それをわかっていながら送り出すしかないギルド長。
たとえ、今しがた長旅を終えてきた所だとしても、このまま黙っていることなどリゼルには出来なかった。
「ならば私も行きます。
私もレーベル冒険者ギルドの登録冒険者ですから。
戦闘要員ではなく、簡単なサポートしか出来ないですが。」
「本当か?
それはありがたい!」
「わぁー!」
「ヤッターのです!」
こうして、3人での初めてのクエストへ旅立つ事となった。