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第一章 本の世界 第1話 グリム

第1章 本の世界 第1話 グリム

ファンタジーとは――皆が憧れ、夢を抱き、束の間の()()を感じることのできる不思議な幻想的な世界。

 だが、その入り口は、すぐ傍にあるのかもしれない、或いは、既に訪れているのかもしれない。





 要所要所に植えられた深緑の木々や、一面に生い茂った芝生を、人が歩けるように通路のところだけ、人工的な施しがされていて、それ以外は、見渡す限りの花畑だ。

 中央の開けた広場には、木製のモダンチックなベンチが囲む、楕円の巨大な噴水が、まるで、鯨の潮吹きの様に、冷ややかな泉水を撒いている、まさに、大富豪の園庭、或いは、王宮の庭の様なこの場所の名はフィオーレ=ガーデンと呼ばれている。

 フィオーレとは、イタリア語で花を指し、その名の通り、園庭に咲き誇る花の種類は、馴染みのあるものから、滅多に見られることができないものなど、四季折々、数多の花々が枯れる事なく、一面を彩っているのだ。


 「なぁ、知ってるか?この先にはな、すんげぇ秘密が眠ってるんだぜ! 」


 その園庭を、広場の巨大な噴水まで歩いてきていたのは、三人のまだ、幼い子ども達だった。

 

 その内の一人の金髪の少年が、噴水の広い縁によじ登り、瞳を輝かせて、後をついて来ていた二人の前で、大見得を切って、園庭の奥にひっそりと佇んでいる白い塔を指さした。


 「ほら! オレは、あの塔が絶対、あやしいと思うぜ! 」

 

 明るい性格の金髪の少年の名はライト、見た目も派手だが、着こなしている紺の服には、大きな髑髏の刺繍入り、黒のパンツに、銀のベルトチェーンのアクセサリーを身に着け、汚れきったスニーカーを履いている。


 まさに、いまどきの不良少年(ヤンキーくん)みたいだ。


 「秘密ー?」


ライトが大見得をきって、自信満々な笑顔をしている最中、噴水の下からぽつり。と、疑う様な声のトーンで、少女が呟いた。


 「あー! ソフィー、その顔は信じてないな?」


 すかさず、金髪の少年ライトも、さっきまでの得意げな鼻をへし折られたと感じ、不機嫌そうにその声の方を見下ろした。


 「あんな塔にねー?」

 

 見れば、薄く染まった青色の髪を耳元でかきあげ、白いワンピースを着こなすソフィーという名の少女が、腕組みと、怪訝そうな顔つきで、ライトを見つめていた。


 互いに、不興顔で見合わせたままの二人――。


 「まぁまぁ。落ち着いてよ」


 顔を見合わせながら、いまにも、そっぽを向きそうな二人の不仲を割くように、穏やかで落ち着いた雰囲気の白髪の少年、ワトソンが制止しようとした。


 「だって!! 」


 息を合わせたかのように、ライトとソフィーが同時に、苦笑しているワトソンの方を振り向き、ハモる様に言葉を合わせたのだ。


 その途端、いままで、困った様な笑顔で、二人の様子を窺っていたワトソンは、ふっ。と口から笑みをこぼし、あはは。と高らかに笑った。


 その途端――


 「なんだよ!?」

 「どーしたの?」


 またしても、タイミングよく、息ぴったりの二人から、ワトソンが、笑みをこぼした理由(ワケ)にツッコミが飛んできた。


 「いや、ごめん」

 「2人があんまりにも息ピッタリで、まるで兄妹みたいだなって思ったからさ! 」


 一旦、素顔に戻り、二人の顔を見ながら、そう告げたあと、再び、笑顔になる温厚な少年ワトソン――。


 彼の言葉を聞いたあと、ライトとソフィーは、少し顔を見合わせて、目の前の笑顔につられて、吹き出すように、高らかに笑うのだった。

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