彼女は国語が嫌いだそうです
どうも、方向性もよくわかりません。
書いているうちに決まってくるといいのですが・・
とある国語の授業。
未希が教師に当てられた。
「では、ここまでの意味を要約すると、どうなるかね」
未希が無表情なまま、立ち上がる。
そして、実に簡単に要約した。
「つまり、著者は前の大統領が好きということでしょうか」
・・・
教師が言葉に詰まる。
「ええと・・・そうなるかね?」
未希はこたえる。
「はい、おそらく」
教師は、動揺しつつも
「しかしだね、この本は、今の大統領の考え方をいろいろと書いていて、その中にはいいところも悪いところもあると書いてある。誰が好きだという話ではないと思うのだが・・・」
未希は自信なさげに、しかしひるまずにこたえる。
「ですが、言葉の端々から、前の大統領への愛情を感じることができます!」
「・・・そうか、では、どのあたりからその愛情が感じられるのか、次の授業までに提出してもらおう。ほかの者は、それぞれが考える要約を書くように。」
昼休み、俺は未希に笑いながら言った。
「さすがに、前の大統領が好きってのはおかしいよ。だって、あの授業、論説文の読解だよ、恋愛小説じゃあるまいし」
と、ここまで言って、思わず口が滑ったと感じた。
「あ、いや・・・」
何とか言い訳しようと思った時、彼女はすでに心を決めた顔をしていた。
「ねえ、祐介。私は思うのだけど、別に国語の授業なんていらないのではないかしら。たぶん神様もそう思われると思うの。」
「あ、どういう・・・」
「つまりね、毎回国語の授業のある時だけ、学校が閉鎖になるような異常気象とかが発生すると思わない?」
「とりあえず、落ち着こう」
俺は未希をなだめることに必死になった。
「いや、国語の授業だけそんなことになったら、大変だから。大問題になるから!ここはやっぱりちゃんと勉強しよう」
そういうと未希は、
「ちゃんと勉強、あ、そう。祐介も私の解釈が間違っているっていうんだ。さっきもそう言ってたもんねー。そうかー私の国語力って祐介にもバカにされたんだ」
いや・・・だって・・・
「恋愛小説じゃないとか言われた・・・もう私、勉強してもしょうがないかも・・・国語もできないなら、この先、もうだめね・・・」
「いやいや、そんなことないよ。斬新な解釈だったよ」
必死に笑いをこらえながら弁解に努める。
「まだバカにしてる・・・もういいわ、私死んだ方がいいわ。まず、彼女の解釈を理解しようともしない、どうしようもない祐介を呪って、私も死のう。それが神の意志だわ」
「悪かった。俺が理解不足だった。ゆっくり考えよう。一緒に宿題もやるから!」
それを聞くと、未希はわずかに顔を上げ、
「あら、そう。それほどいうのなら、私の宿題もやらせてあげるわ。きっとそれほど誠実に反省している祐介を、神様もきっと見捨てないわね」
こうして、二人分の宿題(特に一つは論説文を恋愛小説に見立てるという難題)と引き換えに、俺たちの命がつながった。