29話 「嘘つき」
街の中に橋がある。
一分程度歩けば渡りきれる短く、車が一台しか通れないくらいの細さの橋だ。
街の中を流れる川があるが、あまり人通りが少ないためこの細さとなっている。
糸川にっけと、漁火せつながABCDEモールに行くためそこを通っている時の事だ。
唐突な事が起きた。
せつなが「あ、喉乾いた、道戻ろ」言って本当に道を戻ろうとして。
「え?」
にっけが嫌そうな声を出した。
「今からもどったら自販機二十分くらい前のトコにしかないじゃん」
「いや、すぐだったと思う」
イマイチ辿って来た道筋を覚えていないせつながそう言ってみても、かなり複雑ですぐ迷いそうになる道だと覚えているにっけは本気で鬱陶しそうな顔をする。
「ダメ、先に進む」
「でもさぁ、喉乾いた、コーラ奢るからさ」
「コーラ限定ならなおさら嫌だ」
「じゃあサイダーかビタミン炭酸でもいい」
「なんで炭酸系ばっかり」
「余ったら貰う予定だから、好きなモノ買ってもらおうと思って」
「私は全部飲み切るから、あ」
にっけが、ふと声を漏らしたのは、戻るために通る道に男がいたからだ。
ただ、唐突に、どう見ても普通な男が普通に歩いて来る。
だが。
このような寂しい場所に来る人間は珍しく感じるから、だけではない理由で、二人して声を止める。
それからすぐ
「先の方に、あるかもしんないから先行こう」
にっけは提案して、逃げるように、というより逃げるために強引に前に歩き出した。
「ま、そうしよっか」
せつなもその提案を飲む。
どちらも生命の危機に対して敏感だ。
だから、今自分達が危機的状態にあると瞬時に理解した。
言い争いなんかしてる場合じゃない。
なんだかよくわからないが、あの男は危険だ。
見た目はおかしくない。だけど危険。
歩き方もおかしくない。だけど危険。
右手と左手に何も持っていないように見える。だけど危険。
関わるべきではない。目を合わせるべきではない。
慎重に、刺激せぬよう、逃げねば。
今すぐ、迅速に、この場を立ち去る事だけする。
少し間違えれば、殺される。
「逃げるなよ」
男が不気味に告げる。
にっけとせつなの間を、ヒュっと風が切る音がして。
それが、ナイフを投げられたのだと二人が理解するのにそう時間はかからなかった。
「「ッ!」」
二人が振り向くと、男はもう目と鼻の先にいた。
「何の用?」
最初に声をかけたのはせつなだった。出来る限りフレンドリーな声色。
しかし手は持ってきた木刀にかけられいつでも抜刀して攻撃出来る。
「うん、二人ともいい顔をしてる、色々と強そうだ」
「私の借金を取りに来たなら、試合のお金でできるだけ返します」
今度はにっけが男の正体を探りつつ、答えた。
「違う、俺は”漁火せつな”に用があって来た」
「……あの?あなたは?」
「あのさ、どうして空は青いと思う?」
「え、えっと……」
急に聞かれてにっけが困惑する。
「鏡だからだ」
「え?」
「俺の心を写しているんだ、澄んでいるだろ?」
せつなは、うんうんと頷いた。
それから。
「なに言ってんの?」
ボクサーとしてオリンピックに出れそうな男のボディーブローがせつなに見舞われる。
「あッガっ」
せつなはカエルが潰れた時を思わせる音を体から出して膝をつく。
男がどこからか出したのか、彼の右手に持っているナイフがせつなに迫る。
「ッう」
せつなは素早く後転し、避けた。
そう攻撃してくると読んでいたのに、ギリギリの回避である。
そのままとめどなく、にっけをナイフが襲う。
「あぶッなッ‼‼」
すばやく敵の横をすり抜けるよう前に飛び込み、ちょっとしたものを取って前転そのままの勢いでに立ち上がる。
立ち上がってにっけはちょっとしたもの……小石を投げた。
男は当然のように、見もせず受け止める。
後頭部を狙った剛速球だったというに。
「自己紹介が遅れたが、俺の名前は…………いや、やめた、俺を感心させたらご褒美に教えてやる」
ぐわっと、男はにっけに急接近した。
ナイフの猛攻が、にっけに迫る。
「なんなんだッ!?」
にっけの叫びへ返答は無かった。
右から左と見せかけて縦、突きの直後に後ろ回し蹴り、などと異様にテクニカルである。
にっけの、常人の何倍もある反射神経でもかわし切れず時おり掠ってダメージを負う。
「むぅ……」
今、男の攻撃対象から外れているせつなは、この機に考えた。
どう男を倒すか。
機械のように、どんどんどんどん脳みその回転が速くなっていく。
(まず、私が戦うのは嫌だ、いくら木刀のリーチがあってもこの敵はリーチなんて簡単に覆すし、ナイフは一撃で致命傷になる可能性がある
となれば今そこそこ調子よく戦えてる、糸川にっけを援護するのが私にとってベスト
じゃあ彼女達はどんな風に戦っていて、どんな隙がある?
まず、糸川にっけは身のこなしを見るにポテンシャルは高いけど、流石にナイフ相手じゃビビってる、まぁちゃんとした反撃の筋が見えてない、男の方も糸川にっけの反撃が来ないよう勢いのまま圧を持って攻撃してる、でもその勢いのせいで少し隙がある、少しだけど)
命の危機に瀕していることもあって、せつなはここまでを僅か一秒で考える事が出来た。
「ねぇ躰道って知ってる!?」
せつなは叫ぶ。にっけに叫ぶ。
「へッ!?」
にっけは変な声を出すモノの、回避に必死で答えようとしない。
ナイフを捌き、死なないのに精一杯。
しかし、表情をせつなは見て理解した。
一応、知っているようだ。
せつなはじっと。男とにっけを観察する。
二人の所作から、じっくりと戦いの流れを掴んでいく。
そしてナイフが、男の腰当たりからにっけの顔面に振り上げられようとしている真っ最中。
せつなは「今!海老蹴り!」叫んだ。
躰道と呼ばれる武術の技だ。威力が高い。
しかし、にっけは指示に従わずバックステップで避けた。
「あんだけ動ける人間の海老蹴りなら今ので倒せてた!」
せつなは文句を言う、にっけの海老蹴りならば間違いなく大ダメージを与えられただろう。
だが、そんな指示を出して滞りなくにっけが受けてくれるほどの信頼関係は今のところ無かったのだ。
「練習したことない大技はッ!」
にっけは鋭く、低い姿勢で、敵の懐に飛び込む。
「リスクが高いじゃんか!」
そのままローキックで相手の機動力を奪いつつ意識を下方向に向ける。その瞬間飛び上がって空中で捻りを加えた回転蹴り。
風火との戦いでも使ったコンビネーション。
ちなみにこの技を気に入った牡丹が
地天廻脚と名付けた。
これは元より高いにっけの瞬発性を活かして、意識を足下に向かせ、その瞬間アクロバットな蹴りで惑わしつつ相手の頭に攻撃するのだ。
決まれば高威力。運が良ければ一撃で相手を倒せる。
それが思いっきりぶち当たった。
”ように見えた”。
「あぶねぇ、あぶね、ローキックは逃げ足を潰す意図もあるんだな」
男はしりもちをつくようにしてギリギリで避けた。
その手に、ナイフは無い。
にっけは空に浮かんだままその事に気づく。
着地した瞬間呻いた。
刺さっている。非常に深く刺さっている。
左足にナイフが深く。
「反射神経、体捌き、筋力、何一つとしてお前に不足は無い、ただし相手が俺だからダメだ、俺は誰よりも強い」
「ッ!やッ!べあ」
にっけは逃げ出そうとしたが、足にダメージを負った状態では速度が足りず男に顔面を殴り飛ばされた。
運悪く欄干にぶち当たる。こちらは“ように見えた”のではなく、本当にぶち当たってしまった。
にっけは打ちどころがまずく、目が焦点の合わない虚ろなモノに変わる。
意識がぼんやりとしているのは明らか。
「なぁ、それで終わりじゃないだろ?それ以上何がある?何が出来る?教えてくれ」
男は、ぼーっとしたにっけに詰め寄る。
「死力を尽くしてから死んでくれ、友達と協力しても構わないぞ!??驚きたいんだキュウソネコカミ!逆転劇は美しいんだ!なぁ‼俺に人の可能性を、奇跡を見せてくれ!」
男の狂気に、にっけが表情をこわばらせる。
意識が混濁としているがゆえの、素直な反応。
それは怯え。そう表現するのがもっとも最適だろう。
「怖がってるのか?意外とまともだな!で、今からどうするんだ!?」
「……うーん」
男とにっけを見ながらせつなは何となく、ゲームを思い出した。
RPGで、レベルが上がっていない序盤から当然のようにLV100の敵がうろついていて、エンカウントしてしまってパーティが全滅した時の事。
今は、ソレだ。
まともに準備もしてないのに、いきなり強敵にぶつかってしまった時。
このままでは、糸川にっけ・漁火せつなのパーティは全滅する。
そんなときはどうするか。
決まっている。
「せいッ!」
木刀を、ぶん投げた。
男とにっけが一瞬だけそれに意識を取られる。
その隙に、逃げ出した。
「あ!おま……」
男はせつなを追おうとしたが、にっけの事も気になって一瞬動けなかった。
せつなは、すぐににっけ達から見えなくなり、そのまま戻ってこなかった。
「……見捨てられたんだなお前、自分でどうにかしないといけないからきっと火事場のバカ力が出るぞ~楽しみだな!」
男が、にっけに微笑む。
「あ」
にっけは呟く。
意識がようやくまともに戻って来て状況を思い出し、右手で男の顔に向けパンチした。
男は両手で受け止めた。
「終わりか?」
何も答えず、にっけは左手を地面につけソレを軸足のように右脚で男の手を蹴りつける。
「おッ!器用!」
男の称賛もまた、にっけにとってどうでもよいことだ。
それより大事なのは
今蹴って動きを制限したおかげで、自分の手を掴む男の人差し指の爪を掴んでべりべり無理矢理引っぺがすことも可能だということで。
今現在、実行した。
「おッ!」
苦悶感嘆どちらともとれる声を漏らす男の指を、にっけは思いっきりぶん殴る。
その指から血が、噴き出した。
「このッ!いーかげん離せ……‼‼はなせ死ね!」
しかし、にっけの右手は掴まれたまま。
再び叫び、男の顔を狙って左手でパンチしようとした。
が。
男は額をその拳に衝突させた。
「ッーーー」
拳と額では、額の方が硬い。
だからにっけの拳は、壊れこそしなかったものの数十秒使えないくらいの激痛に見舞われた。そのせいで隙が出来て、それにつけこまないほど愚かな男では無い。
「おらッ!」
にっけは鼻頭に頭突きされた、目の前の視界が一瞬赤くなり、次の瞬間左手も掴まれて押し倒された。
「ッ!」
にっけは抵抗しようとするが、あくまで彼女の力は”少女と思えないほど強い”だけ。
敵の男の見た目から受ける印象以上に強い力をはねのけることは出来ない。
最近は夜に、牡丹と柔道の練習――牡丹を汚させないよう、寝技をかけてもらってどう逃げるか試すくらいのものだが――をしているが、今の彼女の能力は状況を打破するに足りない。
「お――い、コレで終わりか?」
「……」
押し倒されたまま、にっけは男を不安や怒り混じりの表情で睨み付けた。
主に怒りが出ている。
「おッ、いいねいいね」
男が顔をにっけの顔に近づけた瞬間、にっけは頭突きしようとした。
だが、男は頭を逸らし避けた。
はずだった。
後頭部への強い衝撃に男の視界は一瞬だけ赤くなった。
その隙をつけないほどにっけは愚かでは無い。
「わぁああああああっ!」
にっけが咆哮し、中国拳法の鉄山靠よろしく弾丸のように体ごとぶつかった。
よろけた男は体勢を立て直そうとし、たが、それは叶わぬ願いとなった。
いつの間にやらせつなが戻って来ていて、誰にも気づかれずこの場にいた。
そんなせつなは男の意識外から腹に蹴りを入れ、欄干に吹き飛ばす。
そういった隙を逃さぬ反射神経を持つにっけが、片足とは思えぬほど恐ろしく鋭いタックルをぶちかまし
男の体は宙へ……橋の外側、へと放り出された。
だが。男はこらえた。
「逃げたフリして、機を窺ってたんだな、漁火せつな」
男は落ちていくギリギリで橋の淵を掴んでいた。
しかし爪を抉られた手で力を込めるのは当然辛く、男の手はプルプルと震えている。
「あんた誰?地球再生党?漁火重工?」
せつながたずねると男はしばし空を見て考えた。
こんな状況でも、逆転の手を探っているのだとせつなは気づき、投げ捨てていた木刀を拾い上げる。
「あ―――、そういえば地球再生党からお前殺す仕事受けてたわ、忘れてたけど」
「仕事?仕事ってことは……殺し屋?なんでただの子供に殺し屋を仕向けてる?!」
にっけが驚きと好奇心のあまり、聞いた。
男は答えようとして、口を開けたが、何も喋らない。
「なに?落そうか?」
せつなが男の手に向け木刀を振り上げる。
「この高さから落ちたら怪我して溺れ死ぬするかもしれないからやめろ、お前ホントに落とすつもりだな」
せつなは答えない。無言で男の手を見つめている。
「ま、一回お友達を見捨てて逃げたヤツだもんな」
男は大声で笑う、下衆らしき下衆といった感じ。
にっけがせつなを見た。
口には出さなかったが「男の言う事は本当か?」と問うているのは明らか。
せつなもまた、にっけを見た。
「友達じゃないけど」
「……ソレは、そうだけど、なんで」
にっけは問うた。
“なぜ?”と。
しかし“なぜ見捨てた”では無く、“どうして戻って来た?”と問うた。
せつなが自分を命がけで義務や義理や友情が無いと考えているから、見捨てるのはわかる。
だがしかし、だとしたら、戻って来たのが解せない。
それからせつなは、男が何か行動しないか注意しつつ答えた。
せつなは、にっけが押し倒された時、真っ先に逃げる事を考えたこと。
応武器の木刀があるが、それはあくまで最後の手段だこの男は強そうだし、真正面から戦うのは危険。
二人ともに生き残れればそれがベストだが、難しそうだった。
どうしようもない理由で死んだらしょうがないけど、積極的に死にたいわけでも無い。
だから逃げた。
だが道がわからなかったこと。
どっちに行けばABCDEシティにつけるのか、にっけ無しにはわからない。
そして、戻って来た。
道徳的にはともかく、結果としては正解の選択肢だった。
一度は本気で逃げて戻って来たからこそ、せつなが不意打ち出来た。
そのような事を、時折―めんどくさいし話すのやめよっかな?―と時折思いつつも、にっけ(mapみるひと)の機嫌を取っておくのは重要だと理解しているせつなは話して、にっけは納得した。
そして。
「面白いよな、キュウソネコカミ、こういう意外さが楽しいから今の俺の仕事はやめられない」
男がせつなの話が終わるのを待ってから言い出す。
「ッ!」
にっけが声を漏らす。
そのたぐいまれなる鋭い感覚でおぞましさに、直で触れたゆえ、男の声を聴くだけでもストレスだ。
彼が苦手だった。
然し、せつなの反応は違う。
余裕をもってベラベラと喋ってる彼をじっと見つめる。
その瞳で見られたものは、威圧される、圧倒される。
ほとんどの人間が、その瞳に無関心でいる事は出来ない。
拒絶するにせよ、執着するにせよ、なにかしら強い感情を抱かせる。
人を狂わせる。
せつなは、それ程に美しかった。
「……おっと、俺に悲しい過去があるとか期待すんなよ?昔っからすき焼きが食いたいみたいに当たり前に、殺し合いたくてたまらなくてな、そんで危険な国の軍人になったりしたけど訓練キツイし殺される可能性あるしでやめて、殺し屋になったんだ!お前も一緒にやらない?」
男もまた、強い感情のままに、話した。
「あんまりそこ興味ない、“地球再生党の中のどこの誰が依頼したのか”“漁火与獲はこの件に絡んでいるのか”その二つが私にとっては重要だから」
区切りをつけて一つ一つを強調する。
「依頼したのは地球再生党って名乗る女……熊みたいに危なそうな奴だ、漁火与獲ってのはそもそも俺は誰か知らない、ところでお前も一緒に殺し屋やったら楽しいだろうなぁ」
「人殺しなんか、べつに楽しくもなんともない」
「お前と俺は、似たようなもんなのに?」
「……?」
「見りゃわかる、お前の目は人を不幸にするのが得意な目だ、歩んできた道に、死体を転がしていく人間の目だ」
せつなは木刀を振りかぶった。
「あのさ、止めてくんない?俺改心するからさ、改心するよ”同族”のよしみだ、ほら、俺の手を取って引き上げてくれ」
誰にでも男の言葉は、薄っぺらくて、どう見てもこの場を切り抜けるための適当な出まかせでしかないとわかるだろう。それほど適当な言い方だった。
「嘘つき」
木刀は男の手に振り下ろされる。
その手は少し開かれ、ずり、と男のからだが少し落ちた。
いつの間にか包まれていたらしく小さなカッターナイフの刃先が零れ出す。
手をとっていれば、せつなの手はズタズタだったろう。
「俺の名前は」
「なんかごめん」
男の話の途中、木刀でせつなが追加攻撃する。
指が二本折れた彼の体は今度こそ放り出され。
男は「あ、しまった」といいつつも、何も反応すべきことが起こっていないかのように普通の表情で落ちて行った。
しばらくして、ばちゃん、と水しぶきがあがった。
「死ん……だ?」
にっけが、おそるおそる口にする。
自分で言いながら、全くその言葉が真実だと思っていない。
「生きてるでしょアレ」
「確かに体丸めて、頭守りに行こうとはしてたけど……手とか潰しちゃったし泳げないんじゃ?」
「じゃあすぐこの場所を離れよう、二人がかりで殺しちゃってたら目撃者もいないから正当防衛成立するか怪しい」
せつなは、さも当たり前のように、言った。
彼女の罪悪感や恐怖は、まるで地獄を見て乾いた人間のように薄い。
せつながソレを自覚する度、冷たい風に吹かれているように思う。
ぽっかりと、自分の胸に穴が空いているようで。
だけどそれすらも、彼女の中ですぐに薄れていく。
「……あ、助けてくれたのはありがとう」
せつなはにっけの礼を無視して「先にすすもっか」と進行方向を指さす。
男がどうなったか、生きているのか死んでるのか、見なかった。
どっちでも、良かった。
――――――――――――――――――――――
二人の少女を陰から見つめるものがいた。
その陰の数は二人。
「アイツら、死ななかったな」
片方の影が言う。
「アンタ、殺し屋なんて派遣したのに失敗して、どうするつもり?お金とか高かったんじゃね?」
もう片方の影が呆れたよう言った。
「組織を動かすためには理由がいるだろ?」
「……まさか、失敗するって思ってるのに派遣したワケ?」
「そう、オレは漁火せつなに力があるという証明を殺し屋を撃退する事で示した」
「地球再生党に漁火せつなを迅速に殺さなければ危険と思わせるために?」
「あぁ、地球再生党は甘く見てるが放っておけばヤツは一人で全てをひっくり返す危険な力をつけかねないからな、」
「でも、糸川にっけまで巻き込んで良いワケ?アイツを殺す予定無いんっしょ」
「ま、それは予定外だが……どうにかなるだろ」
「アタシはそんな楽観的になれない」
「でも盛り上がって来てるだろ?なぁトウカ」




