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この世界には蘇生魔法という規格外な魔法が存在する。その魔法を行使するには術者の膨大な魔力も当然必要だが他にも必要な物がある。
魂を呼び戻し、肉体を再構築するための対価となる資金や養分、時には大地などを使用することもあるが、必ずその死人に見合う対価が必要不可欠なのだ。
この戦場を包み込む力はこの森の中心地、世界樹から放たれていた。神々しい光の粒が彼らを包み込み砕けた体がみるみるうちに治っていく。
しかしそれは不完全でかなり醜い状態ではあった。
まるでB級映画のゾンビのような姿に後ずさりしそうな体をグッとこらえる。
これではまるでアンデッドそのものだった。
オーガは猛々しく嗤う。
「お前らはここで終わりだ。我らが憎しみとくとあじわえ!」
その叫びに呼応するように立ち上がったゴブリンたちもこの世のものとは思えない呻き声のような雄叫びを一斉に放った。
それは一瞬だった。
想像するゾンビのように噛みついてきたりするわけではないが狂ったように力任せで殴る蹴るの応酬だ、クマミとマークツーは油断していた。
ゴブリンがいくら生き返ろうが自分達の敵にはなり得ない。貧弱な攻撃に加え知能もない。魔法を怯える必要もない自分達の体にとって物理攻撃に対して身構えればいいだけなのだからゴブリンにはどうしようもなかった。しかし、蘇ったゴブリンはかなり違いが目立った。
まず、彼らは恐怖を感じている様子はなかった。
仲間が切り裂かれ内臓を撒き散らそうと怯むことなく突き進んでくる。
それに加え、力が明らかに違っていた。貧弱であった拳がマークツーたちの体に突き刺さらんとしていたのである。
「まずい!兄さま!下がって!」
クマミの声がうっすら聞こえたがファーストは完全にゴブリンたちに囲まれていた。
痛みと恐怖、双方が幾重にも折り重なっていく。
怨み辛みが重なって凝り固まった形相はめくれた顔面に刻み込まれていた。知らないと言えば知らないのだが、知らぬ間にゴブリンたちを怒らせてしまったのだろう。当然だろうけど、これだけ殺されれば怒り狂うものだ。
僕も両親が事故で死んだときは怒り狂った。いや、それより悲しみの方がつよかったっけ。
転生前の記憶が走馬灯として蘇る。
突然ショートしたパソコンのようにプツンと視界が消えた。
よくわからないまま始まった第二の生はもう幕をおろそうとした。
なんていうわけにはいかなかった。
ぐぉぉぉおぉぉぉ!!!!
一声叫びを発すると前足による凪ぎ払いを放った。急な反撃になんの反応も見せないゴブリンたちはまさに死人だった。
前方に放った凪ぎ払いで道が開けそこに転がり込む。
雪崩のように先ほど自分がいたところがゴブリンで埋まっていく。ゾッとするものを感じるが立ち止まるわけにはいかない。
大きく走りだし