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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
お兄ちゃんはやっぱり過保護
41/62

41.幼馴染と私 3



勇気と並んで歩く。

勇気はムッツリと押し黙ったまま、それでも私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる。


気に入らない部分があるなら、口に出して言ってくれたほうがスッキリするのになぁって思う。それとも言っても無駄だと思っちゃった?勇気の反対を押し切って野球部に入って、更にお兄ちゃんから『一緒に帰れ』とか『虫が付かないように見張れ』とか理不尽な事言われたら、そりゃあ機嫌も悪くなるだろう。


何だか悲しくなって来た。

友情で結ばれていると思っていた友達。少なくとも自分に対して好意を持っていると思っていたし、私も勇気の事が好きだ。

なのに、もしかすると……。勇気は私を気に入っているから構っていたのではなくて、お兄ちゃんに言われたから仕方なく構ってくれていたのかもしれないって可能性が、お兄ちゃんの台詞で浮上して来てしまった。まさか嫌われてまではいないと思うけど……って、それも根拠は全くないんだよね。そう言えば。


プルプルと私は首を振った。

ダメダメ、後ろ向き!

私は考えすぎな所があるって、お兄ちゃんにも指摘されてたんだ。考え過ぎは封印しないと。


それに少しでも勇気に並ぶため、大人になるため野球部に入ったんだ。お荷物と思われているならむしろ、そうならないように努力し始めた所なのだから、考えたって無駄な事は考えない……!




「勇気!」




勇気の腕を引き、立ち止まる。

ピタリと足を止めた勇気が、ゆっくりと私を振り返った。


「ねえ……怒ってるの?」


勇気は眉根を寄せて、難しい表情かおで私を見下ろしている。


「怒っているなら言って……!野球部はもう辞められないけど、それ以外なら直す……努力をするから。黙っちゃわないで!」


うっ、泣きそう。

でも泣かないもん!

泣いたら、勇気との距離がますます開いちゃいそうな気がした。


もう最近、こんなのばっかだなぁ。中2になってから、私と勇気の関係が少し変わりつつある。以前お兄ちゃんに勇気が怒られて―――その後勇気に避けられるようになった。結局あれも意味が分からず終わったんだ。とにかく勇気が戻ってくれるなら何でも良いって確かめないまま。


でももう、そんな自分から一歩踏み出さないと行けない。

私はギュッと足を踏ん張り、振り払われないようしっかりと、今度は両手で勇気の腕にしがみついた。


「……凛、離せよ」


溜息と共に、勇気が呟いた。

私はブンブンと首を振って、勇気を見上げて睨みつけた。


「いや、離さない。―――ねえ、怒っているなら怒っているって言って」

「怒ってなんか無い」

「じゃあなんで」

「あー……くそっ」


勇気がチッと舌打ちした。

そしてガリガリと頭を掻く。


「―――分かったから。とにかく道端で立ち止まっているのは止めよう。遅くならないうちにお前を家に送らないと」

「でも」

「じゃあ、着替えたら後でお前のうちに行くから。そこで話をしよう」

「―――え、でも疲れたでしょ、勇気」


『怒っている』の一言を言うのに、何故ここで言えないのか。あ、怒ってないんだっけ??

それに何だか其処までして貰うのは、ただの我儘のような気がした。


「俺も―――お前に聞きたい事がある。気になって眠れねぇから、いいんだ」

「そうなの?」


迷子のような表情かおをしていたのかもしれない。

勇気はフッと目元を緩めて、私の頭をくしゃくしゃと掻き回した。


「ああ。怒っているように見えたなら、悪かった。じゃあ、帰るぞ。部活終わってもなかなか帰って来ないなんて思われたら―――困るのは凛の方だろ」


確かに。

部活に入った途端寄り道をしたと知ったら、お母さん―――と言うかお兄ちゃんから部活禁止令が出されちゃうかもしれない。それはマズイ。


私はコクンと頷いて、スルリと勇気を解放した。

勇気は掻き回した私の髪を軽く手櫛で整えて、ポンと頭を叩いたのだった。



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