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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

冥界の使者と世界を統べる幼馴染

作者: にーしゃ

息抜きに書いていた短編小説をせっかくなので投稿してみました!

創作設定がたくさんありますので伝記等で正しい知識を持っている方は申し訳ありません!


これ違うだろと思っても作者の創作ですので温かい目で見守っていただけると幸いです。

人神戦争───


神々の世界である『天界』の王が人が住む地上界の殲滅を宣言し、地上界がそれに抗ったことから始まった世界と世界の戦争。

俺───グランは地上界の英雄としてもう5年以上戦い続けていた。


一体どれだけの戦場を巡っただろうか。


これまで幾多の戦場で戦い神々の侵攻を退けてきた。



その幾多の戦場の一つに現れた異質な存在に思わず戦慄していた。


その存在は───白かった。

ただただ白い。そうとしか表現できない存在。


それが今俺の目の前にいる。


「地上界の英雄『死神のグラン』様・・・ですね?」


「なんだお前は」


「天界の王があなたをお呼びです。一緒に来ていただけますね?」


天界の王だと?今更何の用だ。


「あなたの疑問は王に会っていただければわかるかと」


嘘を・・・言っているというわけではなさそうだ。

罠の可能性はあるがいつまで戦えばいいのか分からないのも事実。

ここであえてついていき大将をつぶせばこの戦争にも終わりが見えるはずだ。


だが警戒はしておかねばならない。


「お前が嘘をついていないという保証は?」


「保証・・・と言えるのかはわかりませんが」


いいながら白い存在は背中から真っ白な翼を広げて見せた。


・・・どうやら天界の存在であることは間違いないらしい。


「分かった。ひとまずはついていってやる。だが妙な動きをすれば───。」


言葉と同時に禍々しい大鎌を白い存在に突きつけた。


「お前のその魂、刈り取らせてもらう。」



『死怨の大鎌』


死を司りし神タナトスの力を封じ込めた大鎌

この鎌で刈り取った魂は永遠に冥界に縛り付けられ、二度と逃げることはできない。



「・・・それでは王の下へご案内いたします」

白い存在は何も反応せず空高く飛び上がった。

俺もそれを追う。


この世界の戦争はお互いの被害が大きすぎる。


人間が生み出した『魔術』。神が生み出した『神通力』。


どちらも大規模になれば大陸一つが地図から消える。

そうならないために俺が数多の戦場をとめてきた。


実際俺が生まれた村は『神通力』によって滅びたのだから。






俺の村は住人が30人程度の小さな村だった。

村は農業が盛んで、俺と幼馴染であったフィアも6歳の頃からよく村の農業を手伝っていた。


フィアはきれいな銀髪に整った顔立ちの村一番の美少女だった。

性格は人懐っこくおてんばで一緒に村の大人達を振り回して困らせていた。


彼女がある日俺に話してくれた将来の夢を今でもよく覚えている。


「私、成人の儀が終わったら村を出て、冒険者になるんだ!」


恥ずかしそうだがどこかうきうきした彼女の顔が今でも思い出せる。



だが終わりは突然訪れた。


その日村には雨が降っていた。

俺とフィアは農作業の手伝いができなかったため俺の家で遊んでいた。


ドゴォォォォォォォン!!


「きゃあ!」


外の雨が強くなって雷が落ちた。


フィアは雷が苦手で雨が降るといつも俺にくっついてくる。


「怖がりすぎだよ。心配しなくても家の中な────」


ドガアアアァァァァァァァァァァァァァアン!!


目の前が真っ白に染まり俺の意識はそこで途切れた。




意識が戻って最初に見た光景は壊滅した俺の村だった。


「え?」


雨はすでに止んでいた。

どうやら崩れた家が偶然にも俺達の雨をしのいでくれていたらしい。


辺りを見渡すが人一人見当たらない。


「・・・フィア?」


一緒にいたはずのフィアがいない。


俺は崩壊した村を歩きまわりながらフィアの姿を探した。


「フィアーーーーーーーーー!」


呼びかけるが返事はない。


ふと村の近くに見えたのは白い何か。

そしてそれに抱えられているのは・・・


「・・・フィア!」


俺はただがむしゃらにその白いものを追いかけた。

しかし子供の足ではそれに追いつくことはできない。


俺は白いものを見失い、ただ途方にくれることしかできなかった。



全てを失った俺は街へたどり着き冒険者になった。

フィアを探すのなら世界中を回ることができる冒険者になるのが一番だと思ったからだ。


『私、成人の儀が終わったら村を出て、冒険者になるんだ!』


彼女の言葉を思い出し、もしかしたら再会できるかもしれないと心のどこかで思っていたのかもしれない。



そして冒険者として活動し始めて5年。


初めてダンジョンを踏破したとき、ダンジョンの最奥で神殿を見つけた。

なにかお金になるものでもあればと思い神殿の中に入ると頭の中に声が響いてきた。


声は自身を『冥界の王』と名乗った。

そして冥界の王は言った。


俺の村を滅ぼしたのは天界の神であること。

天界の神の力である『神通力』は自然に干渉し、世界の理を覆す力であること。

天界が近々この世界に大洪水を起こし、選ばれた者だけを天界に導くと宣言したこと。


「我と契約し、地上界を救え。お前の探し物はその先にある」


「フィアの居場所を知っているのか!?」


「天界の王を止めなければお前達(・・・)の未来はない」


お前達・・・・か。


「いいだろう。神だろうがなんだろうがフィアともう一度会えるのならやってやる!」


すると目の前に大鎌が降りてきた。


「手を伸ばせ。お前に冥界の神の力を授けよう」


そして俺は『死怨の大鎌』を手にし、冥界の使者となった。




過去のことを思い出しているうちにどうやら天界についたらしい。

天界も地上界もあまり変わらないのだな・・・などと考えていると


「王はこちらです」


と豪華な扉の前に案内された。

周りには何もない。

ただそこに扉があるだけ。


白い存在が扉を開く。


扉の先に見えたものに俺は動悸が抑えられなかった。


───どういうことだよ


「なんで・・・お前がそこにいるんだ・・・フィア!」



地上界の城にある謁見の間のような場所の真ん中に大きく豪華な椅子。

そこに座っているのは少女。


美しい銀髪。

整った顔立ち。


成長しているがかすかに昔の面影がある。

間違えようがない。


「久しぶりですねグラン」


フィアが声を発する。


思考がまとまらない。

どうして彼女が天界にいる?

俺は天界の王に会いにきたはずだ。


「私はあの頃のフィアではありません。今の私は天界の王。世界を一つにする使命があります」


「世界を一つに?」


「ええ、天界、地上界、冥界。王は三人もいらない。世界が一つになれば王も一人でいい。それは私こそふさわしいとは思いませんか?」


つまりフィアはすべての世界の王になるために地上界を滅ぼすっていうのか?


「いろいろと聞きたいことはあるが・・・なぜ俺を呼び出した?世界を一つにするのなら俺という存在は邪魔なはずだ。俺が冥界の王と契約して力を手に入れているのは知っているのだろう?」


この場で彼女を殺すのは簡単だ。

しかしそれでは天界を止めることはできないだろう。


ならば話を聞くしかない。


「今から言うのは王としての言葉ではありません。一人の私。フィアとしての言葉です。私に協力してもらえませんか?」


「・・・なに?」


協力だと?今まで戦い続けてきたのに今更?


「私は嬉しいのです。あなたに会うことができたことが。しかしこのままあなたとは戦いたくはない。」


「俺達が生まれた世界が滅ぼされるのを指をくわえてみていろと?」


目の前にいるのは確かにフィアだ。

しかし何だ・・・?この違和感は・・・?


「グラン。私と一緒に来て。今の全能の私(・・・・)とあなたが一緒ならできないことはない」


「ああ・・・そうだな」


せっかく再会できたんだ。

彼女の望みを叶えてやりたいと思う。


だから・・・・


『憑依召喚【ケルベロス】!』


言葉と同時。三つ首の狼がフィアの体を食い散らかす。


『憑依召喚』


契約した神の力を体に憑依させ使役する力。


そして今回呼び出したのは冥界の番犬『ケルベロス』



体を食われたフィアがいた方向から声がする。


「そうか・・・それが貴様の答えか・・・」


まるで別人のような口調。

これこそが違和感の正体。


「彼女の真似事ならもうすこしうまくやるんだな・・・天界の神ゼウス!」


全能神ゼウス


天界最強の神。あらゆる力を統べる天界の王。



今の俺ですら勝てるかどうか分からない相手。


だが今戦えるのは俺だけじゃない。


「そろそろ目を覚ましてくれないか?お姫様・・・


「全く、もう少しロマンチックな起こし方はできないの?グラン」


ケルベロスに食われたはずのフィアがそこに立っていた。


ケルベロスの三つ首はそれぞれに意味がある。


『保存』『再生』『創造』


フィアの体を食ったときに魂を『保存』し、同時に肉体を『再生』、ゼウスの仮初の体を『創造』しフィアとゼウスの憑依を強制的に解除したのだ。


「小娘一人増えたところで何ができる?我は全能神。雑魚がいくら増えたところで同じことよ!」



「そいつはどうかな?」


「なに・・・がっ!」


ゼウスの体に無数の鎌が刺さっている。

まるで最初からそこにあったかのように。


「ゼウス。お前の魂、刈り取らせてもらう」


ゼウスに刺さった無数の『死怨の大鎌』に赤い模様が浮かび上がる。

ゼウスの魂を吸い取っているのだ。


「ぐっ・・・なぜだ・・・なぜ『全移動』が使えぬ・・・!?」


「私のクロノスを前にして逃げられると思っているの?」


『全移動』は時間や空間を司っている神に許された神通力。

時間、場所を問わずあらゆる場所に移動できる力。


時間を司るクロノスを憑依させたフィアは当然使えるし、冥界に堕ちた天使であるルシファーの力を使えば俺も使うことができる。

同じ力を持つ神同士ならば当然より強力な神通力を持つ神の力が優先される。


しかし今のゼウスはケルベロスが『創造』した仮初の肉体。

力は全体の一割にも満たない。


ならば俺達の力が勝つのは当然だ。


「おのれ・・・人間風情がぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「「その人間風情にお前は(あなたは)負けるんだよ(負けるのよ)」」


俺達の言葉が重なるのと同時に。


ゼウスの魂は冥界に囚われた。




正直に言うとこの戦いは賭けだった。

もしゼウスの力がもう少し強ければ『全移動』で逃げられていた。

それに『憑依召喚』は一体ずつしか神の力を宿すことはできない。


タナトスの大鎌を呼び出していた俺は他の力を使うことはできなかった。

フィアがいなければ負けていただろう。



「久しぶり、フィア」


「久しぶりね、グラン」


握手を交わす。


フィアが連れ去られたあの日は絶望していたが、数年後に考え直した。

殺されていなかったということはもしかして彼女はどこかで生きているのではないかと

心のどこかで思っていたのだ。


・・・まさかゼウスに憑依されているとは思っていなかったが。


「グラン」


「なに?」


「ありがとう。助けに来てくれて。ずっと会いたかったわ」


「俺もだよ。会えてよかった」


ようやく再会できた。

そのことが今は嬉しい。


「さあフィア、地上界に戻ろう」


フィアは俺の言葉を聞いて申し訳なさそうに言った。


「残念だけどすぐには戻れないの。ゼウスはいなくなったけれど今の私は天界の王。王がいなくなれば民が混乱してしまうわ」


「そうか・・・そうだな・・・」


いきなり世界のトップが消えてしまえば民が混乱してしまうのは間違いないだろう。


「いつか必ず地上界に戻るわ。だから待っていて欲しい」


「ああ、いつまでも待つさ。今この瞬間のために俺は十年も待ったからな」


「グラン・・・」


「ずっと一つだけ君に言いたかったことがあるんだ」


「なに?」










「好きだ。フィア」






ここまで読んでくださってありがとうございます!


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