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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
別視点 再び
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3.澪

凛の友人、澪視点です。


『16.幼馴染と友人』の裏側のお話です。

「凛?どうしたの?」


何となく焦点が合ってないような気がして、私は凛の髪に手を伸ばした。いつもなら猫カフェの馴染みの猫のように目を閉じて気持ちよさそうに私の手を味わう彼女の頭が、フイッと逸らされてしまう。


驚いて凜の目を見ると……彼女も自分の行動に驚いたように目を瞠っている。


「凛?」


すると直ぐに違和感に気が付いた日浦が、彼女の顔を覗き込んだ。そして今度は彼が手を伸ばす。―――するとその手も躱されてしまった。

スクッと、まるで差し出された腕に気付かなかったとでも言うかのように立ち上がった凛を、私達は少し呆気に取られたまま見上げる。凜はキョロキョロと視線を彷徨わせたかと思うと―――台詞をそのまま読み上げる大根役者みたいな一本調子で、こう叫んだのだ。




「わ、私ちょっと飲み物貰って来る……!」




そう言い放った途端、一目散に彼女は部屋を飛び出してしまった。

私と日浦は顔を見合わせ、それからテーブルの上のマグカップに視線を落とした。


そこには、並々とミルクティーで満たされているマグカップが残されていた。


「飲み物……取って来るって?」


私が口を開くと、日浦もぼんやりと呟いた。


「全然飲んでねぇよな」

「凛……変じゃない?」

「……」


日浦もそれは感じていたのだろう。

凜が何を考えているのかは分からないが、何かを一所懸命考えているらしい事だけは感じ取れた。それで挙動不審な様子になってしまっているって事も。


「……やっぱ、日浦が何かしたの?」

「は?」

「この間廊下でさ、凛の手首掴んで逃げられないように迫ってたじゃない。何か困らせるような事、言ったんでしょう」

「ちげーよ」


日浦はバツが悪そうな表情で、私の追求から視線を逸らした。


「凜がうちの女子マネに絡まれていたんだ。だから割って入って引き剥がした」

「……部活の子に良い顔して、付け込まれたんだ」


私が頷いて納得を示すと、少し苛ついた日浦が反論した。


「良い顔なんかしてねーよ」

「でもその子が凛に絡んだんでしょ。日浦の所為だね」

「……凜に『友達』だって断言されてる身分なのに、どうしろっつーんだ」


日浦が苦々しくそう言うので、思わず笑ってしまった。


「笑いごとじゃねーよ。凛が、女子マネの仁見は俺の事好きなんじゃないかって言うから、お前はどうなんだ?って聞いたら―――自分は友達って意味で好きなのは当たり前で、仁見の好意は恋愛だから、それとは違うって言われたんだぜ?」


吐き出す様に言う日浦。


「うん」


何となく凜が言いそうな事だと思ったので、頷いた。だけどこればっかりは仕方が無いと思う。


「紛らわしい言い方するから仁見に勘違いさせている俺が悪い。俺が『鈍感』で『天然』なのが悪いって―――言うんだ」

「……んー……」


私は腕を組んで、唸った。

流石にちょっと日浦が気の毒になった。


「それは……凜には、言われたく無いよね」

「……だろ?」


しかし。やはりあの時何かあったのだと言う感触は当たっていたのだ。


「でも、その女子マネ―――仁見さんには、キッパリ言ったほうが良いんじゃない?」


そんな外野に凜の気持ちをこれ以上荒らされたくない。天然素直なお嬢様な割に、意外と気を遣う彼女は意地悪をされても私に漏らさないで自分の中に仕舞い込んでしまう事も結構多いのだ。溜め込んでから、ワーッと打ち明けてくれる事もあるけれども。


「告白でもされれば、キッパリ断れるんだけど……妙に外堀から埋めて来るから面倒なんだよな。それに卒業した先輩と未だ付き合っているかもしれないし。思わせ振りにウロウロされるだけで、どうしていいのか分からん。つーかメンドウだからこっちから話を振りたくない」

「日浦からのアプローチを待ってるのかな……」

「……かもしらん。けど―――正直そう言うフワフワした掛け合いとかついていけねえ。仁見の友達が中崎の事気に入っているみたいだから、それを邪魔すんのも悪いし」


私は顎に指を掛けて少しの間思案した。

そしてキッパリと言い放つ。


「―――諦めたら?」

「仁見にちょっかい掛けられる事を、か?」

「いや、凛の事を」

「―――」


日浦はアングリと口を開けて―――私をギロリと睨みつけた。

だけどこっちにも言い分がある。


「正直、凛をそう言うドロドロに巻き込みたくないのよね。凜はあのまま可愛い素直な凜で居て欲しいの。変な恋愛ドラマに巻き込むくらいなら、身を引いてくれない?」


すると目をまん丸くして、日浦は一瞬口籠り。それから、


「ぜってー、やだ」


そう言い捨てると、プイッと顔を背けて黙ってしまった。




その後暫く沈黙が続いた。私は平気だったけれども、気まずさに耐えられなくなったのか日浦が立ち上がり、ドアを開けたところでデザートをお盆に乗せた凛と鉢合わせする事になったのだった。



お読みいただき、有難うございました。

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