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「猫」  作者: 七星瓢虫
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8

少年からの「告白」は()の一度限り


()の後も

()の前と変わらず自分と少年は付かず離れずの関係


嫌いな理由 (など)、ない

突き放す理由 (など)、ない


(ただ)、自分は少年とは相容(あいい)れないだけ

多分(たぶん)、自分は母親とも相容(あいい)れないだけ


自分には(ひど)()まらない

自分には此処(ここ)(ひど)()まらない場所


()しかしたら


自分が(ひど)()まらない

自分が此処(ここ)では(ひど)()まらない人間なのかも知れない


高校卒業を待たずに家出同然、「片田舎」を飛び出した


と、言えば恰好(かっこう)?が良いが

実際問題、不動産屋と()の部屋の賃貸契約を結んだのは母親だ

初期費用の敷金礼金を支払ったのも母親だ


当然、母親は諸手(もろて)()げて

我が子の「我儘(わがまま)」に賛成した訳ではない


此処(ここ)ぞとばかり


自分は母親の「我儘(わがまま)」に付き合って「片田舎」で暮らした

今度は母親が自分の「我儘(わがまま)」を聞く番だ

と、(なか)ば強引に押し切った結果だ


許さなくても良い

許されなくても良いと思ってる


()れでも笑って(うなず)いてくれた母親には感謝しかない


散散(さんざん)、世話を掛けた

母親への「恩」は借りた当面の生活費も(ふく)めて

()れから返済していくつもりだ


()うして朝焼けに色 ()

(おん)襤褸(ぼろ)駅舎から「都会」に行く電車に乗った


流石(さすが)に気が付かなかった(はず)


一人(シングル)寸法(サイズ)寝台(ベッド)

自分の背中に、背中を付けて横になる少年は気が付かなかった(はず)


()の証拠に


玄関 引戸(ひきど)を(音を立てないように)引き開けた時も

校舎裏の竹林が唐突(とうとつ)に揺れたのを

「猫」かと思ったのも(つか)の間、本当に野良猫の「三毛(みけ)」だった時も


知らず知らず立ち止まり

知らず知らず振り返る其処(そこ)にも少年の姿はなかった


結局、少年は宿泊先の宿(ホテル)へは戻らず(終電)

一人用の寝具しかない部屋で仕方なく寝床を共にした


結局、「同棲」だか「同居」だかの話し合いは

決着は着かなかった(着く前に自分は睡魔に襲われた)


途端(とたん)、携帯電話の「起床時間(アラーム)」が鳴る代わりに振動し始めた


()(さま)、枕の下から引っ張り出す

携帯電話の「二度寝対応(スヌーズ)」を押す(なり)

胸に(かか)えたまま瞼を閉じる


「何してる?」


携帯電話の「起床時間(アラーム)」は

如何(どう)やら少年を起こしてしまったらしい


「「何してる?」って、二度寝」


五分後の「二度寝対応(スヌーズ)」が発動する(まで)

微睡(まどろ)む時間は(ただ)(ただ)、至福


貴方(あんた)も気にせず寝ていて欲しい

と、寝返りすら打てない一人(シングル)寸法(サイズ)寝台(ベッド)の上で

もぞもぞ動く自分を余所(よそ)に少年が再度、(たず)ねた


「仕事、何してる?」


ああ、()れは貴方(あんた)のお察しの通り

高校中退の中卒が働ける職場 (など)()()うない


高校中退の中卒の「女」が一人

「都会」で暮らして行ける程に稼げる職業 (など)()()うない


徐徐(そろそろ)、種明かしの時間


「片田舎」に身を置く場所が見付からない以上

「都会」に身を置ける場所を見付けなければならない


父親の一件(不倫)で

専業主婦の母親が「片田舎」の実家、祖父母に頼らざるを得なかったのは

(ひとえ)に日銭を稼ぐ(すべ)を持っていなかったからだ


「簿記の資格、取得()ってた」


簿記二級、三級は高校生の内に取得できる資格だ


学業の合間、通信講座と問題集を駆使(くし)して

インプットとアウトプットを繰り返し繰り返し学ぶ日日


「お(かげ)で何とか事務職に()けた」


信じようが

信じまいが()れは少年の自由だ


(そもそも)、日銭の(ため)

「自分」を売ろうが少年には何等(なんら)、関係ない話しだ


()して到頭(とうとう)、五分後の「二度寝対応(スヌーズ)」が発動する


至福の時間を邪魔されて多少、腹が立つ

(ちぢ)める身体を伸ばして起き上がる瞬間、腹癒(はらい)せで私語(ささや)


()れに此処(ここ)、事故物件だから家賃が安いんだ」


自分の衝撃発言(カミングアウト)に勢い良く振り返った少年の所為(せい)

一人(シングル)寸法(サイズ)寝台(ベッド)が大きく(きし)んだ

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