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ただの冒険者の末路

作者: 音湯羽良人

死なずにそこそこ稼げていればそれでいい。

ある冒険者はそう呟く。


強い冒険者っていうのはほんの一部のみ。

生まれついての才能か、生まれついての家柄か。

彼はそのどちらにも属することはない。

ただの一人の冒険者。

体の内に膨大な魔力を秘めているわけではない。

貴族の家に生まれて教育を受け、王国の兵士になっているわけでもない。

本当にただの冒険者。

唯一他の冒険者と異なる所を示せと言われたなら、彼はパーティを組んでいない所だ。

冒険は常に危険で、いつ死ぬかわからない。

協力者がいた方が生存確率は確実に上がる。

ただし、彼にはそのような仲間と呼ぶ者は存在しない。

彼が強いわけではない。

彼が人を騙す悪人だからではない。

コミュニティを築くのを苦手とするわけでもない。


ただ、彼には向上心がなかった。

毎日同じ依頼書がギルドに貼られる。

下水道に出てくる下級の魔物の討伐。

街の生活汚水が流れて他の冒険者はこの依頼を受けたがらない。

しかし依頼主は魔物を討伐してもらわないと困る。

なので危険度が低い割に報酬がほんの少しだけ良くなっている。

彼は毎日この依頼を受ける。

そして達成する。

生きていくのに最低限度より僅かに多い金額。

毎日これを貰う。

それだけの日々。


ある日、彼は下水で溺れた。

下級の魔物にやられたわけではない。

上級の魔物が現れたわけでもない。


世界が彼を飲み込んだ。


その日の依頼は達成されなかった。


誰も気にしなかった。


冒険者はいつ死ぬかわからない。


冒険はいつ終わるかわからない。


だが、彼はお金を貯めていたらしい。


酒癖も女癖も悪いやつではなかった。


そのお金の使い道は、やはり誰も知らない。

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