電車での悲劇
自由気ままに更新予定です。
毎日更新ではありません。
それでも良い方はお付き合いください。
①
『只今、前を走る電車がお客様と接触したと連絡を受け、この電車は緊急停止しました。状況を確認しますので今暫くお待ちください』
このアナウンスが車内に流れる前から俺、皆月由太は額から汗を流していた。
別に暑いから流れた汗でも、ましてや先の人身事故とも直接的な関係は全くない。
電車が止まった事が大問題なのだ。
会社に遅れるからとか今日の会議で使う資料を忘れたからとかそんな些細なことでは無い。そちらの方が何倍もマシだ。
俺は今非常にピンチなのだ! 何故かって? それは漏れそうだからだ! 小ではない! 大がだ!!
朝の通勤ラッシュ、結構な人の数だ。俺の尻付近には誰の物かも分からない布達がゆらゆらと俺を誘ってやがる。
人身事故だ。電車が止まる時間はおおよそ50分から90分の間。俺の腸に問いかけてもそれだけの時間は無理だと合図を送ってくる。
では、別の方法を考えるしかない。今日は運良く、こんな状況だから運がいい訳では無いが……うんだけに……ボクサーパンツだ。太腿回りをがっちり締め付けている。
この状況ならワンチャン、いや、ツーチャン固形物なら何とかなるだろう。
内肛門括約筋は既に機能していない。外肛門括約筋を使い大の種類の確認を試みる。
うぉん〜うぉん〜うぉん……
この表現が正しいかとか今はどうでもいい。
1番重要なのは確認した結果だ! 最先端の物は間違いなく固形だ!!
これで第1関門突破だ。問題は第2関門。
物の中腹辺りが水属性か地属性かだ。
先端が固形(地属性)でも中腹辺りから急に水属性に変化するパターンもある。こればかりはその時になってみないと分からない。
しかし試したら最後、1度崩壊した関所を閉ざすのは不可能。全部隊がなだれ込んでくるだろう。
一か八か試すか!?
いや、まだその時では無い。外肛門括約筋は自分の意識でどうとでもなる。
そんなこんな考えながら不意に時計を見た俺を、更なるドン底に叩き落とされた。
なん……だと……
先程からまだ5分しか経っていない。体感では間違いなく20分は経っていた。脳も間違いなく20分分の処理を行っている。
確か聞いた事がある。
交通事故が起きる瞬間など、自分自身が危険状態に陥った時に起きる現象。タキサイキア現象。
危険状態を回避するために脳があらゆる行動パターンを瞬時に処理する。
普段使わない速度での脳の処理と時間に差異が生まれ、その差異分がスローに感じられる。
今の俺に落とし込むと体感20分、実際5分、普段の4倍の速度で脳が処理したと考えられる。
脳が何倍の処理をしたとかこの際置いておいて、重要なのはこのタキサイキア現象は危険状態でしか発生しないと言う事だ。
今の俺は相当危険状態にあると言える。
残り最低でも45分以上。そこから電車が発車してトイレまで5分。並んでいる事も考えると1時間以上……
絶望しかない。
人が頑張れるのはその目標に頑張れば届くからであって、どう頑張っても届かない場合は諦める。
今回の1時間以上と言う目標は俺には届かない。
外肛門括約筋を緩めた瞬間、地属性と水属性が融合し一気に関所から溢れ出てきた。
それと同時によく成人向けゲームの演出で出てくる謎の白色フラッシュが俺の眼球にも出現した。
あの演出はこう言う事だったのか……『あ――やり直したい』今後の対応は未来の俺に任せるとして、この余韻を噛み締めながらうつ伏せで寝転がった。
車内の悲鳴やら、その後に漂う悪臭で車内が地獄と化した事は今の俺にはどうだっていい。
この解放感を存分に味わうのだ。
読んで頂きありがとうございます。
もう一度言います。自由気ままに更新しますのでそれでも良い方は
ブックマーク、評価、いいねで応援して頂けるとうれちいです。