今日も彼女は病んでいる
「毛皮のコートがほしい」
高校生の彼女、未希はそういった。
俺は、聞こえないふりをして、
「さあ、帰ろうか」といった。
「毛皮のコートがほしいわ」
未希ははっきり言った。
「そうか、じゃあ買えばいいな」
俺はそっけなく言った。
「祐介、あなたは私の彼氏よね」
「まあ・・・」
「私の言うことにはすべて従うと誓ったわよね」
「いや、それは言ってないだろ」
「あなたは私と結婚してほしいのよね」
「いや、そこまではまだ・・・」
未希は大きなため息をついた。
「コートすらくれない彼氏、こんな私に生きている意味なんてあるのかしら」
大げさなことを言い始めた。
「そんなコートぐらいで」
そういうと、未希は、
「生きている意味なんてないわね。でも、それよりも生きている意味がないのは、この彼氏じゃないかしら」
・・・
「私は、別にあなたに何かしようというわけではないわ。ただ、あなたが、彼女にコートも買ってくれないあなたが、たまたま、不幸に見舞われたとしても、それは自業自得よね」
俺は焦り始めた。
「未希、冷静になろう、まずは話し合おう」
「いや、もう話し合ってもむだな気がするわ。結論は出たと思う。あとは神様がどうあなたを裁くのか、そういう話よね」
俺は、いよいよ焦り始めた。
「まて、まだ結論は・・・」
未希は俺の言葉も聞かず、藁を取り出した。
そしてそれを人形の形にしていく。
「わかった。毛皮のコートは俺が何とかしよう」
俺は叫ぶように言った。
それを聞くと未希は、わざとらしく驚いたような顔をして、
「あら、そう。それなら、神様に尋ねるまでもなく、あなたは不幸に見舞われたりはしないわね」
そういって、藁を鞄にしまった。
俺は胸をなでおろした。