彼女が嫉妬しています2
未希のご機嫌が・・・悪い・・・
これはまずいことになった。
そこへ、ウェイトレスがミルクティーを持ってくる。
「大変失礼いたしました」
「いえいえ・・・」
悪くないウェイトレスに心の中で謝りながら、受け取る。
「大丈夫ですか?さっき、妙なこぼれ方をしたようですが・・・」
「いや、大丈夫、俺がちょっと不注意だっただけだから」
そういって一口飲むと
「む・・・」
早苗が不思議そうな顔でこちらを見る。
「いや、だいじょうぶ、ちょっとむせただけ」
そうごまかす。
どうやら、砂糖の代わりに塩が入っているようだ。
「ちょっと、トイレに行ってくるよ」
そういって席を立つ。
トイレの前には、未希がいた。
「彼女を前にしてほかの女とずいぶん楽しそうね」
「いや、ほんとに違うんだ。ただの買い物で・・・」
「そうね、そりゃあ、ただの買い物でしょう。そうでなかったら、今頃、もっとひどい天罰が下っているでしょうから」
未希がおそろしいことをいう。
「とりあえず、早苗に変に思われたら、俺たちも学校で大変だから、な」
何とか未希をなだめる。
「それはそうね」
「ただし、今度、私にもミルクティーと、チョコパフェと、サンドイッチ。デザートにはデラックスバナナチョコパフェをご馳走してくれるんでしょうね」
・・・
「もちろんだよ・・・」
きっと次にくるときは、おいしいミルクティーが飲めるのだろう・・・
席に戻ると、早苗はすでにデザートのデラックスバナナチョコパフェをほとんど食べたところだった。
「さすがにちょっと苦しいわね」
あたりまえだろ、と思いながら、店を出た。
「さて、では、次は、どうしましょうかね」
「あれ、買い物は?」
「まあ、結構買ったし、少し食べすぎたから、今は体を動かしたいわ」
「そこの、公園で散歩でもするのはどうかしら?」
「散歩か・・・うーん」
また未希がなんか怒りそうだなあと思って返答を渋っていると・・・
あっという間に黒い雲が立ちこめ、遠くで雷まで聞こえ始めた。
そして、大粒の雨が降り始めた。
「・・・散歩できそうにないね・・・」
「そうね・・・急にひどい天気ね。天気予報でこんなこといってなかったけど・・・」
「じゃあ、雨宿りを兼ねて、カラオケにでも行きましょうか」
「カラオケ?」
「ええ。まさか、私と行きたくないわけないでしょうね?」
「いや・・・もちろんそんなことないよ」
早苗の迫力に押されながら答えると、
早苗は、当然よね、といった顔で雨の中を走り始めた。
俺もその後を追う。
まもなく、ビルの前についた。ところが、
「空いてないの?平日なのに?」
早苗の声が聞こえた。
確かに休日の午後だが、さすがにこのビルすべてがカラオケルームなので、空いてないはずはない。
と早苗が思うのは当然だ。
「申し訳ございません、たまたまある会社のカラオケ大会で、3フロアが貸し切りになっておりまして」
店員の申し訳なさそうな声が聞こえる。
やむなく一階の受付から出ると、意外にも早苗は、妙に楽しそうな顔をしていた。
なかなかやってくれるじゃない、
そうつぶやくのが聞こえた。