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(仮)彼女と僕の奇妙な日常  作者: MOH
『 4月 突然の来訪者 』
3/14

【一休さん】

 彼女は握りこぶしをおでこに当てて、何かを思い出そうとしている表情。

 一休さんの生まれ変わり?

 どうでも良いことを考えていると、彼女がおもむろに口を開く。


「歳は私たちと同じくらい、小柄で身長は150cmちょっとかな? 細身だけど胸は大きかったわ(その説明は必要なの?)。髪はストレートで肩に掛かる長さ、少し癖っ毛。顔は雨に濡れて化粧が落ち、目を閉じていたからよく分からないけど、丸顔で鼻はあまり高くなくて、でもよく喋りそうな口元だった」

 彼女はあの一瞬でよく覚えているなぁ。

 女性って、そんなに相手のことをよく見ているの?


「なるほど、よく観察してるね。君はどうなの?」

 叔父さんがいきなり、僕に振ってくる。


「えっとー…  彼女と同じかな?」


「オイオイ、人物観察は小説を書く以前の話だぞ。人の出てこない小説なんてある? 目の前にいる人物を言葉で説明できないと、文字にできないだろう?」

 おっしゃるとおりですが、一瞬のことで覚えていません。言い訳ですが…


「まあ、いいか。地方から出て来たばかりだしな。街に出て、通りを行き交う人を観察をしてみなさい。東京はいろいろな人がいるから、まず容姿を観察してその人の仕事をイメージし、どんな生活をしているのかを想像して書き出してみるんだ。じゃあ、おやすみ」

 叔父さんは階段を上り、2階に消えた。

 結局、ソファで消えた女の子に心当たりがあるのかないのかも分からないまま。


 宙ぶらりんな気持ちで彼女の方に目を向けると、彼女は手帳を閉じて嬉しそうな顔をしている。

 高校生の頃は『叔父さんのアドバイスメモ』をノートに書いていたが、最近はシステム手帳に書いている。本人に聞くと『常にアップデートは必要よ』とのこと。

 システム手帳を使うと賢くなれるの?


「エムくん、良かったね。さっそく叔父さんから課題が出たよ。私もエムくんの投稿小説を読んでいて、人物描写が少し足りないかな?と思っていたところなの」

 たった今まで消えた女の子に驚いていたのに、変わり身の早さ。

 人物描写のご意見は有り難く賜ります。人のことを掘り下げるのが苦手なのは自覚しています。


「そうだ! 明日は天気が良くなるって天気予報が言っていたから、人物観察に出掛けようよ。どこにしようかな? 渋谷? 新宿? あの辺はいろいろな人が盛りだくさんだから… そうね、スタートは銀座にしましょう。銀座四丁目の交差点、WAKO前。文豪を目指すスタートに、ふさわしい場所よ」

 去年、彼女は大学生で文壇デビューを果たすとか言ってなかったっけ?

 東京に来て、またハードルを上げていますが、大丈夫?


「ここで消えた女の子は?」

 気になる僕は、濡れたままのソファを指さす。


「消えてしまったものは仕方がないわ、縁が無かったということで。それよりも引越し荷物を片付けましょう。明日は朝から人物観察だから今日中に片付けを終わらせないと」

 割り切りが良いというか、気持ちの切り替えが早いというか、だからいつも彼女に振り回されるんだ。


(つづく)

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