「来い! ゴブリン共め! 殺らせん! 殺らせんぞ!」
「ああ、そうだ。アドルフ。早速で悪いがこの世界について教えてくれ」
「なるほど、解ったぜ。旦那」
呼び出したキャラクターの【アドルフ】に、この世界の事を教わる事にした。
「俺も詳しい訳じゃないんだが……」
アドルフが語るには…… 見た目は中世のヨーロッパ系が多く、魔法と科学が混在して魔物も居る世界らしい。
科学は前の転移者が伝えたらしいが……
「ちなみに、魔法は勘弁してくれ…… 俺は使えないんだ」
「解った。とりあえず、人の居る場所に行こう。わかるか?」
「探して見るが…… 旦那の姿じゃあ…… ちょっと辛いな」
寝てる間に転移した俺は…… 当然、着の身着のままで…… 靴も無い。このままじゃあ……… 歩くのも辛いな……
「おっと! 旦那…… コレ着れるか?」
アドルフが指す先には…… 比較的新しい死体が有った……
「新しいな…… 冒険者か?」
「冒険者が居るのか?」
「魔物退治や魔道具と薬の素材集めなどは、冒険者の仕事が多いな」
「武器と防具と靴…… それと所持品はもらって、埋めてやろう」
「そうかい? 気にしないんだな……」
「背に腹は変えられんからな……」
「そうだな…… おっ! 用意の良い奴だな」
「どうした?」
アドルフが死体の所持品から、小瓶を取り出す…
「【浄めの塩】だ。アンデッド化を防ぐアイテムだ」
「アンデッド? ゾンビやスケルトンか?」
「そうだ。で、こいつを振り掛けるとな…… そうなら無いんだ」
死んだ冒険者から、ブーツと革の小手に革の胸当て、それにフード付きのマントを外す。
「若いな…… 死因は何だ?」
「腹の傷だな…… これは、刃物だな」
「盗賊か?」
「いや…… 傷に錆びが付いてる。ゴブリンだな」
「近いか?」
「いや…… 近ければ、こいつはこんなに綺麗じゃない。逃げて来たんだな」
「そうか。武器があるか?」
「ついてるな…… 剣とナイフがあるぜ」
「よし…… 弔ってやろう」
アドルフと二人で穴を掘り、名も知らない冒険者を【浄めの塩】を掛けて埋める。
「すまんが…… お前の所持品は俺達が使わせて貰う。悪いな」
生活魔法に洗浄魔法があったので、ブーツと防具、マントに掛けて装備する。
「剣なんか使った事ないのにな…… 不思議だな」
試しに剣を構える… 不思議と使い方が解った。スキルのせいか?
「旦那、様になってるじゃないか」
「元は、俺の力じゃないがなぁ…… 行こう」
「とりあえずは…… 川沿いに進む。索敵は任せてくれ」
アドルフの案内で、川沿いに敵を避けながら進む…
「来い! ゴブリン共め! 殺らせん! 殺らせんぞ!」
2時間程…… 歩いた時に人の叫び声を聞いた!
「アドルフ?」
「旦那…… この先で戦ってる。たぶん、人とゴブリンだ」
「数は?」
「人は…… 馬車だな。たぶん、二人で…… ゴブリンが5匹ぐらいか」
「助けるぞ……」
「良いのかい?」
「貴重な情報元だ」
「了解。その情報元が生きてる内に急ぎましょう」
アドルフと俺は、出来る限り音を立てぬ様に急ぐ! 見えて来たのは……
5~6匹のゴブリンと…… そのゴブリン共に囲まれた幌馬車が一台、それを守ろうとする親父が一人。
「大旦那さま!」
「わしにかまわずに行け! お前達は生き延びるのだ!」
親父がゴブリンに剣を構える…… ゴブリンの動きが止まる! 今だ!
俺とアドルフは…… ゴブリン共に奇襲をかけた!
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