6.幼馴染と対決
休みの日、家を飛び出した私は勇気の家までやって来た。
と言うかお隣だから、自分の家の門を出ればすぐそこが勇気の家なんだけど。
インターフォンは鳴らさずに、その横に寄り掛かって勇気を待つ。
ガッシリしたシルエットが曲がり角から現れた。
ソイツは私を見ると少し目を見開いて―――だけど何も言わずにサクサクとこちらに歩み寄って来た。大きなエナメルの鞄を斜め掛けに背負って野球帽を被っている。
「勇気」
勇気はピタリと私の前で立ち止まった。部活帰りの勇気からはグラウンドの土の匂いがする。そうして何を考えているか分からない顔で私を見下ろしている。
「何で無視するの」
「……」
「遊びに来ないし」
「……ゴメン」
勇気は表情を変えないまま、そう言った。
何が『ゴメン』だ。何も言わずに私を無視して、そんな簡単に済ませないで欲しい。
「お兄ちゃんがあんなこと言ったから怒ってるの?」
「それは―――違う」
目を伏せて勇気は首を振った。
「じゃあ何で……?私と遊ぶのつまらなくなった?お兄ちゃんに何を怒られているか分からない子供だから?他の子とは笑って話すくせに、私のことは避けて無視して―――っ」
ポロリと涙が零れた。
嫌だ、泣いて訴えるなんて『子供そのもの』じゃないか。
どうして、私はちゃんとできないの?
だから友達も少ないし、勇気にも愛想を尽かされるんだ。
「凛……」
同情なんかして欲しく無い。
泣いて幼馴染を引き留めるなんてつもり、無かったのに。
ちゃんと話して―――ちゃんと今まで通り遊びに来てって言いたかっただけなのに。
私はポケットからポケットティッシュを出して鼻水を拭いた。
本当に自分が嫌になる。泣くと涙より鼻水の方がたくさん出る体質だから、格好つかないったら無かった。
大きな影がグッと縮んで、鼻をティッシュで押さえて俯く私の目の前に、ほんのり眩しそうに目を細めた勇気の顔があった。
「お前は何にも悪く無い」
「……」
「図星を差されて動揺したんだ。蓮さんの言う通りだったから」
「ずっ……どう言うこと?」
フッと笑った勇気の顔はひどく大人びて見えた。
私の問いには答えずに、勇気は私の頭をポンポンと撫でた。
澪と言い、勇気と言い―――やはり私は子供扱いされているに違いないと感じた。
だけど妙に心が落ち着いて来て、私の涙はピタリと止まったのだ。
鼻水は暫く止まらなかったけど。