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素敵な店員さん

 外回りのある仕事に就いていたときの話だ。


 昼の12時から14時はどこのお店もすごい混みようで、待ち時間を考えただけで入る気がなくなるので、俺は大体14時半頃に昼食を摂ることにしていた。


 その日は小雨が降ったり止んだりという微妙な天気だったせいもあってか、14時を過ぎても空きはじめたお店が見当たらず、仕方がないのでハンバーガーをテイクアウトすることにした。

 少々並びはしたが流石はファストフード。すぐに順番が来て、俺は店員さんの手が上がったレジに向かった。


「ご注文はお決まりですか?」

「はい、ダブルチーズバーガーのセットをひとつ」


 お決まりの定型文句に、メニューを指しながら答える。


「ダブルチーズバーガーのセットでございますね。サイドメニューはポテトでよろしゅうございますか?」


 ここで、俺はハッと店員さんの顔を見た。

 なぜかと言うと。

 こういうファストフード店は、ほぼほぼアルバイトやパートさんで回っていると思われるが、高級な格式高いお店ではないのでおそらくさほど接客の教育も厳しくはないだろうと思う。

 俺のこれまでの経験上でも、横柄なわけではないがきっちり礼儀正しいマナーの接客だな、と思ったことも特にない。会計と品物に不備さえなければ、最低限の敬語と表情で十分といった、つまり、悪くはないというどちらかと言えば消極的な意味で“普通”な店員さんが多い中で、その店員さんは『よろしゅうございますか』と言ったわけである。

 随分と丁寧な話し方だな、と思って俺は店員さんの顔を見たのだ。


 制服の帽子とマスクで隠れていたので、目元しかわからなかったが50歳くらいの女性だった。

 目尻が下がっていて、笑顔なこともわかった。


「あ、はい。あ、サイズはLにしてください」

「承知いたしました。お飲み物はいかがなさいますか?」


 上品な言葉遣いで、笑顔が自然。

 また、声のトーンや話し方も絶妙だった。


 騒がしい店内とはいえ、大声はよくないし、小さいのは論外。その店員さんは程よく通るレベルの声量で、滑舌も良かった。

 さらに、語尾まで丁寧だったのだ。

 こうして文字にすると想像しにくいけど、一文の頭からお尻まで気の配られた話し方だった。


「えーと、烏龍茶で」

「烏龍茶でございますね。他にご注文はございますか?」

「以上です」

「ご注文を確認いたします。ダブルチーズバーガーのセットがおひとつ、サイドメニューはポテト、サイズはLサイズ、お飲み物が烏龍茶。以上、お間違いないでしょうか?」

「はい」

「承りました」


 彼女はただ接客の仕事をしただけで、他のレジにも同じ仕事をしている店員さんがいる。

 でも、店員さん自身の口調や佇まいひとつで、客側が感じる印象は全く異なるのだ、ということを実感した瞬間だった。



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