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お兄ちゃんは過保護  作者: ねがえり太郎
お兄ちゃんはやっぱり過保護
28/62

28.ラーメン屋で 2



「『昔ラーメン塩』の人~」

「あ、はい」


私は手を上げた。すると女将さんがトンとラーメンを目の前に置いてくれる。


うわぁ、美味しそう。


澄んだスープに薄いヒラヒラとしたチャーシューがドンブリの半分くらいを覆っている。ナルトと輪切りゆで卵が並んでいるのが可愛い。ほうれん草の隣にはシナチク。中央にはタップリのネギとノリが一枚。


「うち初めて?」

「はい」

「少ししょっぱめなの。濃かったら言ってね、スープ足すから」

「はい、有難うございます」


満足そうに頷いて女将さんは次の配膳の為に去って行った。

割り箸とレンゲを渡してくれながら、勇気が言う。


「先に食べちゃえよ。柔らかめだからすぐ伸びるぞ」

「でも……」


まわりの皆の手元にはまだラーメンが届いていない。おまけで付いて来た自分が先に食べるのは何だか心苦しかった。


「お前食べるの遅いんだから。多分後から食べ始めた俺達の方が、食べ終わるの早いぞ」


確かにそれはあり得る話だ。私はコクンと頷いて「じゃあいただきます」と中崎君とその隣に座る男子に断って、食事に取り掛かる事にした。


野菜の旨味が染み出ているスープを堪能しながら、レンゲを左手にラーメンをモグモグ食べていると「大盛醤油の人~!」という女将さんの問いかけに、争うように手が上がる。順にラーメンどんぶりが配られ始めると、それまでお喋りしてガハガハ笑っていた野球部員達が潮を引いたように静かになって行く。代わりにズゾズゾとラーメンを啜る音が響き始めた。


勇気や中崎君の前にも大盛塩がドンっと配膳された。

その量に私は目を丸くする。


「うわぁ……多いねぇ」

「まるまる2玉だからな。普通多くても1.5玉くらいなんだけど」


私にはこの量は無理だ。普通盛でもお腹いっぱいかも。

感心している内に、勇気達はペロリと2玉分を平らげスープを飲み干してしまった。宣言通り追い抜かれてしまった私は慌てた。周りを見ると皆、食べ終わり始めて手持無沙汰な様子の人もいる。おまけで付いて来た私が待たせるなんて、有り得ない。普段団体行動に全く慣れていない私は冷や汗を掻いて必死でどんぶりに取り組んだ。


「全部食べれるか?駄目なら食べてやる」


勇気がいつものように声を掛けてくれる。


「2玉も食べたのに?」

「試合で腹減ったからな」

「じゃあ……」


と少し麺の残ったラーメンどんぶりを横に滑らせようとして、軽蔑したように私を睨む女子マネの視線に気が付いた。いつも通り勇気に甘えては駄目だ。特にあの女子マネの前では―――きっと更に嫌われてしまうだろう。いや、もうかなり嫌われているかもしれないけど……。


「やっぱ、いい」


時間が掛かって迷惑だから勇気に手伝って貰おうと思ったけど。いつもの私達の距離感を女子マネの目の前で披露したら、何を言われるか分からない気がした。諦めて早食いを頑張ろうと、私はどんぶりに再び向き合ったのだった。



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