エンカウント
レーベルまでは中々に険しい山道になっている。
ロマニエルドからは約1日の道のりである。
「ふぅ。そろそろ着くかな。」
リゼルは最低限の生活用品と調合師の研究用品、仕事道具を持ってレーベルへと向かって山道を歩いていた。
「以前はロマニエルドとレーベルは盛んに交易していたらしいが、今はそれほど行き来がない。
道は中々に険しいが、道のりは1日とそんなに遠くもないのに不思議なものだ。」
人の往来のある道と往来のない道では決定的に違う事がある。
モンスターの出現率だ。
往来が多ければ安全、というわけではないが出現率は低い。
多くの人が行き交う主要な道というのは、物資流通の生命線となる。
そんなところにモンスターが出現すれば流通が滞り、文字通り街は干上がってしまう。
なので往来のある道でのモンスター出現は、速やかに討伐される。
ギルドも間違いなく討伐できる実力をもったパーティーを派遣する。
「道の安全確保」はある種、冒険者の義務に近いものであった。
しかし、人の往来が少ない道までは手が届いていない事も多く、あまり往来のない、特にこんな山道なんかはモンスターの出現に注意しながら進む必要がある。
それがさらに人を遠ざけ、街が孤立していってしまう、といった話は、珍しいことでは無い。
「道の維持」というのはその街にとって必須だが難しい問題になっているのだ。
もちろんリゼルはそんな事情を分かっているので、往来の少ない道を行くときは常にモンスターを警戒しながら歩いている。
警戒はしているが、対応出来るかどうかは別問題だった。
リゼル自身の戦闘能力の無さは折り紙付き。本来なら護衛を雇ったり、交易の商隊なんかに帯同させてもらったりするべきなのだが、あいにく、金も商隊の往来もないのだった。
不意に、リゼルは脇の茂みから視線を感じる。
すぐにリゼルは戦闘態勢をとる。
道中に感じる全ての違和感はモンスターのものとして行動選択することが命を守るとリゼルは長年の経験から学んでいた。
案の定!ウェアウルフだ!




