残飯
「おなかすいた……」
毎日降る雨でジメジメとした路地裏、へたり込んだ少女はポツリと呟いた。
その姿はボロボロで見すぼらしい。こんな格好の孤児やホームレスが居ることは、この街の路地裏ではよくある光景だった。
横のゴミ箱を漁って見つけた食べ物は、すっかり全部昨日の内に平らげてしまった。
ぐ〜……
「おなか、すいたなぁ……」
少女はさっきと同じ事を呟いて、鳴り止まない自分のお腹をさすった。
ふと前を見ると痩せ細った鼠がいた。『何でもいいから食べたい』そう少女が思って手を伸ばすと、ネズミはコロッと横に倒れた。
少女は少しでも空腹を満たす為に、僅かな鼠の肉を貪った。ドロドロしてて生臭い上に、鉄と体に悪そうな味しかしなかった。お腹は前よりもっと鳴くようになった。
「また探さないと……」
ふらりと少女は立つ。反対側の路地裏に、まだ手がつけられてなさそうなゴミ箱があった。
それを見つけた少女は少し足早になって、路地裏を飛び出した。
ドンッ
「汚ねぇなぁ、どこ見て歩いてんだよ!」
「あぐッ…」
路地裏から出てきた汚いホームレスのガキに大事なスーツを汚されて、傘をさしたブクブクの中年の豚は、少女を睨みつけて腹を蹴飛ばした。
豚はうずくまる少女に唾を吐き、サッサと立ち去った。
「うぅ……いたい……」
空腹と痛みで暫くの間立てなかったが、ふらふらになりながらもなんとか反対側の路地裏に着くことができた。
乱暴にゴミ箱を開けると、中には少しだけカビたパンが少し多めにあった。やっとの思いで食べ物にありついた少女は夢中になって口にそれを押し込む。夢中になり過ぎてパンを喉に詰まらせ、赤錆だらけのバケツに貯まった雨水で何とか流し込む。
「はぁ……」
少女はパンを食べ終えて深くため息をついた。味がどうとかはもはやどうでもよかった。ただ満たされればそれで良い。
ぐぎゅるるる〜
またおなかが鳴った。が、今度は少し違った。おなかが鳴るたびにおなかの中がねじ曲がる。
向こう側で食べた鼠がいけなかったのだろうか…。
少女はそのまま倒れ込んだ。