彼女が嫉妬しています3
「どうしようか」
早苗に聞いてみる。
「まだ帰らないわよ」
早苗がこたえる。
・・・僕は帰りたい・・・
「私の家に行くということも考えられるけど・・・」
・・・気のせいか、雷の音が強くなり、雨足が強くなったようだった。
「まあ、いいでしょう。元の喫茶店に戻りましょう」
「え、また?」
「ええ」
店に入ると、もう二人ともすっかりぬれてしまっていた。
さっきの小柄なウェイトレスが、
「すごい天気ですね」
と言いながらタオルを持ってきてくれる。
「そうね、だから、また来てしまいました」
早苗は楽しそうにそういうと、奥の方の席に座る。
この雨のせいで、店はさっきより混んでいた。
ウェイトレスが来ると、早苗は
「ちょっと迷っているので、もうしばらく待ってくださいね」
といってメニューを広げた。
そして早苗は、メニューを見ているようでもなく、何か待っているようだった。
10分ほどもたっただろうか、早苗が手を挙げてウェイトレスを呼ぶ。
「私はコーヒーと本日のケーキ、祐介はミルクティーでいいわね」
と、大きめの声で言った。
「ああ、いいけど・・・また食べるの?」
「もちろん、甘いものは別腹だから」
さっきも甘いものだったけどな、と心の中でつぶやく。
注文後、早苗は目をつむり、何も話さなかった。
数分後、注文したものが届いた。
今度はどんな味がするんだろうなあ・・・そう思いながら、ミルクティーを見ていると
「祐介、早く飲んだら?」
と早苗がいった。早苗は手を付けていない。
しょうがないと思い、一口飲むと
あれ、おいしい・・・
「どうしたの?ここのミルクティーはおいしいのよ。茶葉が違うのだから」
と早苗が説明してくれた。
変だなあ、と思ったとき、近くの席から
ぶーっという妙な音が聞こえた。どうもだれかむせたらしい。
盛大な音だった。
それを聞くと、早苗は、にっこり笑い、
「祐介、今日は私はこれで帰るわ。でも今日は最後以外は散々だったから、近いうちに買い物に付き合ってね」
といって、席を立って出て行った。
また、僕のおごりですか・・・
そう思いながら、見送った。