11年後
11年後、ティオラ姫18歳、ワシ37歳。
「ワシはこんなところで」
迫り来るワニ型のモンスターサイボーグ、バニと戦っていた。
数年に一度、不定期でバニは大量発生する。
バニはナノマシンの暴走によりできたモンスターの一つだ。
一匹一匹、攻撃力が高いからワシらのような軍隊がでにゃいかん。
大昔ある研究所の大爆発以来、世界は大いに狂ったそうだ。
ナノマシンという目には見えない小さな機械が思考に連動してこの世界を侵食して狂わせたそうだ。
という知識は今は必要じゃない。
「こんなところで死んでたまるか!」
ワシを引きちぎらんと腹に噛み付くバニの頭を力の限り引き裂く。
赤や青いろんな色の配線と液体が垂れる。
しかもまだ、たくさんいる。
こっちは疲れてるんだ。
天使をおいてしぬわけにはいけない。
民間人の護送を部下に任せて、ワシは一人バニの囮になって戦っている。
なんせ、ワシは強いからな。
しかし、バニが前より強い。
前に戦った時よりアップグレードが進んでいる。
もう天使と部下たちと民間人は十分離れただろう。
そろそろ、バーサーカーモードを起動しようとした時だった。
「ガロナス将軍、どうぞ、補給物質です。助けに来ました。」
キーンと風切り音が響き、鋼鉄の翼を持つ天使が目の前に舞い降りた。
天使は、ワシに近づくと、まとわりつくバニの頭潰し、引き剥がしていく。
「死にたがり姫、なんで戻ってきたんだ」
「わたしが相手をしておくので、その間に補給お願いします」
天使は瞬間エネルギー剤と刃こぼれしていないレーザーブレードを渡してくれた。
「ガロナス将軍、わたしが戦っている間に補給してください」
バニをあっという間に素早く倒していく。
その間にワシはエネルギー補給ができた。
しかし、身を削るような戦いかただ。
紙一重で避けて、開いたモンスターの口に手を突っ込み、確実に脳を刺していた。
天使は短い青い髪とサファイアのような青い瞳をして、シリコンで作られ白い肌をモンスターの血で紫色に染めていた。
背中には一体化したジェット機のような翼を持って、青いレーザーブレードで、モンスターを倒していた。
これならいける。
そう思った。
「なにこれ!?」
天使の悲鳴が上がった。
小型のバニが集まり巨大なバニを作り上げた。
「ガロナス将軍、父様に王様にティオラは立派に散ったと伝えてください。あなたは逃げてください」
そう言って、巨大バニの気を引くために大きな傷をわざと左腕に作る。
冷却液と補修液が混じった紫色の血が、垂れる。
ワシから遠く離れた。
地面スレスレを天使が飛ぶ。
バニが天使を追いかける。
天使は自分の胸の装甲を開ける。
真っ赤な心臓コアと密着する真っ青なバクダンが見えた。
バクダンは心臓の鼓動の停止と連動して爆発する。
ティオラは心臓を握りつぶそうとしていた。
まさか、自爆するのか。
「馬鹿!やめろ。まれによくある群体バニだ!」
自動修復なんてまつ暇もない。
急いで天使の方へ走った。
「戻ってこい!一人で戦って死のうとするな!」
ワシの大声で、バニがこっちに気を向ける。
「ガロナス将軍危ない!」
バニが大きな口を開けてワシを飲み込もうと突進してきた。
「これでも食らえ、図体だけがでかいバニが」
壊れたレーザーブレードを、バニの口に高速でふり投げる。
レーザーブレードが爆音を立てて爆発する。
バニの動きが止まる。
その隙を見逃さない。
新しいレーザーブレードで、バニの体を滅多刺しにする。
体が何度か修復しようとしたが一匹だけ色が違う赤い色のバニを刺すと、動きが止まった。
「死にたがり姫、こんなやつにお前が命を捧げる必要はないんだ。」