表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

王妃様のお茶会という名の勉強会

 フィーネにとっての暴力事件は何もなかったかのように表面上は穏やかに日々過ぎて行っている。


 その間にコモンとミリア様の婚約話がゆっくりのようであり、でも確実に手続き上も実質的にも進み、フィーネも嬉しい気持ちが沸き上がるが、そればかりではないのが辛い所だ。


 時間がたつにつれてなぜ空手という格闘技が頭の中にはっきりと存在するのか、もしくは似た格闘技があるのか周辺の国々を調べたりしたがどこにも空手というもの、もしくは武器を手にしない対戦型の格闘技はなかった。離れた南のほうの国などにはあるのかもしれないが、そこまで詳しく探すのは止めた。


 記憶にある自分の家や隣の道場についても時間がたつにつれて次第にぼんやりとしたものに変化していったが、空手に関してだけははっきりと覚えていた。


 分かるのはフィーネという人生の前にもう一人の人生があるという感じだ。ただその子の名前すら覚えていない。ただ、自分が2回続けて人生を続けているという感じなのだ。空手以外は霧の中のようにぼんやりしている人生とフィーネという人生。


 第2王子のミリア様への婚約破棄も人生のぼんやりとした中から、どうしても許せないという気持ちが出てきたのだろうと今は思っている。 


 もう一人がフィーネの中にいると最初は感じていたが、今ではフィーネが全く違う価値観、社会の中で違う人生2回目を過ごしているというように感じる。


 フィーネはしばらくの間、そのことについて調べたりしていたがすぐに諦めた。調べても出てこない。空手などどこにもないし、痕跡すらない。考えても分からないものは分からないのだ。


「しょうがないわ。考えても分からないし」


 それよりフィーネを悩ませることがもう一つできた。


 今まで恋人は作ろうが頑として婚約者を作ることを拒んでいたバイウエル王太子殿下が両親である王と王妃に婚約者について話をしたと噂が流れたのだ。口づての噂だけではなく、新聞までもが報道を始めている。


 その頃からグルーデン家へ王妃様からお茶会の招待が何度も来るようになった。

 伯爵夫人である母ではなく伯爵令嬢であるフィーネにだ。


 断ることはできないと言われ何度か王宮へ行ったが、それはお茶会ではなく勉強会だった。その時は王妃様も教師になられる。王妃様は王室のしきたりや隣国の王族について、どういった対応を取ればいいのかなど詳細に教えていただいている。


 他の先生はダンスに歴史、そして立ち居振る舞いや言葉遣い、一日びっしり休憩する間もないほどのスケジュールを組まれている。

 その内容の濃さと言ったら、フィーネがグルーデン家へ帰ると倒れるようにベットに横になってしまうくらいだ。


 王妃様のお茶会、恐るべし。

「王妃様、このようなことを言ってはいけないのでしょうが、これはお茶会というより勉強会のようですわ。しかも、わたくしには関係ないものばかりです」

 さりげなく訴えたが。なぜか王妃様はすぐに必要になるから早く覚えなさいと言われ、現在は学園に通うこともできない。


 毎日がお茶会だ。

「わたくしは学生ですので学園へ行きたいのですが」

 小さくさりげなく申し上げたが、王妃様からは小さく笑われた。


「あと2か月後の王宮主催のパーティーまでに最低限の知識などを習得したら、そのあとからは午前中だけ学園へ行ってもよろしくてよ。昼食ぐらいは友人と一緒に過ごすのもよろしいわね,交友関係を広げるのも大切ですわ。学生ですものね。その後は毎日わたくしの宮でお茶会ですわよ」

 おほほと扇で口元を隠して王妃様はご機嫌に笑われた。


 このお茶会の正体が何を意味するのか恐れ多くて聞くことができない。

 何なのか、うっすらわかるような気もするがそれとなく王妃様の侍女たちにさりげなくいくものの誰もが口を濁す。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ