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レーベル冒険者ギルド事情

無事、レーベルに着いた3人は、すぐに冒険者ギルドに向かった。


「でも、良いのですか?リゼルさん。

先に冒険者ギルドへ寄らせてもらっても?」


まだリゼルの事を商人と勘違いしているルークからしてみれば当然の疑問だ。


「いや、私も冒険者ギルドに用があってね。なので構わないよ。」


「そうなんですか。なら良かった。」


そうこうしているうちにレーベルの冒険者ギルドへ着いた。


「ここがレーベルの冒険者ギルドです。」


ルークはリゼルにそう言うと、嬉しそうに扉を開けた。


「ギルド長!ただいま戻りました!」

「戻りましたのです!」


ふたりは若者特有のハツラツな声で元気にギルド長へ声をかけた。


「おおっ!戻ったか!

クエストはどうだった?」


そう言ってふたりを迎え入れたのはレーベルの冒険者ギルド、ギルド長「カザマ」である。


昔は冒険者として活躍していた。


年齢からくる体力の衰えとともに引退し、現在は故郷のレーベルで冒険者ギルド長としてギルド運営や冒険者のサポートをしている。


「はいっ!無事に成功しました!」


元気よく答えるルーク。


「それは良かった。見たところ大きなケガも指定なさそうだし。

ところで、そこにいらっしゃる方はどちら様かな?」


ルークはハッとして、説明し始めた。


「こちら、商人の……」


リゼルはその言葉を遮り、改めて自己紹介した。


「はじめまして。私はリゼルと申します。以前はロマニエルドで冒険者をしていましたが、ここ、レーベルにて冒険者となるべくこちらを伺いました。

調合師(コンパウンダー)リゼルで登録をお願いします。」


ルークとルシアはポカンとした顔でリゼルの自己紹介を聞いていたが、やがて自分たちの過ちに気づき、焦りながら深々と頭を下げた。


「冒険者とは知らず、商人さんに間違えるなどと失礼なことをしてしまいすみませんでした!」


「ゴメンナサイなのです!」


「いや、いいんだよ二人とも。

商人と言われても訂正しなかったし、あの身のこなしを見て、冒険者とは思わないからね。」


バツの悪そうなルークとルシアをよそに、カザマはハッとした表情でリゼルを見ていた。


「ロマニエルドのリゼルって、もしや「赤い牙」のリゼルかい?まさかとは思うが……」


「はい。()「赤い牙」のリゼルです。

理由あって「赤い牙」を抜けることとなり、レーベルへ参りました。」


カザマは驚いている表情をしていたがルークとルシアの兄妹は、その驚きの意味をよく分かっていなかった。


「ギルド長。何をそんなに驚いているのですか?

リゼルさんはそんなに有名な方なのですか?」


ルークは不思議そうな表情でカザマに尋ねる。


「ああ。「赤い牙」はオレの知っている範囲ではここ何十年も出ていないSランクパーティーに最近認定されたパーティーだ。」


「エッッッ...Sランクぅ〜〜!?」


「ですっ!?」


ルークとルシアが驚きの声を上げる。


「であれば何故、リゼルさんは「赤い牙」をお辞めになってしまったのですか?」


ルークにとっては当然の疑問であったが、その質問は、リゼルの心を少しえぐった。


リゼルもルークの疑問は当然の事であり、質問に意図も何も無いただの反射的な会話である事は十分に理解していたが、それでもその質問に答えることは出来なかった。


正確に言えば、答えようとはしたが、唇が重く鉛のようになり、うまく開くことができなくなってしまった。


時間にしたら数秒の間だったが、リゼルには途方もなく長く感じられていた。


「まぁ、パーティー事情ってもんは色々あるもんだ。

経験上、高ランクになればなるほど複雑になっていくものさ。

だから、あまり聞いてやるな。」


ルークは少し不満気な顔をしつつも、それ以上の追求をやめた。


「とにかく、あい分かった!

レーベル冒険者ギルドは「リゼル」を冒険者として受け入れよう。」


「ありがとうございます。」


リゼルは深々と頭を下げ、感謝の意を示した。


「ヤッター!」


「ヤッターです!」


ルークとルシア兄妹は喜びの声をあげた。

兄妹の喜び様に大げさすぎやしないか?と、リゼルは少し違和感を覚えた。


「それと、ルークとルシア。

帰ってきて早々悪いんだが、行商人からゴブリンの目撃情報があってな。

明日、その調査に向かってほしい。」


「はいっ!」


「分かりましたです!」


ふたりの小気味良い返事とはうらはらに、驚き焦ったような表情のリゼルが割って入る。


「ちょっ……ちょっと待ってください!

今クエストから帰ってきたばかりなのに。

明日またクエストに行けとは、どういうことですか?!」


「確かにゴブリンは見過ごせない。それは分かります。

なぜ、この兄妹なのですか?!

あまりにも酷です!

他の冒険者に依頼すればよいのでは?」


流石に見過ごせない、といった表情でリゼルはカザマに詰め寄る。


しかし、リゼルはカザマとルークルシア兄妹の表情を見て、一気に血の気が引いた。


その表情は悲哀と覚悟が入り混じった冷たい表情だった。


カザマは気圧されたリゼルに告げた。


「レーベル冒険者ギルドにはこの兄妹以外に登録者はいない。」


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