撃退
リゼルは以前から考えていた事があった。
それは「水系魔法使いと連携できれば自分ももっと戦闘に協力出来るのではないか?」
ということである。
水系魔法使いの作り出す水は不純物の限りなく少ない「純水」である。
今日、調合において、最も多くの「触媒」となるのは「水」であり、とりわけ水系魔法使いの作る「純水」は重宝されている。
リゼルの気分はこの上なく高揚していた。
仮説が現実になるこの瞬間。
調合師として1人の研究者として、この世界を屈服させるこの時こそがリゼルが絶頂に達する時であった。
「さぁ、ルシア、たたみかけるぞ。」
「ハイです!」
「例えば回復薬。多種の薬草に含まれる粘性のある物質と、その粘性を硬化させる成分があり、それが傷口を塞ぎ、細胞が活性化される成分により回復が促進される。」
「調合師のスキルで、粘性のある物質と粘性を硬化させる成分だけを(分離)。そして純度を高める(精製)。」
リゼルが採取した薬草を手に取りスキルを発動させる。
薬草は2つの液体に変わった。
「ルシア。まず、こちらの液体を混ぜた水鉄砲をホブゴブリンの肘と膝に当てたら、次にこちらの液体を混ぜた水鉄砲を同じ所に当てるんだ。」
「ハイです!」
普段なら素早く動き回るモンスター相手に水鉄砲をピンポイントで肘や膝に当てるなんて芸当はまず不可能だが、その場で闇雲に暴れ回るだけの木偶に当てるのはそう難しいことではない。
ルシアが見事にホブゴブリンの肘と膝に水鉄砲を当てると、あっという間に固まり、ホブゴブリンを拘束した。
「あとは口をふさぐだけだ。ホブゴブリンのアゴの力では拘束を砕けない。穏やかに窒息してもらおう。
毒などの効果は種族差、個体差あるが、窒息はおおよそ共通だ。」
そう言うとリゼルは残った薬草から例の成分を取り出し、ルシアの作り出す純水と共にホブゴブリンの顔全体を固まらせた。
次第に動きが弱々しくなり、その後ピクリとも動かなくなったホブゴブリンを見て、リゼルはつぶやく。
「討伐完了。」
「やったです!!」
2人は喜びと安堵の表情を浮かべたが、リゼルはすぐに気を取り直し、
「さて、ルシア。ルークに加勢するぞ。」
「あわわっ。はいです!」
ルシアはルークがまだ戦闘中であることを忘れていて、慌てふためいていた。
2人が後ろを振り向き、戦闘中のルークに目をやると、丁度その時、ゴブリンの鋭い爪がルークの肩口をきり裂いて、真っ赤な鮮血と共にルークの腕が身体から離れていくのが見て取れた。
「兄………様……?」




