王太子殿下がしてくれたこと
食事は3人でいただいた。
ミリア様がいらっしゃるということでスコーンとサンドイッチとサラダを紅茶で簡単に頂いた。
コモン兄は食事としては物足りないらしく、後から大量の骨付き肉をシェフに持ってくるようこっそり申し付けていた。
食べ終わり、とりとめもない話も終わったころコモン兄がボソリと呟いた。
「フィーネ、王太子殿下からは言うなと言われたが重臣会議でフィーネの話が出たのだ」
「何の話ですか」
「第2王子殿下への暴力だが、やはり護衛がフィーネは無意識や倒れるついでなどではなく、意識して暴力をふるったのではないかという言葉があったらしい」
「嘘でしょう。コモン様。あれはわたくしを守るためにフィーネ様がしかたなく……」
「分かっています、ミリア嬢」
震えるミリアの手を両手で包み込むコモン。
向かい合い目を合わせる二人……。
おいおい、それどころじゃないよ、とフィーネは慌てた。
「ちょっと、ちょっと、待ってください。今のお二人をお離しするのは申し訳ないのですが、話を続けてよろしいでしょうか? お兄様はその場にいたのでしょう?」
「第2騎士団長だからな。一応末席に警備として控えていた。もちろん発言権はない」
名残惜しそうにミリア様の手を離すコモンが小さくため息を吐いた。
「じゃあ、どうなったんです? お兄様」
「父上がフィーネは一度も武道など習ったことはないと言い張っていたんだが、いかんせん我がグルーデン家は全員騎士だろう。しかも父も私も騎士団長だ。なかなか一部の方々が納得されなかったのだ。習っていなくとも騎士の鍛錬を見ているだけで自然と上達する家系なのだろう、と」
コモンははあ、と大きくため息を吐いた。
「でその後はどうなったの、おにいさま」
「殿下が、もちろん王太子殿下のことだ。フィーネは殴ってはいないと断言された。その場で調べて分かっているからと。フィーネ自身も淑女の中の淑女と言われ、長い時間を歩いたことがないほどか弱く繊細な令嬢だと言われたのだ」
繊細というのはどうかなと思ったが、と小さくコモンは呟いた。
「それで、それで」
「それで……フィーネ、令嬢らしくしろ!」
コモンはフィーネを見てため息を吐いた。
「はあい。」
「で、第2王子のボタンに当たり血が流れているフィーネの手を見て殴ったなどということになったのだろうという流れになった」
後から王太子殿下に感謝の言葉を言うようにコモンは言う。
「殿下がおられなければ、あの場の雰囲気の流れではフィーネは平民に、しかも国外追放になったはずだ。我がグルーデン家も何らかの咎を与えられたはずだった。私のミリア嬢との婚約も難しい話となっただろう」
何事もなく我々が過ごせるのは全て王太子殿下のおかげだとコモンは重く呟いた。
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