1章4話
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夏休みまで残すところ1週間となった。
なんと言っても待ちに待った高校最初の長期休暇!私も気持ちの高揚を抑えきれない。
もしかしたら一番楽しいのは休みの前のこの期間かな?っと教卓の前で友人達と話していると、古い扉が重い音をたてながら開き、冴島君がゆっくりと教室に入ってきた。
久しぶりに見た彼は眉間に皺をよせ仏頂面で教室で黙り込む私達を見渡すとつまらなそうに彼の席についた。
「そういえば今日から復学ね冴島君」と委員長の吉井香織ちゃんがボソッと私に耳打ちしてきた。
私もそうだねっとだけ返し、横目で彼を眺めた。
「2週間って結構人の記憶を忘れさせるものね」
「もともと影薄いからね彼」と春日さんと佐藤さんが小声で話している。
確かにその通りだった。別にこれといって特筆すべきことが無くても人の脳記憶処理なんてインプット―アウトプット―デリートを繰り返すだけの数千ヘルツのパソコンにすらは遠く及ばない処理能力なのだ、忘れてしまってもしょうがない。と自分に言い訳をしていると、ふとデパートの前で彼を見掛けた時の事を思い出した。
あの時の彼は遠めから見た、あのときの彼はどのような顔を、表情を、雰囲気をしていたっけ?
続いて林先生が「HRはじめるぞー」と大きな声で入ってきて私達は自分たちの席につくと、林先生は最後尾の席に座っている冴島君を見て、ふんっと一息の鼻息を吐き「冴島!2週間で少しは反省したか?」と醜い顔をさらに変形させて言った。
春日さんと佐藤さんがクスクス笑っているの見える。
私に言わせると彼女達の性格も林先生くらいに悪いというのが、入学してから今までの印象だ。表立ったイジメはしないものの影口悪口はしょっちゅう彼女達から聞こえてくる。
一度、教室で3人になってしまった時には、なんで京子みたいな可愛く無い子とあなたが一緒にいるの?と私に聞いてきたこともあった。
極力私は彼女達と関わらないようにしているが、影では私も何を言われてるかわかったものではない。
おそらく今日も彼女達は冴島君をネタに話を膨らますに違いないと思っていると、冴島君が突然立ち上がった。
「先生には世話になりましたね。おかげさまで冤罪で2週間も学校サボれてラッキーでした。どうもありがとうございます」
と眺めの前髪から覗かせるその口元の両端を三日月を横に倒したような形に釣り上げながら余裕気に言い放った。
顔の造形が言い分、どこか能面のような不気味な表情だった。
これにはクラスも静まり返り、私もポカンと口を空けてしまっていた。
先生も少し動揺したのか何も言い返せずにいたが、すぐに我にかえったのか「HRの後に職員室に来い」とだけ言うと連絡事項を伝えて教室を出て行った。
結局その日、冴島君が教室に戻ることは無かった。
クラスでは放課後まで彼の話題は暗黙の了解ごとく誰も口に出すことは無かった。
やはりみんなも彼に不気味な印象を受けていたのだろう。
しかしそれも放課後になると堰を切るように話題になった、女子バスケ部では彼の勇姿を褒め称えたり、彼はもう退学じゃないかなど、虚妄を膨らませていた。
そして部活の帰り道に私は1人いつものように駐輪場に自転車を取りに行くと、なぜか噂の冴島君が見知らぬ女子生徒と2人で駐輪場にいるところに出くわしてしまった。
女子生徒のリボンは私の青色のそれとは違い赤色、つまり3年生なのだろうがその女生徒が冴島君に頭を下げて何かをお願いしているような感じだった。
(どんな状況ー?)
っと内心では乱心していたが、私は気にしてない振りをして彼等の隣を通り過ぎる。
「何度でもお願いします冴島君!美術部に入ってください!」と先輩の女生徒が彼に懇願する声
が聞こえる。
(美術部?)
私にはイマイチ馴染みの無い部活だった。存在していたことすら私は知らない程だった。
この先輩は彼を勧誘しているようだ。
「先輩、頭をあげてください。俺が悪者みたいです。ほらソコの女もチラチラこっち見てますし」
と彼は私を指さしながら言った。
(バレてた・・・)
無性に恥ずかしい気持ちになった。
にしても女って何よ!同じクラスなんだから名前くらい覚えていてくれたって!と沸々と彼に対する怒りがこみ上げて来たが面倒事関わらぬが身の為と、そそくさと自転車に跨り、その場を逃げるように去っていく。
(結局あれはどんな状況だったのだろうか?)
(あの先輩はどうして彼を美術部に入れたがったんだろう?)
(もしや彼は天才画家だったり!・・・とか?) と彼への疑問で頭を膨らましながらペダルを漕いでいった。
どなたか下痢の治療法しりませんか?お腹いたいっす><