39.女子マネと私 2
お兄ちゃんから、部活の後は必ず勇気と一緒に帰ること!と、部活に入る条件を付けられてしまった。
勇気にも連絡がいっているらしく、当然のように「待ってろ」と言われついでに頭をポン、と叩かれた。
勇気が着替えのため部室へ足を向けた後、仁見さんが私の方に近付いて来たので思わず緊張で顔が強張ってしまう。
「日浦かわいそ。自分だって疲れているのに、幼馴染の面倒までみなくちゃならないなんて」
「……」
ニコリと微笑まれ、私はなんと答えて良いか分からず口を噤んだ。
「何で部活入ったの?野球なんて興味無いんでしょ。―――日浦だけじゃなくて他の男子にもチヤホヤされたくなったの?」
「……チヤホヤ?」
「門倉先輩に優しく声を掛けられて、その気になっちゃった?残念、門倉先輩は彼女いるから。……下手なちょっかい掛けても無駄だからね」
門倉先輩に彼女がいたら―――何で残念?『ちょっかい』って……私が何をするって言うんだろう??ほとんど自分から話し掛ける事も出来ない人見知りなのに。
仁見さんの言っている意味が、よく分からなかった。
圧倒的に会話慣れしていない私が、相手の台詞を瞬時に解読し即座に上手い返答を考え付ける筈が無い。予想外の事を言われて、私は固まってしまった。
どうすべきかと頭の中が大混乱している私に向けてフッと馬鹿にしたように笑い、仁見さんはクルリと背を向けてサッサと立ち去ってしまった。
あ!ああ~!
言われっ放しで、終わってしまった……!




