表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(仮)彼女と僕の奇妙な日常  作者: MOH
『 4月 突然の来訪者 』
2/14

【彼女はだれ】

 ビルの外でクルマのドアを開け閉めする音がしたあと、叔父さんが玄関扉を押し開けて足を踏み入れ、雨に濡れた服の(しずく)を手で雑に払う。

 ソファの前で立ち尽くす彼女と僕を見て、怪訝そうな顔をする。

「どうした? 昼間っから、幽霊でも見たような顔をして」

 叔父さんは一人掛けのソファに腰を下ろし、ジャケットのポケットからタバコを取り出して一服する。

 煙を吹き出しながら天井を仰ぎ、フロアをぐるりと見回して、長ソファが濡れているのに気がついたようだ。

「誰かソファでお漏らししたの? 漏らしてもいいけど、ちゃんと拭いておかないとシミになるだろう? 年代物だけど補修すれば良い値で売れるんだから。一応イタリア製だし」


 このソファがそんなに良いものとは知らなかった。

 どう見ても高級品には見えないけど。

 彼女と僕が突っ立ったままなので、叔父さんが首を(かし)げる。

「もしかして、2人でゲームをしてるのかな? お漏らしをして廊下に立たされるゲームとか?」


 初めて聞くけど、そんなゲームあるの?

 誰得(だれとく)


 彼女がようやく我に返ったのか、ハッとして叔父さんの方を振り向く。

「そのソファ、濡れているところに女の子がいたの」


「3人目の候補生? 合宿所の? これから候補生の募集をしようと思っていたけど、どこかで話を聞きつけたのかな? ここで合宿所を始めるのが、業界で話題になっているみたいだから」

 彼女の叔父さんは業界(出版?)でそんなに有名な人なの?


「違う、違う、玄関に行き倒れの女の子がいたの」


「オイオイ、それはないだろう? いくらココが不便だからと言っても23区内だぞ。何でビルの玄関に行き倒れがいるの?  ……っん? 待てよ……」

 叔父さんが何かを思い出したかの様に黙り込む。

 いつもの色付きセルフレームを掛けているので、どこを見ているのか分からない。

 今日は怪しいツバつき帽子を被っているので、うつむくと表情も窺い知れない。


 彼女と僕は、叔父さんからの次の言葉を待ちながらフロアに立ったまま。

 そんな状況がしばらく続く。

「叔父さん、寝てない?」 そう言って彼女は、カッカッと叔父さんの前まで歩み寄り、組んでいる右足を足で振り払った。

 相変わらず、こういう時の彼女の行動は容赦ない。


 いきなり払われた足はゴツンッと床に落ち、叔父さんは驚いて目を覚まし周りを見てキョロキョロする。

 やっぱり寝てたんだ。


「えっとー、何だっけ? クルマで長く走って疲れたから、上でひと寝してくる」

 叔父さんはおもむろに立ち上がり、階段の手摺りに手を掛ける。


「叔父さん! 待ってよ! 女の子が居なくなったの」


「えっとー、誰だっけ?」 叔父さんはひと寝する前に、寝ぼけているようだ。


「彼女と引越し荷物の片付けを始めたら、玄関の前に倒れている女の子がいて、中に運び込んだのだけどソファから消えてしまいました」


 片足を階段に載せたまま、叔父さんは首を捻る。

「どんな子? 年、いくつくらい?」


 そう言われても、コートを着た小柄な子ぐらいしか覚えていませんが。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ