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仮面舞踏会 ~隠密優等生《オタク》な俺と生徒会長《おさななじみ》の君と~  作者: 「S」
生徒会日誌Ⅱ ―波乱の球技大会(1学期編)―
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レポート87:『一方、その頃……3年文(男)』

「以上で説明を終えます。何か気になる点はありますか?」


 グラウンドの四隅の一つ。

 といっても、本番では使われないであろうホームベースの置かれていない一角で、彼は眼鏡をクイッと上げる。


 黒髪くせっ毛が風に靡き、視線は鋭く、表情はとても真剣味を帯びている。

 普段は柔和な表情で優男として名高い彼だが、生徒会長としての務めを果たしている際の彼はカリスマへと変貌する。


 けれども、今の彼の立ち位置は『元生徒会長』というもので、漂わせている雰囲気はその時の名残と言っていい。


 だからこそ今の彼は、途端に表情を崩し、頬を綻ばせる。


「そんじゃ、各自、予定通りに」


 もう彼は、生徒会長ではない。

 故に肩肘張る必要はなく、いつもの自分を取り戻す。


 そうやって『榊燎平さかきりょうへい』は、ただの生徒に豹変する。



「「「「「―――」」」」」



 そんな彼に周りは笑顔で頷き合う。

 文化系という割にそこそこ運動のできる連中が半数ほど、残りは紛れ込んだ体育会系と運動が苦手な連中が半々と言ったところか。


 ただ彼らに気負いはなく、不安や緊張などと言った心配もない。


 なぜなら彼らは知っているから。


 目の前に立つ男の実績。

 彼が今まで何を成してきたのか。

 その道筋を知っているから、彼に絶大な信頼を置いている。


 それがため、誰しもが和やかな空気でこの場を終えていた。 


「お前ら、本番休むなよ~? 俺は全員使って勝つからな」


 彼には既に勝ち進むための道筋が立っている。

 そこには皆の助力が必要不可欠で、それはチーム全員が周知していること。



「――わかってるつーの!」



「――会長のためだしな!」



「――いやいや、そこは皆のためでしょ!」



「――ああ、皆の力で勝利を! ってやつね!」



「そそ! そゆこと~」



「――いや~、足引っ張らねぇようにせんとな……」



「大丈夫だって! そのぶん俺らでフォローすんだから!」


「ねっ会長?」


「ああ、そうだな」


 だが、彼らは知らない。

 その言葉が、ただの方便であると。

 皆と信頼関係を築き、皆を活気づけるために並べ立てた言葉であると。



 ――さて、予定通りだ。



 不敵に笑う彼の存在など知りもせず。

 眼鏡を光らせる彼に気づく者など、誰一人としていなかった。


 そして、彼もまた、自分を見つめる二人の存在に気づきもしないでいた。



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