答えはう〇こに隠されている
土日は外食。
今日の晩御飯は炊き込みご飯と味噌汁と鯖の塩焼き
魚以外朝に作ってきたよ。
②
鳥のさえずり、カーテンの隙間から差し込む日差し、この段階で多くの人は胸騒ぎを覚える。
そして次に取る行動は時刻の確認だ。
現代ならスマホで時刻を確認する事が多いだろう。俺も例に漏れずスマホで時刻を確認した。
無情にもLEDライトは俺の望んでいない数字を象っている。
その数字は奇しくも昨日と同じ数字。俺は昨日の失敗を忘れたのか? あんな事忘れるわけが無い。
では何故今日もギリギリに目覚めたのか? そんな事はどうでもいい。2連チャンで休む訳には行かない。普段通りなら別に2回連続で休もうが関係ないが今日は違う。
今日休むと間違いなく昨日の事を引き摺っていると勘違いされる。何かの間違えで天瀬さんが上手いこと説明してくれている事にかけるのもありだが、彼女の性格的に望み薄だ。
ここは何も考えずに最効率の行動を取ろう。
まずは昨日使う予定だった会議の資料。もう必要ないかもしれないが一応持っていこう。
後はお腹の調子も確認してと、ヨシッ!! 今の所は問題無し! 出発!!
朝の通勤電車と言う物は、まるで決められているかの様に顔ぶれが一緒だ。そんな所に昨日今日でノコノコ現れていいのか?
答えは良い!!
俺は気絶していた設定だ。漏らした事も気づいていない設定で行けば何も問題無いのだ。
では何故こんな事をダラダラ説明しているかと言うと、今非常に漏れそうなのだ。
昨日の俺なら大事な会議を優先して電車に飛び乗っただろう。だが今日は違う。
2連続遅刻より、2連続うんこまんを絶対に避けるべきなのだ。
と言う事で俺は遅刻覚悟でトイレの列に駆け込んだ。
混み具合から待ち時間はおよそ10分。昨日の絶望的な目標と違い、今日の目標は手が届く。これなら行ける。負けるな外肛門括約筋! 頑張れ外肛門括約筋!
俺の順番が回ってきたタイミングで、駅ホームのアナウンスが流れた。
『只今、〇〇駅を走る電車がお客様と接触したと連絡を受け、〇〇線の電車は運転を見合わせております。急ぎのお客様は振替輸送をご利用ください。繰り返します……』
10分前の俺を褒めてやりたい。
俺は駅のアナウンスをBGMにし、便器の中に全てを解放した。
又しても成人向けゲーム。もういいや、エロゲーの主人公みたく俺の眼球に謎の白色フラッシュが現れた。『逝く物違いだがこちらの方が100倍気持ちいい』
暫く余韻に浸っていると会社からメールが届いた。
『人身事故があったが会社に間に合うか?』
流石に間に合わない。でもまぁー昨日と違って多少の遅れで会社には着くかな。
その旨を送信してっと。そしたらすぐに返信があり『今日の会議までには必ず来い』とあった。
あれ? 昨日の会議今日に変更したのかな? それならそうと早めに伝えて欲しいものだ。
取り敢えず今日は気分がいい。優雅に会社に向かうとするか。
会社には数十分程度の遅れで出社する事が出来た。どんな顔してデスクに着こうかと思ったが、隣の席の天瀬さんはまだ来ていなかった。
上司も俺の事を変に意識する訳もなく、いつも通り作業している。
と、思っていたら上司が声をかけてきた。
きた! うんこか?
「あ――皆月、今日の会議だけど先方が急なトラブルで来れなくなった。来週の何処かになると思うからまた決まったら連絡する」
「またっすか?」
「また?」
「ん?」
「ん?」
ダメだこりゃ。上司とすれ違い通信している。全然意味が違うが……
「昨日が先方と会議する予定だったじゃないですか。自分休んでしまいましたが……」
「何寝ぼけた事言ってんだ? 昨日お前遅くまで資料作ってただろ。んな事より時間出来たんだ、資料しっかり積めとけよ」
どう言う事だ!? どうなっている!? ダメだ、仕事が手につかない。
そうか! そうだ! 答えはうんこに隠されている。
俺が答えに辿り着いたと同時に、オフィスの扉から3時間30分程遅れて天瀬さんが出社してきた。何故か相当落ち込んでいる様に見える。そんなに遅刻したのが嫌だったのかな?
それより天瀬さんの出社タイミングが神がかってる。
答えのキーを持ってる俺と、答えの鍵穴を持ってる天瀬さん。
2人の鍵が揃った時、この迷宮は開かれる。
俺は勢いよく立ち上がり、天瀬さんに叫んだ。
「天瀬さん!! うんこ」
……やっちまった。何を先走っているんだ! 一事は映画のクライマックスかと思っていた時もあった。
そのクライマックスは俺だけなのであって天瀬さんはまだ序章。いや、それ以前に登場すらしていないかもしれない。
だったらどうするか? そんなの決まっている。この俺のいる土俵に引き上げれば良いだけだ!
俺が同じ土俵に立たせるため、次の言葉を発声しようとしたが、天瀬さんが先手を打ってきた。
「皆月さん。独特な挨拶ですね! 丁度甥っ子も今年5歳なんですが、皆月さんと同じ事を言ってますよ。私に報告しなくてもいいのでどうぞ勝手に行ってください」
違う、違うんだ! 聞いてくれ、聞いてくれ天瀬さん!
甥っ子さんがうんこうんこ言ってるかもしれないが、俺が言ってるうんこは甥っ子さんと種類が違うんだ!
決して固形やシャバの種類の話では無い。それよりもっと高度な話なのだ!
何度も言う。硬度では無く高度な話だ。
今日はダメだ。この不利な状況で戦う訳にはいかない。
ここは今日1日準備して明日の戦に備えるとしよう。
その日を大人しく過ごした俺は、明日の迷宮脱出作戦に備えて眠りにつくのだった。
読んで頂きありがとうございます。
のんびり酒でも飲みながら行きます。