「ジャージのおっさん、何処行ったんだ?」
「アリスは、おじさんにべったりですね」
朝焼けの空を幼子の頭を撫でながら、馬車の荷台から見ていたら… アニアが馬車に揺られて眠る幼子と俺を見て言う。
「さすがに狭いな… 馬車の購入を本気で考えないとな…」
おやっさんと小柄な獣人の男女に俺達で8人… おやっさんの幌馬車は大きめだが、これからの事を考えると馬車は必要だ。
「歩き旅は… すみません。無理ですね」
馬車の購入を考え始めた俺に… アニアが歩き旅を提案しようとして、眠る幼子を見て謝る。
「気にするな。どの道必要になる」
「旦那、おやっさん、賊だ!」
アドルフが遠くの賊に気付く!
「アニア、アリスを頼む。エル、二人を護れ!」
「は、はい!」「了解だ」
「アドルフ… 届くか?」
「任せろ」シュン…
アドルフが矢を放つと… 「ぎゃあぁ!」遠くで悲鳴があがる!
おやっさんが馬車の速度を落とす、俺は馬車から降りて近くの林に姿を隠す…
「人間だけの相手は初めてだな… 今は、生き残る!」
初めて人を殺す可能性に… 一瞬、一緒に転移した連中が頭に浮かんだ。
あの子らは… 大丈夫だろうか…
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「ジャージのおっさん、何処行ったんだ?」
騎士の戦闘訓練に疲れ果てた男子が呟いた…
「だよな… 俺達がこっちに来てから、毎日戦闘訓練してるのによ! あの無職のおっさん居なくなってるし」
「無職の役立たずだから、城の掃除でもやらされてんじゃねの?」
「マジかよ… 毎日、騎士にボコらるより良くねぇ?」
「言えてる」
男子達があのおじさんの事で、騒いでるけど… 私は知ってる。
あのおじさんが… この城の騎士に殺された事を…
そして、次に殺されるのは… 私だ。
私は【勇者召喚】された人達の中でも、歳上の方だけど… 背は一番低くコミュニケーションが苦手だ。
そんな中で… 明かな大人の人が居たので、ちょっと安心したのを覚えてる。
しかし… その日の内に、その人は… 姿を消した。
気付いたのは騎士の会話を聞いたから…
私の職業の【魔物使い】は… 魔物を仲間にする事から嫌われてるらしく、城の人達は… 私を怖れる。
そして、二度目の討伐訓練の後… 聞いてしまった… あの人を騎士が殺した事を…
次は、私だろうな… 城の人達が怖れる魔物を仲間にする力… 騎士がほっとくだろうか?
たぶん… 殺される…
私を見る騎士達の目は、まるで敵を見る様な目だ。
だから、私は城を逃げ出す事にした。
幸いにも、資金はみんなの手前、同じ数貰っている。
次の討伐訓練が勝負… 地球の大型犬より、大きな狼を仲間にして隠している。
後は… 討伐訓練を待つのみ! 私は生きる!
「今日は、ここで討伐!? まさか! シルバーウルフか! 勇者達を護れ!」
「おい! 君、待ち!?」
「【魔物使い】が逃げたぞ! 逃がすな!」
私は、大きな狼に乗って逃げ出した!
「上手くいったね… 後は、この国を出よう!」
国境を目指して、私は狼に跨がる…
その先で、あの人に再会する事を知らずに…
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