彼女が嫉妬しています1
「ごめん、今日は幼なじみの早苗の買い物に付き合う約束なんだ」
「・・・」
「未希と付き合ってることは、他の誰も知らないし、早苗にもそう言ってるから、断れなかったんだよ。昔からときどきいってるし・・・」
「・・・しょうがないわね。早く切り上げなさいよ」
未希はしぶしぶといった調子でいった。
「もちろんだとも」
「早苗、まだ終わらないのか?」
「何を言っているんですか。まだ三軒目ですよ。まだまだかかりますよ」
早苗はしそうに言った。
早苗は、同じ高校に通う同級生。
小さいころから近所に住んでいるので、親同士も仲良くしている。
髪が長く、おとなしい。習い事も茶道やピアノなどをしていて、お嬢様といった感じの様子だ。
そのため、昔から俺は、執事と召使みたいな役回りになることも多い。
「でも、少し疲れましたね。そこの喫茶店でいったん休みましょう」
「そうだな」
店に入ると、落ち着いた暗めの照明で、俺たちは店の真ん中あたりの席に座る。
「何を注文しますか」
「俺は・・・ミルクティー」
「じゃあ、私は、ミルクティーと、チョコパフェと、サンドイッチ。デザートにはデラックスバナナチョコパフェにします」
「・・・多くないか」
「いえいえ、せっかくごちそうしていただけるのですから」
「・・・俺そんなこと言ったっけ」
「こういうところで女性に請求するようには、まさか教わっていないはずですが?」
早苗はにこやかに言った。
「・・・」
俺は、深いため息をついた。
そのとき、注文のウェイトレスが来たので注文した。
「あの子も、同級生ですね」
「あれ、そうだっけ」
「ええ、隣のクラスのはずですよ」
しばらくして、ミルクティーが二つ先に来た。
その時にウェイトレスの顔を見る。
かわいい子だなあ。ちょっと小柄で、妹みたいな感じだ。
「お待たせしました」
そういって、早苗のミルクティーをまずテーブルに置いた。
次に俺の前にミルクティーが置かれようとしたとき、そのカップが不自然に傾いた。
そのまま、お盆の上がミルクティーで満たされる。
なぜか、地面にも、俺の服にも、全く飛び散ったりはしていない。
ウェイトレスは、
「失礼しました!」
と顔を赤くして、そのお盆をもって店の奥に急いで戻っていく。
俺が、早苗の後ろのテーブルを見ると、未希がこちらを見ていた。
その顔は、
「ずいぶんかわいいウェイトレスに見とれていたようね。神様の罰が下ったんじゃないからしら」
と、言っていた。