ティオラ姫、天使との出会い。
本編
ティオラ姫との出会い。
ワシが24歳で、ティオラ姫が5歳の時。
「お兄さん大丈夫ですか?動けますか?整備室まで運びましょうか」
日が沈みかけ紫色に染まる空を仰いでいたら、天使が顔を覗き込んできた。
青い髪と目、白い肌の天使。
「ありがとう。けどワシは戦闘モデルで重い。無理しなくていい。整備員呼んできてくれ。」
ワシは関節が逆パカ状態になってしまった膝をさすった。
膝の調子が悪いから、近道して城の整備室に行こうとしていた。
足場の悪い石造の階段で、前日には雨も降っていたせいで滑った。
連日の戦闘や訓練で疲れが溜まっていた。
いろいろしていたら診察時間の終わりが迫り慌てていた。
様々な言い訳ができる。
しかし、人通りの少ない夜に階段から転げ落ちて足が動かなくなった。
人通りも少なく
登るのも降りるのも大変な階段の中腹で止まった。
どうしようかと困っていたら、階段から天使が降りてきた。
「大丈夫ですよ。お兄さんくらいなら、いけます。」
そう言ってずるずるとワシを引きずって、階段を登り切ってくれた。
さらには、診察時間が終わった整備室に入り、整備道具を持ち出してきた。
「少しうるさいし痛いかと思うので、痛覚聴覚オフにしておいてください」
そう言って、拙いながらもしっかりとワシの足を直してくれた。
この天使は、整備員だった。
わしは運がいい。
「お主名前は?ワシはガロナスという。」
「ガロナスさん、わたしの名前はまだないんです。
2年後の誕生日に父様である王様からやっと名前がもらえるんです」
そう嬉しそうに笑って答えた。
その顔にときめいたことと『父親である王様』と聞いてワシは驚いた。
わしの国は不思議だ。
王一人だけで子供ができていく。
誰も王妃や子供の母親を知らない。
王の子供は成長が早く、早くて5歳。遅くて7歳からで大人と変わらない学力や能力、体を持っている。
王の子は、名前がもらえることは成人したのと同じになる。
文官や技術部とかインドアな人が多く。
天使のような整備部員はいなくて、気になった。
助けられてから、仕事の合間や終わりに何度も顔を見に行っていた。
どんな名前がもらえるのか楽しみだと語り、父親のことを慕う天使の表情が好きだった。
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本編はあと4話続きます。