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(仮)彼女と僕の奇妙な日常  作者: MOH
『 4月 突然の来訪者 』
5/14

【日本食派】

 翌朝、段ボールベッドならぬ段ボール箱の上で寝ていたら、スマートフォンの呼び出し音で起こされた。


「おはよー、朝ごはん出来たよー」


「うぅん? 朝食があるの」


「降りてくれば、分かります」


「降りていくけど…(ツーッ、ツーッ)」

 彼女との通話は切れた(切られた)ようだ。


 僕の部屋がある3階には水回りのものが完備されておらず、着替えとタオル、トラベルセットを持って1階へ降りて行く。


 ソファが点在するホールの中央から少し離れたところに、以前はダイニングテーブルだったかもしれない古びた作業台の上に、おにぎりと卵焼き、御御御つけ(おみおつけ)が置いてある。


 食べて良いのか迷っていると、彼女が玄関から戻って来た。


「朝からどこかへ出かけたの?」


「エムくんは、お寝坊さんね。もう9時過ぎよ。早くご飯を食べて『人物観察』に出かけましょう」

 僕の問いには答えず、今日の予定を確認する彼女は、いつもの通り。


「人物観察?」


「忘れたの?」


「昨日、叔父さんが出した課題だろう。銀座に行くんだっけ?」


「エムくんの起きるのが遅いから、お昼になっちゃうよ。食べ終わったら直ぐに出掛けるから、よろしくね」

 彼女が軽快な足取りで階段を駆け上がる。

 スウェットの上下とスニーカーだったから着替えをするのかな。


 それにしても、おにぎりと卵焼き、御御御付けとは。

 彼女は日本食派なの?


 急いで朝食を食べ終わり食器を片付けて、バスルームへ向かう。

 バスルームの鍵を掛けてシャワーを浴び、歯を磨く。


 このオンボロビルの何が一番不便かというと、今までは叔父さんが一人で住んでいたから、これで良かったのかも知れないけど、三人で住み始めてもバスルームが1階にしかないこと。

 元々、会社が使っていたビルだから各階にトイレはあるけど、そのあと叔父さんが住居用に改造したためか、トイレ以外の水回りが1階にしかないんだ。

 彼女が長風呂しないことを願うばかり。

 昨日はあれからシャワーでも浴びたのかな?

 朝から清々しい美少女スマイルだったけど。


 バスルームで服を着替えホールに入ると、オリーブ色のセーターワンピースにオフホワイトのレザージャケットを羽織り、濃いブラウンのショートブーツを履いた彼女がソファに座り、スマートフォンに何かを打ち込んでいた。

 バスルームから出てきた僕に気がついて顔を上げ、格好をチェックするように眺めている。

「エムくんは朝からマイナス2点です。プラスになるように頑張って下さい」


「どういうこと?」


「今朝の行動のペナルティです」


「僕の行動?」


「そうです。まず寝坊、それから昨日外出を決めたのに、見たところ何も準備をしていません。その格好で銀座に出かけるつもり?」


 寝坊は言い訳しないけど、格好はシャワーを浴びたばかりだから、ジャージとパーカーなのですが。

 説明するのも面倒なので『着替えてくる』と言い残し、3階の部屋まで階段を駆け上がる。

 階段を上る途中の2階はシーンと静まり返っている。叔父さんはどこかへ出かけたみたいだ。


 自分の部屋に入って愕然とする。まだ引越しの荷解きをしていなかったんだ。

 仕方がないので、引っ越すときに着て来たピージャケットとハンガーに吊るしたままの厚手のコットンパンツに着替え、上京前に買ったハイカットのスニーカーに履き替えて、急いで1階に降りて行った。


(つづく)

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