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投稿しないって言ってたけど、出来ちゃったんだから仕方ないよね。うん。
【初めての予約投稿】
今回は約8900字です。
かくして、無事フィナは義勇軍の集結地であるラ=チェリン王国が首都、カノッサに辿り着いたのであった。
――……別に、無理に旅の間の話を飛ばした訳ではない。ただ本当に、道中何事も無かっただけだ。
と言うのも。
メルリッツ=ビーンを出てフィナが最初に立ち寄った街で、同じく義勇兵としてラ=チェリン王国に行くというドワーフ村の老兵、ガンツに出会ったからだ。
帝国の地理がさっぱりなフィナとしては東方にあるドワーフ村など数多くて分からないが、とかく彼が百年以上生きているドワーフであり、歴戦の兵であることは雰囲気から分かった。
「ほぉ、嬢ちゃんは義勇兵なのか。……実はな儂もこれからカノッサに向かうところなのじゃ……」
義勇軍の集結地、カノッサのことを知っているから彼も義勇兵なのだとすぐにフィナは理解した。
それからは、このドワーフの老兵と一緒に西に向かうことになったのだ。
「儂も一昔前は、やれ英雄だの、大弩のガンツなどもて囃されたものだが……なに、今ではこんな老いぼれよ」
ガンツは灰色の長い顎髭を撫でながら「ただの隠居ジジイじゃ」などと笑い飛ばしていたが。
その実力はとても衰えているどころではなかった。
それは道中、グレートウルフの群れが森から飛び出してきた時だ。
索敵外から突然現れたことに慌てて武器を生成しようとしたフィナ。
ところがガンツはただ一言。
「儂にまかせろ」そう言ってフィナを下がらせた。
そのまま鼻歌でも歌うようにのんびりと、道の真ん中に進み出たガンツはクロスボウを組み立て始める。
こちらに狙いを定めたグレートウルフの群れは、その俊足で瞬く間にガンツとの距離をつめてくる。
群れが一体となって一つの個であるように統制された動き。
一体化された動きは、ただでさえ早い速度に巨大な質量を与えるだろう。
まさしく襲撃。襲いかかる殺意の雪崩のようだ。
……――さぞかし練度の高い群れだったのだろう。襲撃の一撃の後の流れるような包囲は見事なものだった。
きっと、多くの隊商や、他のウルフの群れを血祭りに上げてきたのだろう。森一番のボスの群れだったかもしれない。
だがしかし悲しいかな。相手が悪かった。
ガンツは、フィナの腕ほどもある強靭なワイヤーを――簡素な巻取り機のみで――腕力にまかせてグルグルと滑らかに巻取り。
彼の身長の三分の二もあるはずの大弩を片手で振り回していた。
(いやいやいやいやいや~~!!)
しかも百発百中ときた。
放った矢弾を余すとこなくグレートウルフに頭に叩きこむ腕は、尋常のクロスボウ使いではない。
そもそもクロスボウは一体多数のインファイトに使う武器じゃない。一般の弩兵が見たら発狂するほどだ……ああ、やめてくださいクロスボウを鈍器に使わないで……。
きっと誰もがツッコんでいただろうに。フィナは「なんで隠居してるの」と規格外の強さに訝しげに思ったのものの、敢えてはツッコまずにいた。
何よりも、彼の持つ豊富な知識と経験によって西への旅が安全かつ楽な旅になっていたからである。時々、方向音痴――主に地図関係――を炸裂させるフィナにとっては迷う心配をしなくて済むということは実に精神安定上、重要なことであったのだ。
それに、この種の人々の間では暗黙のルールがあると言うではないか。“余計な詮索はするべきでない“と。
結果としてフィナは心強い仲間を手に入れたのだ。その身の上は謎であるが、ガンツ爺の腕と経験は確かである。旅に付きまとう困難、盗賊や悪徳商人、汚職門番に遭遇することを避けられたのは彼の老練さ故であろう。
……でも合えて言おう。
本当は聞きたかった ツッコみたかったよ?
なんでそんなに強いのかとか、絶対狩りが上手そうだし聞きたいこといっぱいあったよ?
でもマナーだし、暗黙の了解だから聞けなかったの!
うぅ、……せう
ちくしょう ちくしょうめー!
その日の夕食には沢山の狼肉が並んだことは言うまでもない。
硬い肉を噛みちぎりながら、あのお爺ちゃん殺っている間ウルフ料理のことしか考えていなかったよねと思ったことは印象深い。
―――目の前には「ドワーフには硬い肉じゃ」とかご高説して上機嫌な老ドワーフがいた。
さて、ラ=チェリン王国の首都カノッサに辿りついたフィナとガンツの二人は、城壁を抜けようとする長蛇の列に半日以上も並び、やっと王都の門の前までやって来ていた。
流石、一国の王都だけあって人の流れが多い。
王都にやってくる者たちを、悉く威圧出来そうな強固で巨大な城壁が、ごく普通の高さの城壁かと錯覚する程の人の列。いや、群れと言うべきか。
風の噂で義勇軍が結成されることを耳にしたのか、商機を狙った商人たちだけでなく、それに併せて食い扶持を求める人々までもが、大挙して王都に群がって来たのだ。
無論、それだけの人々が集まれば、必ずモノが不足する。
そうであるから、更に運搬商人が殺到する。そして人々が一攫千金を求めて我も我もと集まる……。
これの繰り返しであった。
ラ=チェリン王国のお偉いさん方々には、王都発展のチャンスであり、またとない好機なのであろう。
でも、フィナにとっては大変迷惑極まりなかった。
「何より道が臭い」
それ程の人々が集まれば、王都に入る為の入門の手続きが滞る――門番の入門管理官の手には限りがあるのだ。
手続きが滞り、なお且つ、まだ人が流れ込むのであれば、列が長大化するのは自明の理。それに門番の仕事は入門だけでは無いのだ、警備もしなければならないし、何より出門の人数も馬鹿にならない。
入門希望者に商人が多いのであれば。彼らは市場を求める身であるのだから、モノが集まる王都で買い物をして、それを売りさばきに王都を出ていくというのは、門番の仕事をしていたら馬鹿でも理解できる――入門と出門する際に馬車を検分することは、門兵の最重要な仕事なのだ。
奴らは入ったら必ず出てくる
そして暫くしたら また入ってくる
皆 王都に入りたいんだ
しかし 勝手に入るのは我らが許さない
その結果がこの長大な待機列であった。現状、出門者はなんとか捌いて王都の中で人の流れを留めることは避けられているが、むしろ、それが限界。
現場の門兵たちの手はあまりに足りなかった。
まさに猫の手も借りたい状態の彼らの声は王宮に、陳情書として届けられていて、そして、王宮の官僚達にも、実際問題として真剣に受け取られ、増員を検討されていたのだが。
いかんせん、門兵の増員にラ=チェリン王国の騎士団を使おうにも、既に彼らは人口急増に対する治安維持の為に王都内の警備要員として駆り出されていた。
切実に人手が足りなかった。
それ故に、門兵達は現状の人員で、増え続ける入門希望者に対応するしかなかった。
――王都内の警備を増やさず、門兵を増員して、外部の者を多く内に入れるより。中の警備を万全にして、入門希望の処理は管理出来る程度にしておいた方が良い――その合理性は門兵達も理解している。
だからこそ増員もそれ程期待しないし、たとえ入門希望者からの文句を受けたとしても、「現状の人員で職務に努めるのみである」と考えて長大な列の処理を続けることが、彼らの職務へのプライドであり誇りであった。
そうであるから。
待機列で大勢が留まることによって起こる種々の問題に、目を瞑るのはまあ仕方がないことである。
「耐えられない。こんな臭いの中、半日、とか、無理!もう嫌、王都出たくない。そもそもなんで垂れ流しなのさ」
一方、フィナは文句たらたらであった。
もっとも、それは門番たちに言うには余りに酷であり、まして、毎日悪臭の中、荷馬車どもの臨検をする門兵たちからして、文句を言いたいことであった。
しかし、そうは言っても、コレばっかりは人間の生理現象故に仕方がないことなのだが。
「まあ、少しばかり臭うかの」
ガンツは流石と言うべきか、左程臭いを気にするでもなく、隣から聞こえてきた呻き声に苦笑いを返す。
「これが少し?信じられないよ!」
フィナとしては「何なのこのドワーフ爺」と叫びたい気持ちでいっぱいであった。なにせ、待機列に漂うのは、荷馬車を引く動物達の獣の匂いに加えて、人間がごった返したことで立ち昇った熱気と汗にボイルされた糞尿の臭い。
そう、糞尿である! フィナは叫びたい気持ちを、ぎりぎり堪えた。
仮にも女の子であるフィナが、糞尿とか叫んだらどうなるか。目の前には延々と、続く入門者に対して質問する門番や周りの人々がいるのだ。いったいどんな目で見られることやら……フィナのへちっくなプライドでもそれだけは認められなかった。故に耐えた、せふせふ、「偉いよ、わたし」と自分を心の中で褒める(その結果、妙に満足げなニヤケ顔を晒して、周囲に不審に見られるのを、彼女は気付いていないのだが)。
ともかく!自然によって数日も放置すれば、気にならない位には臭いも消えるのに、土に帰る前に新たな糞尿が次々と追加される。更には臭いを嫌がった動物達に蹄で地面を掘り起されて、撹拌される始末。大量の糞尿がこれでもかと撒き散らされて、もはや地面そのものが腐っているのかと考えてしまう程だ。
そんな悪臭が地面から湧き出ている様なところで、半日以上も行列で待ちぼうけだ。
日差しが、熱が、臭いを耐え難いまでの悪臭に強化して、この時ばかりは、普段楽天的なフィナも、陽気な太陽を恨んだものだ。
さて、ぶつくさ文句を漏らしていたフィナも、流石に門の前まで来る頃には鼻が麻痺して、臭いはそれほど気になってはいなかった。
が、しかし、それでも気分の問題なのだ。フィナは考える。「腐った糞尿の大地に立っているという事実に気が滅入ってくるのは女子として普通ではないのか?」と。
全くもってその通りである。フィナとしては、心の片隅にあるちっぽけな女子力を、保持する為にその考えに大賛成であった。
「いや、別に森の中で糞を踏むのは気にならないけど」
ところがどっこい、反対意見が出てきた。何故だ。
フィナは自分の頭の中では二つの意見が対立したことに動揺する。
「これは良くない、例え自分だとしても女子力を侵すことは許されざるよ、防がねばならないのっ」そして、何故か頭の中で、絶対的防衛圏なるものを構築し始めた。
フィナは思う「ふっ、これは私のプライドの戦い……」――勿論フィナは絶対的女子力信奉者なので、プライドが打ち勝つはずだった。
そう、“はずだった“。
あれ、普通ってなんだろう?
否、既に手遅れであった。フィナは混乱の真っ只中。
自分のことながら思考が矛盾し過ぎて頭を抱えたい気分。そしてフィナは考えたのだ。「わたしは狩人だし、普通の女の子じゃないよね」と。
さもありなん。普通の女の子ならば、村で遊んだり、手仕事なりをしているはずで、間違っても獣を追いかけて森の中を駆け巡ったり、獣の動きを探る為に糞をあさったり等するはずがない。そもそも保護者の大人が許すわけがない。我ながら簡潔な素晴らしい結論であった(頭の隅で膝を抱えたくなったのは内緒)。
ともかく、この臭い地獄から開放されるのは素直に嬉しい。
そう。
ようやく入門の番が回ってくるのだ。
フィナは疲れたため息を吐いた。
体温のこもった“温かい息“。
その息に含まれる水蒸気は、すぐに悪臭に汚染されて“ナマ温かい息“にジョブチェンジしてしまう。
まさか自分が悪臭をまき散らす存在になるとは……。
フィナは自分の乙女心が凄まじいダメージを受けたことを、死んだ様な目で悟る。
だいじょうぶ…… きっと まだ わたし おんなのこ のはず……。
「王都に入ったらすぐに体を洗う。そうしよう。うん、それが良い」
「ふぉ、ぉぅ……そ、そうじゃなっ、王都に入ったら良い宿を探そう。そ、それがよいの……」
フィナから立ち昇る負のオーラに、流石のガンツも狼狽える。
冷や汗をたらしながら、ガンツは「悪臭の大地よりも、血みどろの戦場よりも、女子の方が何千倍も恐ろしいわい」などと若い頃を懐古していた(このドワーフ、やはり爺であった)。
「……お前さん達、質問するから、とっとと答えろよ。後ろの連中も待っているんだ」
「はっ!? ご、ごめんなさいっ」
「…すまんかったのう」
気付けば目の前に、入門審査官の男がやって来ていた。
前の者の審査が終わったのに、続いて来ないフィナたちに苦言を言いに来たのだろう――門番である彼も、温厚そうな少女とドワーフの爺の二人組が問題を起こすとは考えにくかったので、取り敢えず注意をしたあとは入門審査を始めるようであった。
「いや、分かってくれりゃ良いんだ。なにしろこの大混雑だからな」
門番の顔には疲れた表情が浮かんでいた。
フィナがこの腐った大地でもっとも苦労している存在に気付いたのは、この時である。
臭かろう、多かろう、いくら足掻いても減らない絶望的なタスク、劣悪な環境を前にして男は疲れた様子ではあるが苦笑いを浮かべる。この臭い仕事に不満を抱いていない?
フィナは、今まで文句を言っていた自分を少し恥ずかしく思う。
門番の男は――こんなに臭い中――一日中、入門希望者に質問を繰り返している。
フィナだったら断固拒否する仕事だが。
どうやら、彼は何らかの決意を元に自分の意志でやっているのだろう。
価値観の違い。仕事の誇りなどフィナにとっては知ったこっちゃないけど。やはり、こうして実際に、――臭い中――彼らの仕事ぶりを見ると、彼らに対して尊敬の気持ちを持つことも、やぶさかではない。
(どんな場所でも、気持ちそれぞれ、人それぞれなんだねって。
私は絶対に無理だけど、門番さん偉いなー。)
フィナはちょっとだけ成長した気がした。
昔、メルリッツ=ビーンの長老会の集会所で読み聞かせて貰った『たのしいドートク』とかいう本に書いてあったのは、このことだったんだ。などと、完全に忘れ去っていた記憶を取り留めもなく思い出した。たしか、内容は……
いやー誰かを認めるって、いいことだねー。
みんなちがって みんないい だよ!
『たのしいドートク』編︰ゆうしゃ
といった感じだろう。
なるほど、たしかに。フィナはうんうんと頷き、門番を尊敬の眼差しで見る。またの名を温かい目攻撃。
(すごーい)と、目をキラキラさせるのがミソ。
もっとも、門番の仕事に対する印象は、失礼千万であったが。
悲壮感漂う笑顔、ワーカーホリックな門番さんな男を見てガンツは心中お察し申すといった神妙な顔で返事をした。
「なるほど、確かに大変じゃの……」
「お、お疲れ様です……」
ご老人にありがちな全知的な振る舞いを、傍目で訝しげに見ながらも。フィナは追随し、硝子のように、ハートが脆くなっていそうな門番を労う。
(注︰あくまでフィナの主観である)
「ああ、すまん、今のは私情だ。忘れてくれ。……だが、まあ、ありがとうな。そう言って貰えると助かるよ。
――さてさて!時間が無いんだ仕事に取り掛かるぞ!」
「ほっほ、そうじゃの、早めに終わらそうかの」
「……ばっちこい」
門番は照れ隠しの為なのか、気合を入れ直した。
勿論、ガンツはともかくフィナは、早く王都に入ることに否応はないので、質問が来たら即座に答えられるよう、構えをとった。
ぐっ、と両手を握りしめた、その構えは無駄に気合が入っている。フィナは「さあ来い、さあ来いやー!」と奮起していたのだ。
気合が入り過ぎて、子鹿のようにプルプルしていたのを、門番とガンツが「見なかったことにしよう」と、二人目を合わせて頷き合い、全力でスルーしていたのは、全くフィナの知るところではない。
なぜなら、フィナからすれば、門番がうむうむ、とガンツの言葉に賛同して頷いているようにしか見えなかったのであるのだから。もう、違和感は皆無であった。
「よ、よしっ。じゃあ質問行くぞ?
まず一つ目、王都に何をしにきたんだ?」
「儂らは二人とも義勇軍に参加しに来たのじゃ」
「なにっ?義勇軍か。……なる程なる程、するとあんた等ギルドから派遣されてきたワケだな、だとするとギルドの依頼証明書が必要なんだが――」
「いやいや、儂らは諸侯様がたの分の枠じゃよ」
「あ、はい。領主様に頼まれて来ました」
「あ、あんたら猛者だったのか。……こいつは驚いた」
思わず、だったかもしれない。
狩人としての意識が高すぎたのだろうか?
聞き慣れない言葉で自分のことを呼ばれたことから、フィナは反射的に疑問を口に出していた。
「猛者?」
「ん?ああ、猛者っていうのは、帝国の諸侯や領主の方々が、各自で、選りすぐりの強い奴を義勇兵として送って来るらしいってことで、そういう奴ら全体を猛者って呼んでるんだ。
すまんな、王都内じゃ、そこそこ有名な噂なんだが、流石に旅の最中で聞くことはないか……」
「ほう、成る程“猛者“とは面白い呼び名じゃの。――……ところでその義勇軍なんだが。どのくらい集まってきているのか知っておるか?」
「ああ知ってる。いや、俺が知るかぎり、猛者は比較的近いところからは、幾らか集まっているが、まだまだ全てには程遠いらしいぞ。
それと、他の同僚は猛者を審査したかもしれんが、俺にとってはお前さん達が初めて、入門審査する猛者だ。
すまんな、ギルドの依頼で来たパーティーは審査したことがあったんだが、てっきりあんたらもそうだと思い込んじまった」
「なに、気にすることはない」
「(コクコク)」
彼の話によれば、フィナ達の到着は比較的早い方らしい。
どうやらガンツのドワーフ村の村長と、メルリッツ領邦男爵は相当行動が早かったようだ。
加えてガンツ爺のお陰でスムーズに旅程をこなしたことに起因する時間短縮によって他の領邦諸国の義勇兵より、かなりのアドバンテージを持って到着できたのだ。
義勇軍という寄せ集め集団としては、攻め込みたい所の隣の国(今回でいえばラ=チェリン王国の首都カノッサ)で結成する際には、やはり最初に辿りついた者ほど、義勇軍の中核としての地位が与えられることが多いのだ。
したがって、義勇軍の敵である脅威に比較的近い、近隣諸国の義勇兵に優越があるように出来ているのは、まあ妥当なことであった。
なぜなら、帝国議会が脅威を感じたような事態なのだ。“敵“に近い彼らだからこそ肌身で脅威を感じて、義勇軍に貢献する気概が高い者が多いのは、当たり前といえば、当たり前か。
国を治める者達にとって勇者とはそれほど恐ろしい者なのだ。
そして、例え遠方の諸侯の兵でも、早駆けして参上してくれる義勇兵であれば、信用も篤く、安心して義勇軍を任せられるというものだ。
なにより、遅れてゆっくり来た義勇兵に地位を与えていたら、他の義勇兵たちの反感を買うことは火を見るより明らか。
寄せ集め集団である義勇軍は、不和の源を徹底的に排除しなければならない。そうでなければ藁山に松明を投げ入れたように、内部から燃え上がり、組織が崩壊していしまうのは、火を見るより、いや、炎を見るよりも明らかだ。
フィナは「うちの領主様すごいんだなぁ……」と、しみじみと静かな衝撃を受けていた。
「そう言ってくれると助かるぜ……まさか、二度も同じことを言うとは……三度目が無いことを祈りたいね」
「その気概さえあれば大丈夫じゃよ」
「ありがとうな。
っと、いけねえ、仕事だ仕事。すまんすまん。」
フィナは上の空であった。既に故郷から遥か遠いところまで来てしまっていた。12歳の彼女からすれば、感慨深いものがあるのだろう、目を瞑って夢想をしている。
きっと故郷の顔を思い出しているのだろう。幸せそうに顔を綻ばせる少女を見て、男二人の顔にもまた、自然と優しげな微笑みがこぼれていた。
そして、フィナが呆けている間にも、爺と門番はたんたんと審査をこなしていったのである。
「コホン、次の質問で最後だな。ドワーフの爺さん…はドワーフ村か……。そこの嬢ちゃんは何処から来たんだい?」
「えっ!?」
「これこれ、ドワーフだからってドワーフ村から出てきたとは限らんぞ」
「おっと、すまねぇ。爺さんは何処から来たんで?」
「まあ、ドワーフ村なんじゃがの」
ガンツ爺は何故かもじもじと、恥ずかしそうに言った。
フィナは「何してんのよ」と突っ込みたかった。髭もじゃの齢百を軽く超えてそうなお爺さんが、ポッと顔を赤らめて、視線を彷徨わせるのは誰得な光景であった。
ワー とっても お茶目さんナンデスネー……。
取り敢えず、フィナは温かい目で見守ることにした……。
視線が悪臭で腐ってるかも……とふと頭によぎったが、考えては駄目な気がしたのでフィナは思考を止めることにした。
何事にも常人が触れてはいけない世界があるのだ。
「お、おぅ。そ、それで嬢ちゃんは何処から来たんだい?」
「ふぇっ!?」
門番の男もガンツに怯んだのか、話題を変えようとした。
そのおかげか、突然のことだったのでフィナは無事、正常な思考に回帰することが出来たようだ。
「わたしはメルリッツ=ビーンからです」
「「…………。」」
「……え、え? あのーそのー……もしもーし」
沈黙した二人に困惑するフィナ。
どうやら、わが故郷であるメルリッツ=ビーンをご存知のようである。どのようにご存知かと言えば、恐らく悪い方向でご存知なのだろうことは、嫌でも想像できた。
せめて返事でもくれたら、どれだけ気が軽くなることか……。
フィナは既に心が折れそうであった。そう、涙目不可避。
「お、おい嬢ちゃん…。メルリッツ=ビーンって、あの、メルリッツ=ビーンだろ? 本当に義勇軍に入って大丈夫なのか」
「……フィナちゃん、お主、メルリッツの義勇兵だったのかい」
門番とガンツの二人とも、驚愕で目を見開いている。
それを見たフィナは、がっくりと脱力した。
てっきりボロクソに言われるかと思っていたのに。期待外れである。
むしろ、カチンときた!さっき迄の不安を返して欲しい。節にそう願うのです。
フィナは冷静に、クールにキレていた。
ムカチ〜〜ン!!
ぷー ぷー
周りから見れば年相応の、少女の癇癪であったことを付け加えておく。
また物語進まない病が発生してしまった。(あっれ勇者討伐がどんどん遠くに……。解せぬ。
そして色々と実験的文書ですが、お許しください。練習と思って書き始めた作品なので、やりたい放題やってしまうのです。
悲しいなろう小説家の性よね。
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○フィナ……主人公、狙撃手、茶色。全財産=鞄と金貨の入った袋
○ガンツ……ジジイ
○ 門番の男……新婚らしい、好きな妻の手料理はパインパイ。ただし最近パインの産地であるメジル王国から商人が来なくなったのでお預け中とのこと(フラグ回避中。




