2話 山菜
ソージ異世界初の食事になります。
投げ捨てた本を見つけるまでに1時間かかった。
「我ながらよく飛ばしたもんだな」
乾いた笑いと、思っていた以上に飛んだ本に驚きつつ今後のことを考える。
「食料無し、水無し、人里に行く方角不明。
異世界なら財布の金もカードも使えないっと」
グーー
「そして絶賛腹減り中」
鳴りやまない腹を撫でつつ、何か食べれる物がないか辺りを散策する。
「お、これはイタドリっぽい。ありえないくらい真っ赤だけど。
これはタンポポ?葉まで白いし、葉緑素はどこ行った?」
子供の頃田舎で採った野草を思い出しつつ、それっぽいものを摘んでいく。
ある程度集まり、さて実食となるのだが、
「山菜って茹でたり揚げたり火を通した物は食べたことあるけど、生で食べれるのか?」
形は似ているが地球では在りえない色合いをした山菜に食べるのを躊躇う。
『口に入れて食えりゃそりゃ食いもんだ。
それで死ぬなら寿命ってもんよ。
そうやってワシは戦争を生き抜いたもんよ』
やることなすこと豪快だったじいちゃんの言葉が頭によぎる。
「飢えるよりはマシ、飢えるよりはマシ、飢えるよりはマシ…」
思い切って真っ赤なイタドリっぽいものを口に含む。
酸っぱいと思っていたが、口の中に広がるのは仄かな草特有の青臭さ。
記憶とは違う味に疑問符が頭の中で飛び交いながら、他の山菜も口にする。
白いタンポポ?も、やけに長いノビル?も、毒々しいほど紫色した紫蘇?も、すべてが同じ味。
仄かな青臭さが口に残るだけだった。
試しにと側に生えている草も食べてみたが、全て同じ味だった。
「ファンタジー…
仕事しろーーーー!!!!!」
「−−だって調理しなければ味あるんだぞ!幻想壊れたよ!ファンタジー要素皆無だよ!ある意味要素在りまくり??ともかくリソース何処で使い切っちゃったのさ!!」
橘宗次30歳、思っていたのとは違うファンタジーを味わうのであった。
次回:ギフト