回復薬
先に動き出したのはゴブリン達からだった。
単なる本能なのか、知性による判断なのかは分からないが驚き戸惑っているルークに背を向け、逃げ出した。
「逃がすな!」
リゼルの大きな声がルークを動かす。
ルークは声への反応により、自分の思考より先に身体が動いた。
後に「雷神」と称されるルークの動きは閃光のように速く、慌ただしく逃げ惑うゴブリン達を、あっという間に倒してしまった。
たとえ、どんなに恐ろしく手強いゴブリン達でも、不用意に背中を見せてしまったなら、ルークにとって、物の数ではない。
「よしっ!後は奇襲に注意しつつ、残りがいないか見て回ろう。」
商人さんを護衛しつつ、3人は街道の周りを探索したが、新たなゴブリンやその痕跡は見つからなかった。
「リゼル様…。これで…」
ルシアが期待を込めてリゼルに質問する。
「ああ…。これでクエストクリアーだ!
ただし、商人さんを無事に送り届け、ギルドに報告するまでがクエストだからな。油断は禁物だぞ。」
「やったぁ!!」
無邪気に喜ぶルーク。その顔は戦闘中とはうってかわって、年相応の幼さの残る歓喜の表情をしていた。
「素晴らしいっ!!」
喜ぶ3人の輪に行商人が割って入る。
リゼルの手を両手で握りしめ、目をキラキラと輝かせながら。
まるで恋する乙女かのようにリゼルを見つめていた。
「これぞまさに秘薬!まさか実在していたとは!!」
「秘薬?!
まさか、そんな大層な物ではないですよ?!」
リゼルは心底驚いた様に答えた。
「知識と経験と技術とスキルを持つ調合師なら誰でも作り出せるありふれたアイテム…」
「そう…回復薬です。」




