4話 ナビゲーター
−ダンジョンマスターになる−
そう念じた瞬間本が輝きだし中に浮く。
−ギフト<ダンジョンマスター>が選択されました。インストールプログラムを展開します。−
頭の中で声が聞こえると、足元に魔法陣らしきものが展開され輝きだす。
「うをっ、眩しっ」
堪らず目を閉じ、後ずさろうとするが体が動かない。
恐怖と焦りでパニックに陥る中、頭の中で声が響き続ける。
−基本情報展開
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フィールドスキャン開始…終了
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身体情報スキャン開始…終了
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記憶領域スキャン開始…終了
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ダンジョンマスターとして身体を最適化します。
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<ERROR>
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上位コマンドが挿入されました。
身体情報が「ヒト種」に固定されました。
コマンド「時間遡及」により身体年齢が変更されました。
スキル<魔素変換><魔力回復力向上(極)><天魔(極)>が付与されました。
コマンド「DP変換」とリンクします。
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身体情報がダンジョンとリンクします。
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コマンド「DPカタログ」と記憶情報をリンクします。
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インストール終了しました−
頭の中で響く声と瞼の裏からでも分かる強烈な光が消えると恐る恐る目を開いた。
「変わってない?いや、視界が低くなったような」
不思議に思いつつ何か変わってないか周囲を見渡す。
そして変化に気づく。自分の体が小さくなっていたのだ。
「なんじゃこりゃー」
手が若返るを通り越して幼くなっていた。
「ダンジョンマスターはショタだったのか!」
「…マスターは馬鹿ですか?」
混乱のあまり意味不明な事を口走っていると、後ろから声を掛けられる。
慌てて振り向くと、そこには少女が立っていた。
見た目は10歳くらい?透き通るような白い肌と、ストレートロングの銀髪。
釣り目がちの瞳の横にはさきの尖った耳がある。
エルフ?
「ディード…」
「アレは金髪です」
かぶせ気味にボケを瞬殺される。
「ああーえっと、君は誰?出会い頭に馬鹿は酷いと思うんだけど」
改めて友好的に会話を始める。
「私はダンジョンコアに付随するナビゲーションシステムです。マスターをサポートするために生まれました」
「ナビゲーションシステム?」
「そうです。ダンジョンを作成・管理・運用するには膨大な知識が必要になります。無知のままダンジョンを作っても直ぐに滅ぼされるのがおちです。
そもそもダンジョンは魔素を循環させる使命を持った世界のシステムの一部です。一定数存在しないと世界が滅びに向かいます。
太古の昔にはダンジョンの総数が減りすぎて滅びかけましたし。
そこで神々は効率は悪いですが、ランダムに自動生成される野良ダンジョンと、ダンジョンマスターがすぐに滅ぼされないように我々ナビゲーションシステムを作ったのです
大体ですね…
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・」
今だ語り続けるエルフっぽいナビゲーションシステムに呆れながら要点を纏める。
どうやらこの世界は地球にはない魔素と呼ばれるものが至る所にあるようだ。
そしてその魔素は川のように世界中を循環しているらしい。
ただ完全には循環せず至る所で淀みが起きる。大きな淀みは魔素貯まりと呼ぶそうだ。
その淀んだ魔素は段々穢れていき、その穢れた魔素が集まって魔物が生まれる。
生まれる時に穢れた魔素は浄化されることから、世界が独自に作り出した浄化作用らしい。
ダンジョンはその浄化作用を効率化させたもののようだ。
「あの、聞いてます?」
いつの間にか一人語りは済んでいたらしく、ジト目でこっちをみている。
「ごめんごめん、自分なりに纏めていたら没頭してた」
「ふー、まあいいでしょう。いくら若返ったとはいえ、錆び切った頭脳のリハビリは大事です」
その一言にハッとする。
「そうだよ!何で若返りってか幼児化してるのさ!」
「前の状態だとマスターの頭は錆びついてカチカチです。シナプス無さすぎです。
膨大な知識を覚える為と、柔軟な運用をする為に若返ったと思います」
「そこまで爺じゃねえよ!30成り立てホカホカだよ!」
「それにしてはスキャニングされた脳波パターンが…
まあ既に若返ったのですから過去のことは忘れましょう」
そう言いながら頭を振り、思考を追い出しこちらを向く。
「さあ、ダンジョンを作りましょう」
次回:ステータス