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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
お兄ちゃんはやっぱり過保護
45/62

45.幼馴染の気持ち



「どうなんだ?」


ズイっと前に出て来た勇気に肩をガシっと掴まれる。

スゴイ圧力だ。私は気持ち後退りつつ、実際はその場に固定されたままで。勇気の勢いに気圧されながら何とか口を開いた。


「否定する暇が無かっただけだよ。だって仁見さん、思ってもみない事言い捨てて、直ぐ行っちゃったから……」

「でも野球部に入ったのは、門倉先輩に勧誘されたからだろ?」

「違うよ!切っ掛けはそうかもしれないけど……どっちかって言うと勇気の所為だよ!」


あっ!口がすべっちゃった!


「……は?」


勇気が訳が分からない、というように私の顔をジロジロ見つめた。


「どういう意味だ?」

「えっと……」


うう~、何か説明するのはヤヤコシイし、自分の甘えた考え方が恥ずかし過ぎて言いたくないんだけどっ……!

でも口に出してしまったものは取り返せない。自分の軽率さを呪う……ううっ、私のばかっ。


「ちゃんと、分かるように話せ」

「うー、あんまり言いたくないんだけど」

「何言ってんだ。俺の所為って言われてそのままスルーできるか」


勇気は私の肩をグイッと押して、ベッドに座らせた。

そうして自分も横に腰を下ろす。腕組みをして、逃がさないと言う決意の籠った視線で私を縫いとめた。


「分かったよ……」


私はガクリ、と肩を落として観念した。

ああ恥ずかしいなぁ。でももう逃げられない。

私は両手をコシコシと擦り合わせながら、指を重ねたり離したりして何とか言葉を紡ぎ出した。う~~、言い辛いよ~~。


「あのね、その~……私ね、澪と勇気が付き合ったら独りぼっちになっちゃうな~って思って」

「……」


勇気の目が点になった。


「はあ?!」


ですよね。


「あ、あのね。それは誤解だって、お兄ちゃんに相談したら言われて……今は違うとは思っているんだけど」

「当り前だ、どうしたらそんな突拍子も無い考えが出て来るんだ」


と、言ってもそんなに無理がある話じゃないと思うけどなあ。

澪は美しくて落ち着いていてとっても素敵だし、勇気は結構頼りがいがあって、野球やっている所もまあまあカッコ良いし。2人は認め合っているって言うか、仲も良好だし。


「それはゴメン」


私はちょっと視線を落として、素直に頭を下げた。


「それはね、勘違いだって分かったんだけど……だけどね、だけど……澪はきっとK高とか難しい高校を受験するでしょう?私には逆立ちしたって無理だし。だから高校に行ったら澪とは離れ離れになっちゃう。人見知りって言って人と関わらないままはダメだなぁって思ったの。―――澪に言ったら、一緒にT高行こうって言われたんだけど……私T高も合格できるか分からないし、澪のランク下げさせてまで一緒に居て貰うって言うのは、ちょっと違うかなって」

「……俺がいるだろ」

「勇気と一緒の学校に行けるって限らないじゃん」


勇気がそう言ってくれるのは嬉しいけど、現実を考えたら幼馴染とずっと一緒って高校では難しいと思うんだ。前はそんな事考えなかったけど―――悔しいけど、仁見さんの言う事は当たってる。勇気に彼女が出来たら、私のうちに入り浸られるのを嫌がるだろう。


「それに、勇気もこれから部活とかもっと忙しくなると思うし。勇気結構モテるじゃない?だから彼女とか出来たらさ、私の事なんか構ってられなくなるでしょう?そうなる前に、少しづつ自分を鍛えておかないとさ……」

「……」

「だから、門倉先輩に誘って貰ったの、言い切っ掛けだなって!全然、部員の人と話せないし、女子マネの人達とも打ち解けられて無いけど……」


ニッと、笑い顔を作って顔を上げた。

しかし頑張って作った笑顔は不発に終わってしまった。

何故なら笑顔を向けた相手―――勇気が、膝にほとんど付くぐらい低く、頭を抱えて顔を伏せてしまっていたから。


「え?どうしたの、勇気……?」


急に具合が悪くなったのかな?

風邪ひとつ引かないのが取柄なのに……。


勇気の顔を覗き込み、頭をペシペシ叩いてみた。


「おーい、勇気~」


返事が無い。


と思ったら。


「お前はってヤツは……」


低い声が響いて来て、次の瞬間ガシっと両手首を掴まれた。

な、なんだ、なんだ。

やっぱ最近このパターン多いな……と呑気に思っていたら、視界が変わって天井が目に入った。


「あれれ?」


すると真正面に勇気の顔がヌッと現れた。


「分かれよ!俺が1番大事にしている奴だ誰なのか……分かっているだろ?なのになんで、そんな遠回りな結論に結びつくんだ?!」


呆れたような、懇願するような勇気の声。

両手首を拘束されたまま……キョロキョロ周囲を見渡して。


私は自分がどういう状態なのか、やっと気が付いたのだ。




えええーーっ!




私は今―――勇気に仰向けにベッドに押し付けられて、見下ろされていた。




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