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(^ω^)【ようです】のようです

(^ω^)【旅する僧侶と月見酒】のようです

作者: 日曜日夕

釈迦の寂滅より千五百余年。



時は末法の世。



クシナラより遥か東の島国。



ここに旅する一人の男がいた。



法名は転法。



仏門に帰依し十余年。



機智に富み、武芸に恵まれるも、性格は粗雑とされ、出世には恵まれなかった。



同じ寺の僧達からは「万年無位」、「物臭坊主」と呼ばれ馬鹿にされていた。



その為、彼が突如として寺を出奔した時も、誰もそれを不思議がるものは居なかった



同輩は「遂に野に下ったか」と鼻で笑うのみ。



かくして「寺に釈迦居らず」と記された置文は、そのまま塵紙として捨てられた。





出奔してから二つの月が過ぎた頃、転法は都よりはるか東、とある湖のほとりを進んでいた。



( ・∀・)「ここが世に言う大太郎坊人(ダイダラボッチ)の海か。穏やかで良い湖だの。まるで鏡だ」



大太郎坊人(ダイダラボッチ)とは、山創り・湖沼創りを得意とする神と云われている。



身の丈は天にも届き、掌は山を掴み、足は地を窪めるというこの神が残したただの『足跡』。



そこに雨が溜まって出来たというのが、この『大太郎坊人(ダイダラボッチ)の海』である。



( ・∀・)「それにしても、コレぜんぶで足の裏か。こりゃ、お釈迦様とどっちが大きいんだろうな」



転法が青く輝く湖の景勝を楽しみながら、湖畔の宿場町まで歩いていくと、とある宿の前に人だかりができていた。



人々が「はぁ」とか「へぇ」とか感嘆の声を上げているのが気になった転法は、同じく物見にやってきた男の肩を叩いた。



( ・∀・)「なぁ、すまんが、こりゃあ一体。何の騒ぎだの?祭りか?」



(男^ω^)「違う違う。なんだって、この宿に『ダイダラボッチの御子』が泊まっているって話だ」



( ・∀・)「へぇ!そりゃあすごい!小さい宿に収まるのか!?」



(男^ω^)「ガキだからこんな小さくても入れるんだ」



そう笑う男の頭を、後ろからやってきた女が掌でパシッと叩いた。



(*゜ー゜)「『小さい』は余計だよ。これでもこの町一番の宿さ」



彼女は、手ぬぐいを頭に巻いた、いかにも気の強そうな女だった。



聞く限り、『大太郎坊人の御子』の泊まる宿の女中であろうか。



(男^ω^)「痛え!言ったのは俺じゃあ無い。この男だよ」



頭を擦る男が恨めしそうに転法を見つめ、女も彼に視線を移した。



( ・∀・)「すまんすまん。言葉の綾だ」



(*゜ー゜)「そういやお前さん。見ない顔だね。旅人かい?」



( ・∀・)「あぁ、まあ。そうだの。修行の為、全国を行脚しておる」



転法がそう言うと、二人とも目を丸くする。



目の前にいる小汚い男が、まさか仏僧とは露ほどにも思わなかったからである。



(男^ω^)「でもアンタ、法衣も袈裟も着けて無いじゃないか。ホントに坊さんか?」



( ・∀・)「あんなもの、動きづらいったらありゃしない。こりゃあ修行用の作業衣だの」



寺から出る時そのまま来てきてしまった、と転法が大口を開いて笑った。



すると、女がいきなり転法の腕を掴んできた。



(*゜ー゜)「あ、あの……」



( ・∀・)「どうした?」



転法は、女の手に先程男をぶった時のような活気が無いことを不審に思い、尋ねた。



(*゜ー゜)「お坊様に、一つお頼みしたいことが……」





頼みと言うのは『ダイダラボッチの御子』についてのことであった。



なんでも、彼は二人の男と共に、数日前から彼女の働く宿に泊まっているのだが、



彼らはとにかく粗暴で、他の客人と何度も諍いを起こしているという。



( ・∀・)「しかし、そういうのは役人の仕事ではないかな?」



(*゜ー゜)「彼らは当てになりません!皆、ダイダラボッチにビビっちまってんのさ!」



(男^ω^)「ってーとどんなだい?」



(*゜ー゜)「見りゃあ分かるよ!鬼みたいに身体が大きくて、般若みたいな顔をしてる大男!



(*゜ー゜)「あんな化け物に役人なんか敵いっこないさ!」



転法は女の話を聞きポリポリと頬を掻いた。



( ・∀・)「それで?何故拙僧に?」



(*゜ー゜)「お坊様なんだから、こう、ありがたいお話の一つや二つでもして、懲らしめてくれないかしら?」



けろっとした顔で女が言うので、転法はくるりと背を向けた。



( ・∀・)「確かに釈迦は暴れる象を鎮めたが、神を鎮めたという話は無い。故に、拙僧にも無理だ」



(*゜ー゜)「そんな!後生ですから!助けて下さいましたら、宿代は要りません!」



女の言葉を聞いて、転法はピタっと足を止めた。



( ・∀・)「引き受けましょう」



(*゜ー゜)「あ、ありがとうございますっ」



( ・∀・)「その代わり一つ、こちらからも頼みごとがありますが、いいですかな?」



(*゜ー゜)「な、なんでしょうか?」



( ・∀・)「夜飯には酒を一升つけてくれ。今宵は良い月になりそうだ」





(*゜ー゜)「こちらが部屋になります」



( ・∀・)「うむ。湖がよく見える。これは素晴らしい」



転法が女中に宿泊部屋の前まで案内された、ちょうどその時だった。



隣の部屋から件の男達と思わしき二人組が出てきたのだった。



そして、一際背が高く、顔の彫りの深い男がぶっきらぼうに吐き捨てた。



 (゜Д゜)「女、酒をもってこい」



(*゜ー゜)「少々お待ち下さい。今、他の者をお呼びしますから……」



 (゜Д゜)「ああ!?」



男は、急に激高して女中の襟を引っ張り上げた。



 (゜Д゜)「俺はお前に言ったんだ!お前に!この薄汚い男の世話をする暇があるなら、俺達の言うことを聞け!」



男の怒鳴りは凄まじく、烈火の如く、という言葉がぴったりであった。



後ろでは残りの男が意地の悪い顔でニヤニヤと笑っている。



女中はすっかりその迫力に怯え、緩んだ手ぬぐいが床にホトリと落ちた。



しかし、転法は男に臆すること無く、鼻で笑うように言った。



( ・∀・)「女相手に声を荒げるとは、見た目に反して小さい男だ」



 (゜Д゜)「何を!?てめぇ意味分かんねぇ事言いやがって!」



そう言って男は女中を放り出すと、転法に向かって拳を振り上げた。



しかし、転法は男の拳をするりと躱すと、手ぬぐいを拾い上げ、巧みに彼の腕を縛り上げてみせた。



 (゜Д゜)「くそ!てめぇ!離しやがれ!」




( ・∀・)「声と身体はデカいが、なるほどコレほど小さきゃ宿にも入る。所詮、ダイダラボッチもこの程度か」



手を払いながらそう言う転法に対し、男は腕をもがきながら、怒りと嘲笑の混じった声を荒らげた。



 (゜Д゜)「っはっは!馬鹿が!俺はダイダラボッチなんかじゃねぇよ!」



( ・∀・)「なに?」



 (゜Д゜)「お前!ダイダラボッチを出せ!」



それを合図に他の男たちが部屋に向かって叫んだ。



(太^ω^)「ダイダラボッチ!飯の時間だ!」



すると、ふすまの向こうから、ゆっくりと『ダイダラボッチ』が姿を現した。



それは筋骨隆々の浅黒い肌をした男のように見えた。



しかし、尋常でないほど高い背丈は、七尺はある天井に脳天が擦れるほどであった。



   ('A`)「ア?飯?」



ダイダラボッチは、ゆっくりと、低く濁った声で仲間に問いかけた。



(太^ω^)「そうだ!あそこに居る小汚い男を倒せ!そしたら飯をやる!」



   ('A`)「飯!俺、腹、減ッタ!」



ダイダラボッチはそう叫ぶと、床を鳴らしながら転法に突進してきた。



転法は一瞬だけ、彼の風貌にあっけにとられていたが、所詮は単純な体当たり、武芸に秀でた転法の敵ではなかった。



彼はダイダラボッチの股をするとくぐり抜けると、右脚を掴み、それを大きく転がした。



   ('A`)「ウ!!……グゥ……」



頭を強く打ったダイダラボッチは、すぐに気絶してしまった。



( ・∀・)「図体ばかりでかくてもイカンと、さっきも言ったはずだがな」



( ・∀・)「さて、あんたらには聞きたいことがあるが、ここで拙僧にのされるのと、どっちが良い?」



少しの沈黙の後、一人の男が、冷や汗を垂らしながら膝をついた。



(太^ω^)「あぁ……分かった。なんだって言う。だから……すまなかった」



 (゜Д゜)「これまでか……」







( ・∀・)「ほう……すると、あいつは『ダイダラボッチ』でもなんでも無く、ただのデカい男だと」



(太^ω^)「ああ、俺達は漁師なんだが、数日前、浜辺で倒れているコイツを見つけて……」



 (゜Д゜)「助けてやったら、妙になつかれてな。でかくて強い顔をしてるから、コイツを連れてると、人が嘘みたいにいうことを聞くんだ」



 (゜Д゜)「まるで自分たちが強くなったみてぇで、気が大きくなっちまった」



(*゜ー゜)「なるほど……そうだったのね」



( ・∀・)「聞けば聞くほど、お前らは小せえ男たちだの!あっはっは!」



( ・∀・)「ま、コレに懲りたら、もう横暴な真似は止めるんだな。そいつもただの男ってバレたようだし……」



 (゜Д゜)「……分かったよ……悪かったな……」



(太^ω^)「もうしないよ……」



(*゜ー゜)「アタシはもう構わないけどね!きっちりお坊さんがシメてくれたし!」



( ・∀・)「それで、その『ダイダラボッチ』は……えっと、何を食うておるんだ?」



   ('A`)「うめ……うめ……」



(太^ω^)「海苔だよ。コイツ、海苔が好きみたいなんだ」



( ・∀・)「へぇ……デカい図体しとるのに、薄っすいモノを食うんだの……ま、他人の好みか……」



(*゜ー゜)「それにしても、この方は一体どうして倒れてたんでしょうね?」



 (゜Д゜)「コイツの口に海苔がへばりついてたから、きっと海苔の食い過ぎかな」



   ('A`)「うめ……うめ……!」



( ・∀・)「好きすぎだろ。海苔」



   ('A`)「!!かぁ。かぁ!」



( ・∀・)「ん?『かぁ』?烏の真似か?」



(太^ω^)「さぁ。聞いたこと無いな」



その時、突如として大きな地鳴りが響いた。



( ・∀・)「な!?なんだ!?地震か!?」



 (゜Д゜)「ダイダラボッチだ!ダイダラボッチの足音だ!」



(太^ω^)「最近の波は穏やかだったのに!」



   ('A`)「かぁ!かぁだ!」



しばらくして地鳴りが止むと、転法は周りの者に尋ねた。



( ・∀・)「なに?ダイダラボッチとやらは本当に居るのか?」



(*゜ー゜)「いえ。この辺りではよく地鳴りが起きまして、それを『ダイダラボッチの足音』と呼ぶのです」



( ・∀・)「なるほど……って、おい!ここに居たノリスケは!?」



(太^ω^)「ノリスケ?……あぁ、ダイダラボッチか」



 (゜Д゜)「どこ行った?今町に出たら、大混乱になるぞ!」



すると、宿の外から今度は悲鳴が聞こえた。



( ・∀・)「外か!行くぞ!」



転法達が慌てて外に出ると、そこで目にしたのは、驚愕の光景だった。



  J('ー`)し「おおっ!我が子よ!」



   ('A`)「かぁ!」



なんと、湖から半身を出した巨人が、ダイダラボッチの子を手に乗せていたのだ。



( ・∀・)「な……なんじゃあ、こりゃあ……!」



 (゜Д゜)「でっけぇ……」



(太^ω^)「太陽が隠れちまってる……」



皆、そのあまりの大きさに言葉を失ってしまった。



  J('ー`)し「全く……どこをほっつき歩いていたんだ?」



   ('A`)「俺、海苔食って、お腹いっぱいになって、寝てた」



   ('A`)「そしたら、波に流されて、ニンゲンに助けられた……アイツラ」



(*゜ー゜)「な、何かこっちを見ながら喋っているけど」



( ・∀・)「神同士の言葉だろうが……人間には分からんな」



すると、転法の頭の中に直接語りかける様な声が突然聞こえてきたのだった。



  J('ー`)し「人間……人間よ。聞いているか?」



( ・∀・)「なに?頭に直接?神通力か?」



  J('ー`)し「この中で一番我らに近い貴様に言葉を伝えよう」



( ・∀・)「ふむ……なんだ?」



  J('ー`)し「この度は愚息を助けてくれたこと、感謝する」



( ・∀・)「助けたのは私の隣に居る二人だが、伝えておこう」



  J('ー`)し「息子は色々楽しかったと言っておるぞ」



  J('ー`)し「特にお前と取った相撲遊びが一番楽しかったと」



( ・∀・)「あれは遊びのつもりだったのか?なんじゃ思ったり太い奴だの」



   ('A`)「お前、強い。河童といい勝負」



( ・∀・)「いやいや、それは光栄なことだの」



  J('ー`)し「礼をしたいのだが……何かできないだろうか?」



( ・∀・)「うぅん。そうだな。と言っても、感謝されるような事はしておらぬし」



その時、転法の脳裏に閃きが走る。



( ・∀・)「……そうだっ!ちょいと身体を貸してくれんかの?」



  J('ー`)し「細かいのは苦手なのだが……」



( ・∀・)「問題ない。そこに居るだけで十分だ!」



  J('ー`)し「??」






(*゜ー゜)「いやぁ……ダイダラボッチにお母さんがいたとは」



 (゜Д゜)「それにしても、今日は月が綺麗だなぁ」



(太^ω^)「っとと!落ちそうだお!」



( ・∀・)「はっはっは!ダイダラボッチの頭の上での月見酒は最高だの!」



   ('A`)「うめぇ!きれぇ!」



転法が願ったのは、ダイダラボッチの上で月見がしたい、と言うものだった。


かくして宿場の町人数十名と共にダイダラボッチの頭上に上り、用意した酒やら弁当やらで宴会と洒落込んだのであった。



( ・∀・)「どうだ?神も酒は旨いと感じるか?」



  J('ー`)し「うむ。いい酒だ」



(*゜ー゜)「全く……さっきは一升って言ったのに、追加で一樽だなんて」



(*゜ー゜)「商売上がったりだよ」



( ・∀・)「そりゃ、こんなに大きけりゃ、一樽でもお猪口程度よ!」



 (゜Д゜)「それに、ダイダラボッチのおかげで今年は豊作だ!気にするな!」



(*゜ー゜)「ま、こっちも『ダイダラボッチの泊まった宿』として箔が付くし。いいか」



(男^ω^)「そうそう!黒い海に輝く月に旨い酒!これ以上、何を望むってんだい?」



(太^ω^)「あれ?兄貴いつの間に?」



( ・∀・)「そうだな。見るのもいいが、ちょいとつまめる肴が欲しいねぇ」



   ('A`)「海苔!海苔美味い!食え!」



( ・∀・)「お!いいねぇ!流石ダイダラボッチだ!」



  J('ー`)し「今年はいい海苔だぞ」



 (゜Д゜)「ダイダラボッチがそう言ってるぞ、さぞ良い海苔だろうよ」



( ・∀・)「はっはっは!愉快愉快!」



(*゜ー゜)「そう言えば、ダイダラボッチさんのお父さんは?」



(太^ω^)「確かに見ないな?母親だけで迎えにきたの顔?」



  J('ー`)し「何を言っておる。ずっとここに居るでは無いか」



(*゜ー゜)「……え?」



(太^ω^)「どこ?」



すると、海が少しだけ波立ち、山の方から低い唸りが聞こえた。



 (゜Д゜)「まさか……」



   ('A`)「おっとぉ!」



( ・∀・)「小さきものは見つけにくいが、大きいものは、それ以上に見つけ辛い」



( ・∀・)「釈迦の『(ほう)』も同じことよ。大きく我らを包んでおる」



( ・∀・)「それは意外とすぐ近くにあるのやもしれんのう……」




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