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愛娘ミリア

その場にいる全員が王太子殿下の登場に驚愕の表情を浮かべる中、公爵が王太子に質問をはさむ。

「なぜ王太子殿下がグルーデン伯爵家へこられたのでしょう」


「ああ、それは弟が王命である婚約を勝手に破棄したということで王がかなり怒っておられ、今まで幽閉されていたのだが、護衛騎士のすきをついて抜け出したらしい。行先はミリア嬢の所しかなかろうと思いやってきたのだが。大当たりだな」


公爵に会釈をするとすたすたと部屋に入り、護衛騎士を使い蹲ったままの弟王子を連れて行くように命ずる。


「兄上、私の話をお聞きください」


「バイウエルさま~。聞いてください。あの女、ひどいんです。わたくしたちをおとしいれようとするんですのよ~。ひどいんですの~」

エイミーがあの女と指さした先は、ミリア様ではなくやはりフィーネだった。


「その通りです。兄上、こいつらの話は嘘です。私たちを陥れるために…」


「私の名を許可なく呼ぶな、男爵令嬢」

バイウエル王太子はちらりと弟を見ると、興味を失くしたように公爵と伯爵を見た。


「申し訳ない。弟は幽閉の塔からの抜け道を知っていたようで、いつの間にか抜け出していたのだ。何か問題を起こしていたらと心配したが、まだ行動に移す前で良かった」


よくない! とフィーネを言いかけた口を閉じた。

殴りかかられたんですけど。

まあ、殴り返したけれどね。


「しかし、ここへ来てよかった。面白いものを見られたよ。フィーネ嬢は弟にも男爵令嬢にもちゃんと意見をし、危機は自らはねのけた。こういった令嬢は初めてだ」


普段冷たく取り澄ました表情を変えることのない王太子殿下はくくくと笑いながらフィーネに視線を向けた。

「わたくし何もしておりませんわ」


すまして答えたフィーネをその場の全員が何とも言えない表情で顔を向ける。父だけは苦渋の決断でも行っているかのように口をすぼめた。


「私が見たのはフィーネ嬢が弟の腕を払いのけたところからだが」

ということは殴ったところも見てたってこと? 全部じゃない。


「……おほほ…。ちょっとよろけてしまったのが払いのけた様に見えただけなのでは。それで腕が殿下に当たったようですわ」


まずった。

これで話は通じただろうか。

通じるわけないよね。


「うん。今はそれでいいだろう。今回の問題は二人が伯爵家に何の断りもなく来た上で言いがかりをつけようとしていたことだ。本来なら弟はミリア嬢に再婚約などできるはずもないのに、訳も分からぬ理由で再婚約を吹っ掛けるつもりだったらしい」


公爵が眉間にしわを寄せ怒りを見せる。


「どういうことでしょうか。一度冤罪で婚約破棄されたものを、お金が下りないからとか訳の分からぬ理由でミリアに再婚約を申し込むつもりだったとは。このままなし崩しに婚約結婚などとなれば、王子妃としての政務どころか王子の政務までさせられることになるでしょう。名前だけの王子妃として。ミリアは私のたった一人の子どもです。妻が命を懸けて産んだ子供なのですよ。私としては、いや親として許せる話ではないです。これから王宮へ行き事の次第を話し、殿下と男爵令嬢へ厳重な罰を与えるよう王へ訴えます」


プレスト公爵は眉間と頬に青筋をくっきり立てた。

「それではグルーデン伯爵。話は後日改めてすることにしましょう。今から王宮へ参ります」


「……王からも公爵へは話があるらしい、まあ謝罪だろうが」

 王太子は頷きながら公爵を見送った。


お読みいただきありがとうございます。

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